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2019年11月10日

11281:遺伝性変性疾患に関する新たな展開・東北大西口康二准教授の講演を聞きました。

仙台市で行われた東北大学眼科同窓会で西口先生の講演を拝聴しました。(以下の記事は西口先生のチェック済です)

演者の自己紹介によると西口先生は名古屋大のご卒業。ボストンのハーバード大学で網膜電気生理と網膜手術の大家広瀬教室の主催する教室で臨床視覚生理学、同じくハーバード大学で分子遺伝学をそれぞれ学び、名古屋大眼科で研究をお続けになりました。

次世代シークエンスと遺伝子治療の登場で遺伝性網膜編成の診療が変わることに気づき、さらに2011年にはローザンヌで前者、2012年にはロンドンで後者を習得するために再び留学されたそうです。そして、遺伝子治開発で必要なウイルス実験が実際に行える東北大眼科へ2014年に移られたのだそうです。

私が平成4年に仙台を離れたのち、玉井教授の下で網膜色素変性の研究は和田先生や阿部敏明先生らによって盛んになされ、多数の患者の集積も行われていました。その臨床的および実験的な厚みのあった仙台で、中沢徹教授の新たな教室に遺伝子治療の研究手法をもって参加された西口先生は、今日も多くの業績を積んでおいでとのことでした。

まずは、①東北大中沢徹教授からの誘い、②ビジョンバンでの経験、③網膜色素変性症例を多数見ていた和田先生との関連、④玉井教授とのお話から話が始まりました。

アデノ随伴ウイルス(AAV)をベクターとして利用した手法で治療のシーズ(種)を開発し、今後6年で臨床試験を開始することを構築することを目指しているそうです。そのために遺伝子解析、表現型の理解、そしてそれを治療に結び付けてゆくという作戦のようです。

1、シークエンスプロジェクト:83遺伝子の1177か所の変異(1400家家系のシークエンス)が検出できた。東北大では、EYSが多い。最近の厳格な遺伝子診断ガイドラインによって、解析結果は患者さんにも安易には渡せない現状も有る。

網羅的シークエンスによって、定型的色素変性症患者ので3割の病因変異がわかる。(関連記事あり)小口病はSAG遺伝子(アレスチンを表現する)とGRK1に関連しているが、視力は正常で、水尾中村現象を示す杆体反応の消失を特徴とする疾患である。

2、ところが、網膜色素変性と小口病の合併家系が有ることが報告されている。長期的な後ろ向き研究をした。

その結果、発症は小口病は22歳、色素変性は56歳と違いが有る。金屏風様反射を持った小口病に黄斑変性を併発するものがいる。

ERGの比較をophthalmlogh 2019に発表した。:

RPに進行した小口病症例もあり、Ophthalmology 2019aに追加した。

小括:SAG-RP(SAG関連網膜色素変性症)の多くに金屏風状変化が有る:(SAGはブドウ膜炎を起こすS抗原)

3、従来の遺伝子補充療法は4000bp以内が対象であった。ほとんどの網膜色素変性患者は、4000以上の変化である。だから、従来の遺伝子治療は無効であって、最近登場したゲノム編集遺伝子治療ならそれが治療できる。ゲノム補修は:NHEJとHDRのいずれかを用いて行うことがほとんどである。そこにはCAS9が関与する。

〇AAVゲノム編集による遺伝子の治療。シングルAAVによる変異置換にはSpCas 9を利用していたが、今はSaCas9を用いる。(西口、臨床眼科2019) 調べてみると、ゲノム編集効率は10%程度である。治療効果は網膜電図ERGで見ることができる。その効果は、遺伝子補充療法と同等であった。臨床では2026年までの完成を目指す。

清澤のコメント、日本人でのRP遺伝子の割合を見る成果が出ていたことは6月に聞いておりました。今回の話を聞いて、東北大学もその中で枢要な部分を占めていて、それをもとに遺伝子治療の研究が相当具体的に構想されていたことがうかがわれました。もちろん自分がそれに直接関与してゆく機会は無いでしょうけれど、そのあたりに関する総説を日本語にしろ、英語にしろ入手して、今後も勉強させていただきたいと思いました。

追記:[A case of chronic progressive external ophthalmoplegia with Oguchi’s disease]. [Article in Japanese] Kobayashi N, Kiyosawa M, Haginoya K, Noro M, Shiono T, Tamai M. 日眼会誌 1992、96(9):1167-74. 原稿準備中に、この合併は偶然だろうと塩野先生がおっしゃったのを思い出します。この後から小口病でのアレスチンが注目されはじめました。

Categorised in: 糖尿病網膜症・加齢黄斑変性 (網膜疾患)