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2016年2月27日

7513:ヒトでも始まった糞便微生物移植の実際 慶大消化器内科金井隆典教授聴講記

tokyotokyu11031
ヒトでも始まった糞便微生物移植の実際
慶応義塾大学消化器内科(金井隆典教授)を聴きました。

清澤のコメント:腸の炎症は、免疫異常の結果で起きるのではなく、腸内細菌叢の偏りの結果であるという非常に夢と説得力のあるお話でした。東京医大の後藤教授がコメントしたように一時間もの長い時間を感じさせない、飽きの来ないお話でした。今日からは、自分の腸内細菌を悪化させないように意識した食事をとりたいものです。
 金井教授は私と重なる時期に医科歯科大学に在職されていたそうでした。

–以下が清澤の聴講メモです—
○コアラの例:コアラはユーカリを消化させるために必要なバクテリアを親の便から取って自立する。
Transfaunation:というのは父が出なくなった乳牛の胃瘻に良い牛の便を移植する主義であり、酪農では普通に行われる。
江戸の町は高度な糞便のリサイクルシステムに支えられていた。糞便は作物と好感されていたが、現在は推薦になり衛生環境が激変している。
A型肝炎は糞口感染であるというのもよく言われる話。

◎腸内細菌
 炎症性大腸炎やクローン病が増えている。
免疫異常はその結果であり、炎症性腸疾患の原因ではない。
腸内細菌の発見は1674年レーウェンフックにさかのぼる。
腸内細菌は21世紀の新臓器である。
人の個体は60兆個の細胞であるが、――その腸内細菌は100兆個とスケールが大きい。
ヒトのゲノムは2万個――腸内細菌のゲノムは全体で100万個と規模が大きい。
細菌は殆どが大腸にいるが、人によりその構成は違う。
疾患には遺伝的因子と環境因子があるが、――環境の変化の結果として、腸内細菌叢に変化が生じて免疫異常が起き、その結果で疾患が発生すると説明される。
Dysbiosis:と言うのがキーワード。腸内細菌パターンの破綻が見られる。
健康は環境により支配されているだろう。しかるに、従来は炎症を治療の対象としてきた。

食事の西洋化が腸内細菌にも影響するーー
② Dysbiosis ディスバイオ―シス(腸内細菌叢の破綻)
②Loss of diversity. 多様性の喪失
 
新生児では発生から3年までに腸内細菌が大きく変わる。この間の正しい細菌叢の形成が重要である。
潰瘍性大腸炎は若者だけではなく、老人にもピークがある。
帝王切開では産まれてくる子供の腸内細菌叢が変わってしまう。
10年ほど前の粗悪な人口乳では随分子供の腸内細菌叢を痛めたのではないか?
抗生剤の使用はIBD(炎症性腸疾患)発症を増やす。
現代人では、食物繊維を摂取することが減った。18世紀に表れた白いパンはそれを加速させた。
1923年シリアルを売ったケロッグ会社はアンチテーゼとして、小麦ふすまの必要性を唱えたが、それが主流にはなれなかった。
昭和の食事風景を見ると植物繊維が多かった。植物繊維はその後どんどんと減って行った。
不潔な田舎より清潔そうな都会にIBDは多い。
腸内細菌は神経、免疫、代謝にも影響を与えて疾病を起こしている。
太った人の便を無菌のラットに与えるとラットは太るという実験がある。
腸内細菌がセックスパートナーを決めるという論文もある。ショウジョウバエの実験であるが。
『私がハンバーグを好きなわけではなく、私の腸内細菌がハンバーグを好んでいる。』個人の嗜好性は腸内細菌が選んでいるという言い方も可能であろう。
演者が行ったビオチン欠乏食の話。
善玉菌(probiotics:食物繊維を分解することが出来る菌)と悪玉菌(pathobiotics: 植物繊維を分解できず、厭な分解物も多く作ってしまう)がある。
腹八分目と野菜いっぱいの食事が良いというのは正しい。それは過食によって、大腸まで脂肪などが入って行ってしまい、大腸の細菌叢が変わってしまうであろうからである。
プロバイオティクス(ヨーグルトを摂取することでせっゆ出来る)その方法には以下の方法がある。
1、 FMT:便そのものを与える
2、 コンソーシアム:選んだ多数の菌の混合物をあたえる
3、 シングルストレイン:選択した株一つを与える
4、 バイオアクティブモレキュール:生理活性のあるものを与える。

多くの類似の実験が報告されているが、成功したのは多種類の良い菌を大量に投与するという物であった。
◎糞便微生物移植の歴史
2013年に再発性クロストリジウムデフィシル感染症がカナダのケベックで発生した。抗生物質では治らないが、健康人の便の移植で治ったという報告をした人がいた。抗生物質側の被験者に死者が続発したので、大学は実験を中止してたったの17例で有効との結論として、ニューイングランドジャーナルに載せた。
演者らは、再発性CDI、難治性のUC潰瘍性大腸炎、腸管ベーチェット、FGIDを対象にした実験を計画した。ドナーは配偶者か2親等にした。投与法は大腸ファイバーで記録後に内視鏡で盲腸付近に糞便を噴射する。
この潰瘍性大腸炎に対するFMTには:ユーミン登録が為されていたから、多くの希望者が集まった。プロトコールは一回だけの移植で有ったので、無害性は証明されたが、それほどの効果はなかった。多数回の移植が必要なのだろう。過去の論文を見ても、FMTが有効に効いたものは6回を行い、効かなかったのは2回であった。
機能性消化管障害には有効だった。現場に炎症があると菌が交代できずに効かないという事であろうか?
しかし、印象的に好まれないので、社会にはこのFMTは広がり難そうだ。
コンソーシアムなら:生成したカクテルを作って医薬品とする(タバコ吸わず、痩せて、経腟分娩、母乳、抗生剤を10年使ってない人から便を取って製剤化する。)
バイオアクティブモレキュールならその点はクリアしやすそうだ。:例えば漢方についてMohamed S,はScienceに論文を書いている。青い植物由来の色素であるインドール化合物がこの目的に利用できるかもしれない。これは、中国では漢方薬の扱いであり、日本では食品の扱いである。

Categorised in: 社会・経済