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2017年2月6日

8564:「法的にグレー」こそイノベーションの源、日本が米国に負ける理由

「法的にグレー」こそイノベーションの源、日本が米国に負ける理由
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大豆生田 崇志=日経コンピュータ 2017/02/06 日経コンピュータ 記者の眼 (記事の抄出です)

眼科医清澤のコメント:どうやら法律が作られた目的を考えて、それに対して行ってよいかどうかを自分で考える癖をつけ、リスクを取りながら、事態に対応なくてはならないといっているようです。行為の可否の判断に正解があるかのように考えて、判断を厳しくして委縮した戦いをしていたら、リスクも取った作戦を立てる相手に勝てるわけがないと言っています。確かに方法としての規制が、いつの間にか目的にすり替わっているということは個人情報保護法などにおいても日本社会ではしばしばありそうです。

  --記事の抄出---

◎ 米国などの外資系と日本のIT企業では、法制度への対応の仕方が全く違うらしい。そのせいで日本企業には技術があってもビジネスの競争に負けてしまうという。なぜ違うのか、どう違うのか。

 米国などの外資系企業と、日本企業の違いについて最初に指摘してもらったのは、元日本HPのチーフ・プライバシー・オフィサー(CPO)佐藤慶浩氏だ。

図●日本企業の法制度対応の課題

手段と目的がすり替わる

 佐藤氏は「日本企業は、そもそも法律ができた目的の確認が少しぶれている気がする」と話す。

 あらゆる法制度には、目的と手段がある。改正個人情報保護法の目的は、簡単に言ってしまえば「個人のプライバシー保護」と「個人データ活用」を両立することだ。そのための手段として、どんな個人情報をどのように取り扱えばいいかを規定している。

 ところが、個人情報保護法の改正では、目的よりも、手段に関心が集まった。その結果、改正個人情報保護法には細かな分類や詳細な取り扱い方が盛り込まれた。

 「海外は『消費者保護』を考えていたのに、保護の対象がなぜか『データ』に化けてしまった」。言い換えると、データ保護という手段によって個人のプライバシー保護という目的の達成を目指していたはずなのに、いつの間にかデータ保護という手段が目的にすり替わってしまった。

 その理由は、日本企業の法制度対応の仕方にある。「違法か適法かを事前に判断してほしいという意識が強い。手段に関しても聞きたがる」ためだ。日本企業は、行政機関のお墨付きを得た手順を忠実に守ることで、法的リスクを回避しようとする。

 個人情報保護法でも、判断を行政のガイドラインといった解説に頼ったり、弁護士のお墨付きをもらおうとしたりする。プライバシーを保護するという当初の目的はどこかに消えている。

 これは日々イノベーションを競うIT業界では致命的だ。

 「経営層がリスクを取らない」と指摘する。それが、結果的に海外企業の後追いをして収益格差を生んでいる。

◎リスク回避が企業収益格差に

 海外企業は、新たな事業が法律の目的や理念、趣旨に沿うかどうかを経営層が自ら判断して、リスクを取っているという。リスクを取らなければ、リターンも得られない。

 「日本企業の法律に対するアプローチは、米国などの海外企業とはまったく違う。法律をツールとして活用しなければ、日本企業は米国企業に太刀打ちできない」。

 外資系企業は、弁護士に相談する内容が日本企業とは違うという。

 法律には、明確に違法ではない“白”のものと、条文が抽象的で“グレー”とされる部分がある。日本企業は法制度に対応するための手段をこと細かに調べて、法的に白の部分に固執する。「日本企業はそこから少しでもはみ出ないように、枝葉の細かいところばかり気にして、これで大丈夫でしょうかとお墨付きをもらってからゴーサインを出す」(上山弁護士)。

 しかし、外資系企業は「自分たちがやろうとしている事業に、法律の理念や目的を生かせる部分があるか、やりたいことを正当化する法律の解釈の仕方はあるか、などと聞いてくる」(上山弁護士)という。

 米国企業は法的にグレーであっても、どんな点に注意すればグレーを白にできるか、という観点で質問する。理由は簡単だ。「白の部分だけでは勝負になるわけがない。イノベーションはグレーのところから出てくる」ため。

 これは必ずしも違法すれすれのことをやろうとしているというわけではない。法律の理念や趣旨、目的に照らして、企業が新たにやろうとしている手段が、適法と解釈できるかどうかを確認している。新たにやろうとしていることが、イノベーションに結びつくものだから。

◎行政も手段を目的化

 日本企業が、事前に違法か適法か外部の判断を求めたがる傾向は、法制度そのものにも影響を与えてしまっている。「日本政府に悪気がなくても、日本の法制度は企業がどう対応すればいいかという手段の明示に重点を置いてしまっている」。企業が手段の明示を求めるからだ。

「手続きさえ守れば大丈夫という考え方が日本企業に根づいてしまったため、定義と手続きが定まらないと事業を推進できないということになってしまった」。人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、情報銀行などで、データ活用のための手続きを定めたガイドラインなどが乱立する恐れさえある。

◎マイナンバー制度も自己目的化

 手段を目的化してしまう例は枚挙に暇がない。「目的がマイナンバーカードの発行枚数を増やすことになっていて、おかしなことになっている」。

 現在、政府が2016年5月に改定して公表した「世界最先端IT国家創造宣言」では、マイナンバー制度の目的について、「行政手続きの簡素化などによる国民生活の利便性の向上」「公共サービスの給付と負担の公平化による公平・公正な社会の実現」「バックオフィス連携などによる行政の効率化」の3つを挙げている。

 目的はあくまで「国民生活の利便性の向上」などである。マイナンバーカードの発行枚数や利活用拡大は、手段や結果でしかない。

 マイナンバー制度には既に巨額の税金が投入されている。目的に立ち返ることができなければ、その多くが無駄に終わる恐れがある。こうした理由で日本が海外との競争に勝てないのは悲劇である。
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Categorised in: 社会・経済