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2017年1月23日

8514:網膜色素変性症とは?

8514:網膜色素変性症とは?
網膜色素変性症を疑う患者さんが来院されました。そこで、このような患者さんが来院した場合にどう説明するかを考えつつ、この疾患の概要を再びまとめてみます。

網膜色素変性症は目の中にある網膜という光を感ずる神経の膜に異常をきたす遺伝性で、緩徐進行性の病気で、夜盲、視野狭窄、やがて視力低下を示す疾患です。眼底には典型例では骨小体様と呼ばれる黒い色素沈着がみられます。

難病情報センターのページの特定疾患情報(一般利用者向け)をご覧になるのは患者さんんとその家族にとって有用でしょう。また 診断・治療指針(医療従事者向け)も眼科医および眼科医以外の医師にも役立つ情報が含まれて居ます。これらの内容を清澤流に咀嚼して採録いたします。

1. 網膜色素変性症とは?
網膜色素変性症は目の中にある網膜という光を感ずる神経の膜に異常をきたす遺伝性で、進行性の病気です。網膜色素変性症では網膜の中の視細胞という細胞が最初に障害されます。視細胞は一番最初に光に反応して光刺激を電気信号に変える働きを担当しています。
断面(図:清澤注、眼球の内面のごま塩を撒いたような網膜の変化がこの病気の特徴です)
この視細胞には次の2つのものが混在しています。

(1)杆体細胞:網膜の周辺に多く分布して、主に暗いところでの物の見え方とか視野の広さなどに関係した働きをしています。
(2)錐体細胞:網膜の中心部である黄斑と呼ばれるところに分布して、主に中心の視力とか色覚などに関係しています。
 

視野狭窄

図:視野狭窄(清澤注:街がどの様に見えるかを示した別のページからの引用図です。このように周りが見えなくなりますが、視野の中央は保たれ、視力はよい事が有ります。
網膜色素変性症ではこのうち杆体が主に障害されることが多く、このために暗いところで物が見えにくくなったりし、この症状が”とりめ”、夜盲とよばれます。視野が狭くなったりするような症状も最初に起こしてきます。中心部10度ぐらいの視野が残存するほどになると視力も低下してきます。)

また一口に網膜色素変性症といっても原因となる遺伝子異常は多種類ありますので、人によって症状は多彩です。

2. 頻度は?
網膜色素変性症の頻度は通常4,000人から8,000人に一人と言われています。網膜色素変性症は遺伝病ですが、実際に遺伝が認められるのは全体の50%程度で、残りはその人だけに見られる孤発例と呼ばれるものです。

3. どのような人に多い?
網膜色素変性症の発生率には男女差はありません。
常染色体劣性網膜色素変性症ではしばしば両親が遠い親戚どおしであったりします。
それぞれ発症年齢には個人差が多く出生時にすでに相当進行しているタイプや、子供の頃から自覚症状を訴えるタイプもありますが、40歳ぐらいになって初めて症状を自覚する患者さんも多くいます。
(清澤注:実際に見かける患者さんにも色素沈着が無く、極軽い初期の患者さんがしばしばいます。)

4. 原因は?
この病気は視細胞や、網膜色素上皮細胞に特異的に働いている遺伝子の異常によって起こるとされています。しかし今のところ、明らかに原因となる遺伝子がわかっているのは網膜色素変性症の患者さん全体の極く一部です。
大部分の患者さんではいまだ原因遺伝子は不明です。今後さらに多数の遺伝子異常が明らかにされるものと期待されています。(現況は、専門外来に検索を依頼すると遺伝子異常が分る事が稀にあるという程度です。)

5. 遺伝するか?
明らかに遺伝傾向が認められる患者さんは全体の50%で、後の50%では家族内には病気の人が確認できません。

夜盲

6. この病気ではどのような症状がおきるか?
視細胞の障害にともなった症状が出て来ます。
最も一般的な初発症状は暗いところでの見え方が悪くなる、夜盲です。
(清澤注:お祭りの夜に、友人は歩けたのに、その患者さんだけ暗くて歩けなかったなどと表現します。)(夜盲の図:出典
さらに病気が進むと次第に視野が狭くなってきます。
その後、視力の低下や色覚異常が出てきます。
この病気は原則として進行性ですが、症状の進行度には個人差があります。

