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2016年7月18日

7964:レシチン結合ヨウ素は低酸素ストレスから網膜色素上皮細胞間タイトジャンクション結合を保護する:論文紹介

7964:レシチン結合ヨウ素は低酸素ストレスから網膜色素上皮細胞間タイトジャンクション結合を保護する:論文紹介

「目と心の健康相談室」にもご協賛を戴いている第一薬品産業の会長さんが最新の論文の別刷りとその翻訳資料を持って夏のご訪問という事で、お訪ねくださいました。眼と心の健康相談室は無事にこの一年を乗り越えて、新たな一年に入ったところです。眼と心の健康相談室理事長である荒川さんと共にお話を伺いました。
 下に引用するのは、お持ちくださった近藤峰生先生たちの論文の邦訳です。英語のエディットはマイアミのDuco Hamasaki先生で、最近は御無沙汰してしまっておりますが、私が大学にいたころには大変お世話になった懐かしいお名前です。
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レシチン結合ヨウ素は低酸素ストレスから網膜色素上皮細胞間タイトジャンクション結合を保護する。Masahiko Sugimoto, Mineo Kondo (三重大学)

目的:レシチン結合ヨウ素(LBI)が網膜色素上皮タイトジャンクション結合性を低酸素ストレスから保護しうるか否かを検討した。

方法:培養ヒト網膜色素上皮(ARPE-19)細胞をLBI(レシチン結合ヨウ素=ヨウレチン®)で前処理した。細胞を低酸素誘導化学物質CoCl₂と共にインキュベートし、低酸素状態とした。タイトジャンクション(TJ)を
、対照群・LBI単独処理群・CoCl₂単独処理群・LBI+CoCl₂処理群間で比較した。併せて培地中のサイトカイン濃度も測定した。
結果:CoCl₂群では対照群と比較してZO-1(zunula occludens-1)の傾向強度は有意に低下した。(CoCl₂群5787.7±4126.4 vs 対照群2944.6±2981.2、平均±標準偏差)。しかし、LBI+CoCl₂群では有意な低下が認められなかった。(27289.0±11231.1)。monocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)およびChemokine (C-C Motif) Ligand 11(CCL-11)の濃度はCoCl₂群が対照群よりも有意に高かった【MCP-1: 340.8±43.3 vs 279.7±68.3pg/mL、CCL-11:15.2±12.9 vs 12.5±6.1pg/mL。LBIによる前処理によりいずれのサイトカイン濃度も低下して192.6±23.8(MCP-1)および5.46±1.9pg/mL(CCL-11)となった。MCP-1、CCL-11のブロックも低酸素ストレスからのタイトジャンクションの保護を示す類似した結果を示している。
 結果:LBIは低酸素に対する保護作用を持つ。
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注記:(CoCl2についての注記を引用しておきます。)
塩化コバルト(以下CoCl2)はProlyl hydroxylase domain protein (PHD)の阻害剤である。PHDは低酸素状態で活性化する転写因子であるhypoxia-inducible factor(以下HIF)αタンパクの分解を担っている。通常酸素濃度下では、PHDによってHIFαの特定のプロリン残基、Pro402とPro564、が水酸化され、ユビキチン化され、プロテアソームによってHIFαが分解される。低酸素下ではPHDの活性は抑制されてHIFαは安定化する。そこで、HIFαは恒常的に発現しているHIFβと二量体を形成し、ヘテロ二量体の転写因子となったHIFが、低酸素障害を軽減する血管内皮細胞増殖因子(以下VEGF)やエリスロポイエチンなどの遺伝子の転写を活性化する。PHDの活性は通常酸素濃度下でも、CoCl2やジメチルオキサリルグリシンなどの化学的阻害剤によっても抑制される。

Categorised in: 糖尿病網膜症・加齢黄斑変性 (網膜疾患)