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2020年12月1日

12470:児童虐待に特徴的な身体所見:眼科的特徴;記事紹介

野村耕治先生(兵庫県立こども病院眼科部長)が、救急医学44:1430-1434にこの総説をまとめられ、別刷りをお送りくださいました。最初の部分に「被虐待児に見られる眼科的特徴と視機能への影響」をまとめており、とても参考になる文章ですので抄出採録いたします。なお、転倒程度の軽い衝撃で乳幼児に見られる慢性硬膜下出血の亜型(中村1型)には言及がありませんでした。

ポイント

・受傷後できるかぎり早期の眼底検査が望ましい

・網膜出血がSBS(揺さぶられっこ症候群)を示唆する唯一の症候となる例がある。

・網膜障害が高度の場合は、不可逆的な視機能障害を後遺する。

被虐待児に見られる眼科的特徴

 揺さぶられっ子症候群(shaken baby syndrome: SBS)を主とする被虐待児に見られる眼科的兆候としては、網膜出血および硝子体出血が大半を占め、他に視神経乳頭浮腫、有頭部や裂孔原性網膜剥離などが見られる。

 網膜出血は硬膜下血種や頭蓋骨骨折などの頭部外傷に合併する例が多いが、単独に見られる場合も少なくない。幼児虐待における網膜出血の発現率については94%と高い特異性が報告されている(1)。軽度の網膜出血は数日で消失するため、頭部外傷の有無にかかわらず虐待が疑われる場合には、受診から3日以内に眼底検査を行うことが推奨される。一方、硝子体出血は頭蓋低骨折、脳損傷などの重症頭部外傷に合併する頻度が高い(2)。

出血は網膜の表層から深層まで多層性、多発性に見られる。出血の形態から斑状、刷毛状、火炎状などと形容され、大小さまざまな出血が散在、癒合して見られる。通常、視神経乳頭の近傍から中心網膜血管に沿う形で放射状に見られ、、範囲は眼底好局に限局する例から眼底の広範にみられる例まで多様である。特に網膜の広範囲・放射状の出血はSBSに特徴的な所見であり、虐待と関連しない外傷では、通常みられることはない。また、出血に伴う網膜分離の頻度も高いとされ、(3)、網膜出血のみに比べて視機能予後はより不良である。

 網膜出血の機序として説明されているのは、眼球の加速減速を伴う激しい往復運動により小児の(加齢に伴う液化がない)有形硝子体が、繰り返し網膜に応力を加える結果、硝子体との接着が強固な視神経乳頭や後極血管の近傍に集中して出血を来すという考えである。

視機能への影響:網膜出血、硝子体出血ともに自然吸収の傾向が高く、外科的介入が必要な例は稀。消退までは数日から数か月。出血のみなら視機能予後はよいが、網膜萎縮、出血性網膜分離では不可逆。形態覚遮断(弱視)に注意。

注意すべき鑑別疾患、①Terson症候群、視神経乳頭の腫脹も起きる。②新生児網膜出血

文献

(1)、Bharadwaj G ophthalmology 117,,2010.

 (2)Kobayashi Y,Jpn J ophthalmol 53:348-388,2009.

(3)Kivlin JD, Ophthalmology 107:1246-1254, 20000.

(4) Gilliland MGForensic Sci Int 68:117-132, 1994,

Categorised in: 小児の眼科疾患