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2016年7月23日

7975:鎌状網膜剥離について:(旧記事の再度採録です)

7975:鎌状網膜剥離について:(旧記事の再度採録です)

Peaceさんからの相談  [鎌状剥離?について] をいただきました。 (管理頁)先に概説を記載し、その後にもともとの質問と、それに対するお答えを収載します。このような場合、日本語で答えが無くても英語ですとはるかに多い情報が得られる事があります。
(清澤注:以前の記事が開けないとのご指摘を戴きましたので、再度別ページで掲示します。)

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網膜鎌状剥離という言葉は英語にしますとFalciform Retinal Detachmentということになります。その単語で検索をして見ますといくつかの疾患が出てきますが、その中には家族性滲出性硝子体網膜症( familial exudative vitreoretinopathy)などが原因とされています。

7また別の獣医学関係の論文では鎌状襞と網膜剥離が人の遺伝性の眼疾患に見られるとして, ノリエ病(Norrie’s disease), 網膜異形成症(primary retinal dysplasia), 先天性網膜非接着症(congenital retinal nonattachment)そして, 家族性滲出性硝子体網膜症( familial exudative vitreoretinopathy)などをあげています。最近はこの家族性滲出性硝子体網膜症で網膜鎌状剥離を示したものの遺伝子異常を確定したといった研究が盛んになされているようです。

8先天性鎌状網膜剥離Congenital Falciform Retinal Detachmentはその名の通り、先天性で鎌状の網膜の剥離があるという疾患ですが、その原因には言及してはいない命名です。どこの国なのかもわからないのですがEwa Wójcikの名前で出された抄録はこの病態を比較的解りよく説明していますのでこれを意訳してみます。(http://www.okulistyka.com.pl/06_nr_1_art15.htm)

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ーーーー引用開始ーーーー
この記事はあまり知られては居ない臨床概念である”先天性鎌状網膜剥離”という疾患概念について記述します。

症例は鎌状に硝子体を横断している網膜の襞を示しています。その襞は網膜中心動脈から血液を供給される網膜の2層で形成されています。網膜に入り込んでいる襞は通常に形成された網膜が畳み込まれたものではなく、胎児性の硝子体動脈鞘から出来ています。この疾患の臨床的な本質は網膜構造形成の障害です。網膜の皺と網膜色素上皮の間には(他の裂孔原性網膜剥離などの網膜剥離でみられる)液体は全く有りません。

3ほとんどの場合に患者は多かれ少なかれ、安定した視力を持っています。その視力は、皺がどの部分にあるか(つまり網膜中央の黄斑を冒しているかどうか?)ということと、また眼球のこのほかの先天異常(緑内障や先天的白内障など)がどの程度であるかという事とに依存します。

4網膜襞を手術で解消しようとする試みが成功する余地はまず有りません。しかし、外科的な治療が正当化される場合があります。Norrie病では、聴覚平衡覚障害が中枢神経系と聴器への損傷に伴っていて、ときどきはそれに硝子体出血が併発します。

5この外科的介入によって眼球が温存できるようになりますが、残念ながら視覚機能は改善せず、治療を施した一例での結果では、血管新生が虹彩、虹彩角膜角に発生し、網膜硝子体牽引を引き起こし、虹彩後癒着もおきて浅前房になって、網膜は完全に剥離して、最終的には眼球が萎縮しました。
――――引用終了。ーーーというものです。

先のお答えで、記載しましたように、多くの場合にこの病変は固まっていて進行もしない代わりに手術も出来ないのですが、このような例外的な例もありますので、眼科の主治医を決めて今後も成長の経過を観察してもらう必要があるでしょう。

18元の質問と答え
Peaceさんからの相談  [鎌状剥離?について]

突然の質問で失礼します。実は先日左目が斜視気味ということで検診時にしてきされ5ヶ月の息子を眼科に連れて行きました。
そこで、眼底検査を受けた結果、牽引乳頭と鎌状剥離の症状が見られるとのこと。1ヶ月後にもう一度検査して診断されるそうですが、それまで気になって仕方ありません。

どういった、病名が考えられるかいくつか教えていただければと思い質問しました。
病院の先生がおっしゃるには、状態が良くもならないし、悪くもならないとのこと。視力はみえても0.1ぐらいといわれました。
息子に対して申し訳ない気持ちで、日々、沈んでしまいます。

23せめて、どういった病名が考えられるか、また今後少しでも見える可能性があるのか知りたくて失礼かと思いましたが、メールさせていただきました。息子は未熟児ではありません。

眼の大きさも左右同じだし、素人からみれば、左目もみえてるように思います。右目は正常とのことでした。
また、遺伝する可能性等もご助言いただければと思います。
よろしくお願いいたします。

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お答え(清澤)
其れはご心配なことと思います。
この網膜の鎌状網膜剥離という言葉は、典型的には家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)おいて言われる言葉で、いわゆる網膜裂孔に伴って見られる網膜剥離とは別のものです。

網膜に牽引がかかっていて、黄斑を含め、または含まないで網膜がゆがみ、網膜裂孔が無いまま静かに剥離の状態が続きます。

22場合によっては其れが広範な全剥離に進展することもあると思います。
未熟網膜症以外の病態としては家族性滲出性硝子体網膜症やある種の血液疾患にも見られると思います。

未熟児であったり、家族性滲出性硝子体網膜症などの病気が無くても、出生時に眼球の成長が不十分な場合には見られるかも知れません。

21この場合の様に、主治医の先生が反対眼は正常であるとおっしゃるのであれば、(小児の網膜や硝子体の疾患に通じた専門医の意見を聞いたうえで、行うべき手術などの治療法が無いのであれば、)この眼についてはそっとしておいて、通常の教育環境の中で反対の正常な眼を使って前向きに生きてゆくような誘導を、親も含めて周りがしてあげるのがよろしいかと思います。

子供が先天的なハンディキャップを持って生まれることはありうることで、其れを嘆いても子供の心理上に良いことは無いと思います。

なお、私にはこの疾患の実際の診療を担当したことが多くは無く、此処の患者さんに付きましても見当違いな事を言っている恐れもあります点ご留意ください。

15詳しくは、現在の主治医ないしその先生の紹介を戴いて大学や各県の子供病院眼科などに居るであろう小児眼科の専門医に御相談ください。
 
(追記:東京ならば国立成育医療研究センター(https://www.ncchd.go.jp/)の眼科が取り扱っていると聞きますが、此処への受診には主治医からの直接の紹介状が必須です。それが無い場合には受診を受け付けてもらうことも出来ません。紹介状作成の上、現診療施設から直接予約電話を入れてもらえると、しばらく(数か月)先ではありますが受け付けてもらえるかと思います。大勢の難しい疾患の患者さんが日本中から此処に集まるので、入り口制限をせざるを得ないという事だと私は了解しております。

この疾患に関する新しい知見としては、原因遺伝子の研究がこの記事をはじめに書いた頃よりは多少進んだかもしれません。しかしそれは、そこここに遺伝子変化があるという事が分っただけで、場合に依っては診断確定には至りますが、新しい治療法が見つかったという事ではありません。)

なお、相談者が福岡在住であれば、福岡大学の眼科からはこの疾患に関する論文も多く、この疾患に対する臨床的な情報も多くお持ちかと推察いたします。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
管理頁
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(これは2007年の記事に追記を加えたミラーページです。)

Categorised in: 糖尿病網膜症・加齢黄斑変性 (網膜疾患)