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2017年1月23日

8516: 黄斑低形成による先天眼振と視力低下とは?

foveal hypoplasia albinism
原因がはっきりしないのに生まれつき視力がでないという病気の一つに黄斑低形成があります。上の図がこの黄斑低形成の眼底写真です。
(英語だとmacular hypoplasiaまたはfoveal hypoplasiaです)

BlogPaint(下の図の⇒のやや暗い部分が黄斑です。これが上の図の眼底にはありません。)

黄斑低形成というのは、

眼底で光を感じて視神経に信号を伝える網膜の成長障害です。本来、網膜にはその中央部に黄斑と呼ばれるすり鉢状にくぼんだ部分があって、その周辺までを含めて黄斑部と呼びます。この黄斑部の先天性形成不全が黄斑低形成です。

その眼底の所見には次のようなものが含まれています。

1. 中心窩の陥凹や、黄斑反射が欠如していること。当然正常な網膜ではこれらが見られるはずです。

2. 黄斑の暗い点(dark spot)が欠如しています。

3. 中心窩には細かい毛細血管が無い血管欠如圏(capillary free zone)が無くてはならないはずですが、これが欠如しています。

4. 黄斑を横切る血管の異常。これは普通は黄斑を囲むようにアーケードと呼ばれる弓状の走行を採るべき網膜上の血管が視神経から水平にいきなり黄斑を横切ってしまうことがあります。

albinism macula
5. 6番目の特徴をあえて挙げれば、OCTで網膜の断層像を黄斑を含むように撮影したときに、上の1に記載したように存在すべきすり鉢状のくぼみが見られないことを挙げることが出来ます。(上図の中央)

その診断には、
両眼性に生まれつき視力が悪く、多くの場合には眼球の水平方向の揺らぎつまり眼振を伴うことでそれを疑うことが出来ます。上記所見にOCT所見として網膜厚は正常だが黄斑に有るべき陥凹がないことがその診断の参考になります。

色覚は正常であり、ゴールドマン視野計で測定できる周辺視野も正常、そしてERGも正常に保たれます。これは形としての黄斑は欠如していても、中心の錐体が保たれているためです。

合併する疾患
maclahypoplasia albinism
眼白児症(眼球の中の網膜の下に有る、網膜色素上皮や虹彩の色素が欠如していて白人の目のような色合いを示すもの)、

先天無虹彩(眼の中の茶目のことを虹彩と呼びますが、その虹彩が先天的に出来ていないものです。これを合併することがあります。
その原因としては、眼の形成を統御するPAX6遺伝子の異常などに合併する事が有ります。しかし、すべての黄斑低形成の症例がそれを合併するかどうかはわかってはいません。

さて、黄斑低形成の治療は可能なのでしょうか?
現在の所、残念ですが黄斑低形成には根本的治療はありません。しかし、強い遠視や乱視等の屈折異常があれば、弱視治療を行うことによりある程度の視力向上が得られる可能性があります。

無虹彩を伴う症例では、虹彩付きコンタクトレンズなどで光の入り口を或る程度絞ってやることで、視力が多少上昇させられることがあります。

というわけで本日は久しぶりに黄斑低形成、先天眼振、低視力の合併について解説しました。

従来このブログでは眼白子症、先天無虹彩、それにPAX6遺伝子の欠如症例における黄斑低形成を論じてあります。
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追記:
今回、再度文献を調査したら、European Journal of Human Genetics (2014) 22, 703–706;にYonatan Perezらの「ホモSLC38A8変異を伴う黄斑低形成およびこれによる眼振と視力低下」という最近の論文がありました。この遺伝子検索は普通にできるものではないですし、またこれが、多くの遺伝子異常の一つを示しただけなのか、ある程度普遍的な物なのかもまだわかりません。

抄録:黄斑形成不全〈これはいつも眼振を伴う〉は、無虹彩、白児症、色盲などの様々な眼障害の臨床スペクトルの一部として見られる。しかし、独立した常染色体劣性の黄斑形成不全の分子的基礎はまだ未知である。単独の黄斑形成不全をもつユダヤ系のインド人(ムンバイ在住)家系の血縁のないイスラエルファミリーの患者は、先天眼振および視力低下を持っていた。遺伝子の全ゲノム解析では、疾患に関連する同型接合性の830&#8201を示した;(LODスコア3.5)。全体的な-exome配列は同型接合性部分に単一のミスセンス突然変異を識別した:これは、SLC38A8の最初の予測される膜貫通領域内の保存されたアミノ酸の変化である(Ile32Ser)。この変異は、ムンバイのユダヤ人で10%キャリアレートを示していて、病気に関連した表現型によって完全に分離できた。SLC38A8はナトリウム依存性のアミノ酸/陽子交互輸送機構をエンコードする。私達は、それが眼だけにおいて発現されるていることを明らかにした。従って、同型接合のSLC38A8変異はたぶん、分離された黄斑形成不全の根底にある。

同様の論文(AJ Human Genetics)
gr1(Recessive Mutations in SLC38A8 Cause Foveal Hypoplasia and Optic Nerve Misrouting without Albinism AJHGより)

Categorised in: 糖尿病網膜症・加齢黄斑変性 (網膜疾患)