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2020年7月19日

12099:「成人したRB(網膜芽細胞腫)」:野口麻衣子さんの講演を拝聴しました。

清澤のコメント:第14回 日本心療眼科研究会で「成人したRB(網膜芽細胞腫)」という野口 麻衣子(RBピアサポートの会 共同代表 https://rbpeer.jimdofree.com/)の講演を拝聴しました。コロナ禍の中、大変な苦労で準備開会をされた世話人の岩田 文乃先生に感謝申し上げます。

発表内容の直接の採録は控え、網膜芽細胞腫 概要 – 小児慢性特定疾病情報センターの記事から網膜芽細胞腫に関する記載を短縮採録して見ます。

この発表では患者さんの遺伝子検査や着床前診断などを大きな話題に取り上げておられました。この疾患を含む小児がんを論ずる国の審議会に眼科医や患者家族が加えられていないことに関する若倉先生の発言も印象的でした。

疾患概念

網膜芽細胞腫は、胎児性神経網膜由来の悪性腫瘍である。腫瘍が片眼のみに発症する片側性(unilateral)と両眼に発症する両眼性(bilateral)がある。
眼球に腫瘍を単数認める単巣性(unifocal)、多数同時に認める多巣性(multifocal)の場合がある。
遺伝子異常の様式により、遺伝性(hereditary)、非遺伝性(non-hereditary)に分類される。
網膜芽細胞腫は、13番染色体の長腕のバンド14(13q14)に存在する網膜芽細胞腫遺伝子(RB1遺伝子)の異常により生じることが明らかにされている。RB1遺伝子は、がん抑制遺伝子の概念を確立した遺伝子であり、細胞周期の制御をはじめ、細胞の分裂増殖に重要な役割を担っている。2対の遺伝子の双方に異常がおこり、その機能が欠失して発症にいたる。
遺伝性例では、RB1遺伝子異常が、受精時に胚細胞レベルでおこっており(germ line mutation生殖細胞系列変異)、全身のあらゆる細胞に遺伝子異常をもち、後に二次がんを発症するリスクが高い。
非遺伝性例では、受精後に体細胞レベルで遺伝子異常をおこし(somatic mutation 体細胞変異)発症にいたると考えられ、二次がんの発症は一般人と変わりない。

疫学

小児期に発症する眼球内腫瘍の中で最も頻度が多い腫瘍である。15000〜20000出生に1人の頻度で、 5歳未満の小児における年間発症率は100万人あたり約10〜14人とされ、本邦では年間70〜80名の新規発症例がある。
1歳までの小児がんの11%を占める。
平均発症年齢は18ヶ月、5歳までに95%が発症する。全体の約40%は遺伝性であり、多くの患者は両側性で、多巣性の病変をもち、1歳までに診断される。これらのうち、家族性に発症するのは15%である。

症状

腫瘍が小さいうちは、症状を認めず、腫瘍がある程度大きくなってから発症することが多い。我が国の網膜芽細胞腫全国統計によれば、初発症状の頻度は、白色瞳孔60%、斜視13%、結膜充血5%, 視力低下2%、眼瞼腫脹1%、眼球突出0.5%の順となっており、白色瞳孔、斜視が多い。

診断

近親者が異常を訴えている場合には、本疾患の可能性が否定されるまできちんと追跡するのが望ましい。眼底が透見できる場合、眼底検査によって眼球内腫瘍の存在を確認することによって診断される。その後の治療方針の決定のためには、早急に専門医療機関で評価を受けるのが望ましい。

治療

治療の目標は第1に救命であるが、腫瘍が眼球内にとどまる場合には、視機能や眼球を温存することが第2の目標とされる。今日では、疾患そのものより二次発症の有無が生命予後を左右するため、特に遺伝性例では、二次がんリスクを高めるような診断法や治療法をできるだけ用いないようにする配慮が必要である。


1. 眼球内腫瘍の治療

1)眼球摘出と術後化学療法;進行病変の場合には、眼球摘出が第一選択とされる。摘出眼球の強膜外浸潤、視神経断端の腫瘍細胞陽性所見は、術後化学療法の適応とされる。術後療法の適応についての検討が続けられている。
2)眼球温存治療: 温存治療は、視機能と眼球を温存しながら救命しようとする治療である。患者・家族がそのメリット、デメリットを十分理解し、同意を得たうえで実施する必要がある。
温存治療の標準的治療であった放射線治療(外照射)は、他の治療法では目標を達成しがたいときに用いられる。
全身化学療法は、単独では治癒にいたることが少なく、放射線治療を用いずに温存を達成するため、様々な局所療法が導入され併用されてきた。
局所療法にはレーザー治療、温熱療法、冷凍凝固治療、小線源治療があり、多くは化学療法と併用して用いられる。欧米では全身化学療法を用いずに、局所化学療法と局所治療によって温存を達成する試みがはじまっている。

2.眼球外腫瘍の治療
眼球外に腫瘍を見て認めた場合には、診断後、遠隔転移の有無を評価した後、腫瘍を摘出し、放射線治療・化学療法を併用して治療される場合が多い。
3.三側性網膜芽細胞腫:遺伝性例に発症する脳腫瘍で、正中線上に生じ、松果体部に最も多い。
4.二次がん:遺伝性例では、頻度順に頭蓋骨・長管骨の骨原性肉腫、松果体腫瘍(三側性網膜芽細胞腫)、皮膚黒色腫(メラノーマ)、脳腫瘍など2次がんを発症するリスクが高い。

予後

我が国をはじめとする先進国では、ほとんどが眼球内腫瘍の状態で診断されるために, 1980年代から5年生存率、10年生存率ともに90%を超えている。
原疾患よりも、二次がん発症の有無とその治療の成否が生命予後を左右するようになっており、特に遺伝性例では、治療にそのリスクを上昇させる可能性のある治療を用いないなどの配慮が必要である。
眼球温存の達成は、病期に左右され、国際分類D群に相当するびまん性播種を認める例では、様々な治療を併用して5割近くで可能となっている。

Categorised in: 小児の眼科疾患