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2020年8月12日

12170:斜視に対するA型ボツリヌス毒素注射治療の現状と課題(森本壮 大阪大):記事紹介です

清澤のコメント:この記事は今回の日本眼科学会雑誌124巻8号に掲載された「斜視に対するA型ボツリヌス毒素注射の治療効果」三村治ほかに対する巻頭言(617p)です。内容を抄出してみます。斜視診療を行う施設では取り入れられつつある手技です。

  • 初めに:1973年Scottoらがサルの外眼筋にBTX-Aを施注。のちに斜視患者に応用し、海外で用いられた。1996年から日本でも承認され、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸などに適応弛緩拡大されたが。斜視への適応は2015年である。
  • BTX-Aの作用機序:神経毒素で毒素型によって7種類に分類される。A型が最も安定し毒素作用が強い。BTX-Aが末梢の神経筋接合部にあるコリン作動性神経終末の受容体に結合しエンドサイトーシスでシナプス小胞に取り込まれる。軽鎖が構造変化を伴いつつ細胞質内に移行。軽鎖はアセチルコリン放出に関与するSNAP-25を切断して、アセチルコリンの放出を抑制し、神経伝達阻害、筋弛緩作用を示す。
  • 様々な斜視に対するBTX-A注射の治療効果:作用を弱めたい外眼筋にBTX-Aを注射し眼位を矯正する。内斜視では内直筋に注射し、矯正する。簡便で短時間、外眼筋は温存。小児や甲状腺眼症、麻痺性斜視などにも応用される。急性内斜視も最適な疾患の一つで、長期間有効で良好な立体視を維持できる。甲状腺眼症活動期では炎症で斜視角が変動して、手術が行えないが、BTX注射は活動期にも使える。麻痺性斜視:急性期の外傷性外転神経麻痺、脳性麻痺による内斜視、急性期の片眼外転神経麻痺で有効。急性期滑車神経麻痺は下斜筋への注射で上下斜視や回旋を減弱できる。日本の小児では12歳以上が適応。(三村論文参照)。
  • BTX-A注射の合併症:注射後一過性に眼瞼下垂や上下変異が生じる(20-47%)ことが有る一過性上下斜位2-16%。施術の事前説明が必要。
  • BTX-A注射の課題:上記の下垂と術後斜視への方策を要す。ヒアルロン酸添加で合併症が減る可能性あり。局所に薬剤を留めるため、皮膚科ではゲル化製剤の臨床試験が行われている。自己抗体産生の可能性。投与法については点眼麻酔下で投与する。推奨法は筋電図ガイドで、初期投資を要す。今後乳児内斜視への適応拡大が必要。
  • 終わりに:初めから50年。認可が5年前で、投与量の承認は今年で、十分には浸透していない。今後斜視診療の重要なアイテムとなってゆくだろう。

Categorised in: 小児の眼科疾患