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2021年1月29日

12613:先天性色覚異常は色覚特性のひとつであって、いわゆる「異常」ではない:というお話

① Q:色覚の異常の人は見えにくいと感ずることが有りますか?

A:色覚とは波長400から800ナノメートルの可視光線の中で色を感じるヒトの視覚の機能です。網膜で光に反応する視細胞には円錐型の形をした錐体と呼ばれる細胞と、円柱型の形の桿体の2種類が有ります。

このうち網膜の中央部に分布する錐体細胞が色を感ずる働きを持っています。色には色相、明度、飽和度の3つの要素があります。色相を決める波長は長い方から赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と変化します。明度は色の明るさ、飽和度はそれぞれの色相に白がどの程度混ざってしまっているかで決まります。光のエネルギーを同じにした場合、明所では黄緑色が最も明るく感じられます。色にはこのような網膜での色識別の他に、脳での色識別の機能もあります。大脳皮質の一部には色を感ずる機能が局在的にありますが、ここでは周りの色との対比なども行われていて、同じ波長の光だからと言っても、同じ人でも常に同じ波長の光が単一の色として感じられるとは限りません。

後天的な色覚障害は視神経炎などのように視野の中心部で色を識別する部分の視野が欠ける場合に見られます。これならば、本人も色が分からないことを強く訴えます。他方に先天的に色覚が弱いとされる人がいます。これは俗に色盲とか色弱の話になります。その場合には色覚検査がパスできなくて運転免許を交付されないことも有ります。また、それらの方々は子供の時に絵を描いたら先生に「リンゴは茶色ではなく赤で描いて」などと指摘されたという経験を持つことが有ります。しかし日常生活で困ることはほとんどありません。最近は眼科でもいわゆる正常と異常とを包括するために何々型色覚と呼ぶようにしています。

私たちは3種類の錐体で色を感ずるのが普通と思いがちですが、それは正常というわけではなく、色覚の特性は多くの動物に共通なわけでもありません。哺乳類は、魚類のみならず、両生類、爬虫類、鳥類と違って、分化の過程においていったんは2色型色覚になっていました。そして、霊長類が分化した段階で3色型になったという経緯を持っているのです。

中生代の恐竜の時代には、われわれ哺乳類の祖先は夜行性の小動物で、暗所での高度な色覚は必要なかったのです。基本的に脊椎動物は4色型なのですが、夜行性への適応として哺乳類は錐体を2種類失って2色型になりました今の霊長類は、失った緑に対応するオプシンを、赤のオプシンから遺伝子変異させることで得ました。また、青のオプシンは紫外線用のオプシンを青方面に少し移動させることによって得ました。こうして赤緑青(RGB)の色空間を得る人が増えていったようです。こうした変化を獲得することで2色型では森の中で葉の緑と果実が熟した時の赤を識別しにくかったのが解消されたと説明されています。

 つまり、いわゆる正常の3色と呼ばれる物の他に他特性を持った色覚というものがあって、「色覚異常」と呼ばれる人において特定の色を感受できなくなったわけではなく、多くの人が今の特殊な3色型の色覚特性を持って物を見ているが、その色覚特性を持っていない人も相当数いるということです。ですから、その人の色覚特性がどうであるかということであって、その人を色覚異常であるとみなすのは間違いであるという考えがあるのです。

(以上が2020年9月3日(木) 15:54 に清澤が書いたまとめです.このブログには色覚関連の記事も多数あります。

https://www.brh.co.jp/research/formerlab/miyata/2006/post_000004.php には、色覚の分化に関するさらに詳しい記載があります。)

  ―――従来の色覚異常の分類の解説を滋賀医科大学色覚外来のページから採録します

色覚異常の分類(診断と程度分類)

単に色覚異常というと、先天赤緑色覚異常のことをいうのですが、もっと広い意味では色々なタイプの色覚異常が存在します。
光を感じて最初に反応するのは、眼底の網膜にある視細胞という神経細胞で、これは暗いところで主にはたらく杆体(かんたい)と、 明るいところではたらく錐体(すいたい)とに分けられ、錐体はさらにそのスペクトル感度の違いにより、L錐体、M錐体、S錐体に区別されます 。

L、M、S というのはそれぞれ、long-wavelength-sensitive、middle-wavelength-sensitive、short- wavelength-senseitve の頭文字で、長い波長の光に感度が高い錐体、 中くらいの波長の光に感度が高い錐体、短い波長の光に感度が高い錐体という意味です。いわゆる赤錐体・緑錐体・青錐体なのですが、この表現では、 たとえば赤錐体が刺激されると“赤”を感じるかのように誤解されますので、L、M、S錐体のほうが適切でしょう。いずれにせよ、この3種類の錐体の反応の割合で色を感じているのです。 色覚異常はこの3種の錐体のうちどれか1つか2つ、あるいは3つ全部が欠損したり不完全であったりして起こります。 残っている錐体の種類や数によって色覚異常は次のように分類されています。


1) 杆体1色覚(杆体1色型色覚、rod monochromatism);錐体は存在するのですが3種類ともはたらきません。暗いところでの杆体は正常にはたらきます。 非常に視力が悪く、強いまぶしさや眼球振盪(目がゆれる)もあって、色の感覚の異常よりも視力の問題の方が大きいのです。

2) 錐体1色覚(錐体1色型色覚、cone monochromatism);これは錐体ははたらいていますが、1種類だけです。杆体は正常です。はたらいている錐体の種類によりL錐体1色覚(red cone monochromatism)、M錐体1色覚(green cone monochromatism)、S錐体1色覚(blue cone monochromatism)に分類されます。いずれも極めてまれです。L/M型は視力も良いのですが、S錐体1色覚は視力も悪く、杆体1色覚と大変よく似ていて区別することはなかなか困難です。

3)2色覚(2色型色覚、dichromat);錐体が2種類はたらいています。これはさらに、L錐体がはたらかない1型2色覚(protanope)、M錐体がはたらかない2型2色覚(deuteranope)、S錐体がはたらかない3型2色覚(tritanope)に分けられます。

4)異常3色覚(異常3色型色覚、anomalous trichromat);2色覚にもう1つ異常な第3の錐体(雑種錐体)が加わったもので、 L錐体の代わりにM型の雑種錐体が、 あるいはM錐体の代わりにL型の雑種錐体がはたらいています。正常錐体のどれか1つがはたらかないことは2色覚と同じで、色々な色覚検査で2色覚と非常によく似た成績を示します。 そこでこれも2色覚に準じて、1型(異常)3色覚(protanomal)、2型3色覚(deuteranomal)、 3型3色覚(tritanomal)と分類されています。

 杆体S錐体M錐体L錐体
杆体1色覚、杆体1色型色覚×××
S錐体1色覚、青錐体1色型色覚××
M錐体1色覚、緑錐体1色型色覚××
L錐体1色覚、赤錐体1色型色覚××
1型2色覚→●
2型2色覚→●
3型2色覚×
1型3色覚→■変異型M
2型3色覚→■変異型L
3型3色覚、実在する? ●
存在不詳?
● ● 
■=変異型の(雑種)M錐体,■=変異型の(雑種) L錐体

Categorised in: 小児の眼科疾患