♯有効な検査
●視力検査 網膜色素変性症の場合、かなり進行するまで良好のことが多い。

●眼底検査 網膜色素変性症では、典型的な場合、眼底に黒い色素〈しきそ〉が沈着していることが多く、網膜動脈が細くなっていたり、視神経〈ししんけい〉の萎縮〈いしゅく〉などもみられる。

●暗順応検査 夜盲の程度を調べる検査です。(あまり行われない)

●網膜電図 網膜が光を受けたときに発生する電位〈でんい〉を調べる検査で、網膜色素変性症では、発病後早くから電位が低下・消失する。

●視野検査 視野狭窄の程度を調べる検査です。病気の進行レベルを把握するうえで重要。一点を見つめ、周囲の視標を動かして視野の限界を調べる方法(動的視野計)と、視標の明るさを変えて認識できた最小の明るさから網膜各部の感度を計測する方法(静的視野計)がある。

●OCT検査 OCT(光干渉断層計)という器械で眼底の断面像を詳しく調べる方法。視力に重要な黄斑の変化をみるのに適す。

7. どのような治療法があるか?
 網膜色素変性に対しては、現在のところ根本的な治療法がない。

○強い光を避ける
 この病気は遺伝子が関係しているので、今のところ根本的な治療法はありません。ただし、強い光を避けることで、病気の進行を遅らせることが期待できます。

○生活面の工夫について
 眼を守るためには、可能ならば屋内労働中心の職業を選択したり、学齢期であれば部活動は屋内でできるものを選ぶなどの工夫を。

○治療の経済的な負担:網膜色素変性症が特定疾患に指定されていることから、病状により医療費が軽減される場合がある

◎症状の進行を遅らせることを期待して、暗順応改善薬(ヘレニエン)、ビタミンA、循環改善薬などの内服を行うことがある。

 治療法の開発に向けて、網膜神経保護、遺伝子治療、網膜幹細胞移植、人工網膜などの研究が全世界で盛んに行われている。なかでも病気の進行を遅らせる神経保護は、米国で臨床試験が開始されている。しかし、すべての患者さんに安全に治療を行うまでには、まだ時間が必要な状況。

 ロービジョンケアでは、残っている網膜の機能を最大限に活用して、少しでも社会生活を送りやすく工夫します。まぶしさを和らげて見やすくする遮光眼鏡、活字を見やすくするルーペや拡大読書器などを患者さんの病状に合わせて選びます。白杖を持つことにより、自分が視覚障害者であることを周囲に知らせることができますが、白杖で安全に歩行するには訓練を受けることが必要です。

眼科疾患の中でも非常に進行の遅い疾患なので、視力視野の良いうちから慌てないことが肝要。
矯正視力や視野結果を理解して自分の進行速度を把握すること、
進行速度から予測される将来に向けて準備をすること、
視機能が低下してきても各種補助器具を用いて残存する視力視野を有効に使い生活を工夫することです。
ハンディー拡大読書器
(補助器具:拡大読書器の図)
将来期待される治療法として、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜などがありますが、研究が現在はまだ主として動物実験で行われている段階です。
 最近の話題としてiPs細胞を使った研究も出てきています。

8. 病気の経過は?
この病気は進行の早さには極めて個人差があります。
30代でかなり視力、視野が低下する方もいれば、70歳でも1.0の良好な視力の方もいます。
長い経過の後に矯正視力が0.1以下になる方は多いですが、暗黒になる方はむしろあまり多くありません。
症状の進行はとても遅く、検査をしても1年単位の間隔ではふつう、症状の悪化を確かめることはできません。

同じ病名であるからといって同じ症状や重症度、進行度を示すわけではないことを十分に理解して下さい。進行度をみるためには定期的に何回か診察や検査を受けて初めてその人の進行度を予想することができます。

さて、私の説明を理解していただけたでしょうか?同じ病名でも進行が個人によって全く異なるという点が重要です。病名を聞いて心配をしすぎない事も重要です。

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(2017,1,23改定)

Categorised in: 糖尿病網膜症・加齢黄斑変性 (網膜疾患)