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2020年6月29日

12033:さらわれた赤ちゃん 児童虐待冤罪被害者たちが再び我が子を抱けるまで

清澤のコメント:金曜日に藤原一枝先生の来訪を戴き、この本の恵贈を受けました。この書評記事は先の記事と同じ著者の通崎睦美さんですが、「中村1型」と呼ばれる乳児の外傷で見られる急性硬膜下血種にまで踏み込んで解説しています。小児の眼底出血を伴う頭部外傷の全てが乳児虐待症候群ではない、親を冤罪に貶めてはならないというお話です。

眼科医であるあなたが、「 あなたが直接その親を知らないような状況で 、眼底出血の眼底写真があって乳児虐待症候群も疑われる乳児」についての意見書を求められたら「ほかに単純な転倒など急性硬膜下血種を起こす外傷歴がないならば、乳児虐待症候群もその原因として考えられる」という程度の限定的な意見にしておかないと、患児とその親を不幸にしてしまう恐れがあるということも忘れないようにしましょう。

ーー書評ーーー

さらわれた赤ちゃん 児童虐待冤罪被害者たちが再び我が子を抱けるまで 藤原一枝著 幻冬舎 1200円

2020/02/16 05:00

◇ふじわら・かずえ=1945年生まれ。藤原QOL研究所代表。小児頭部外傷をめぐる無実の罪を追及。
◇ふじわら・かずえ=1945年生まれ。藤原QOL研究所代表。小児頭部外傷をめぐる無実の罪を追及。

親子強制分離への怒り

 評・通崎睦美(木琴奏者)

 小児脳神経外科医として50年のキャリアを持つ著者は、あるルールを見直すべきだと強く主張し、これまで厚生労働省に足を運んだり、リーフレットを制作したり、身を挺ていしての活動を行ってきた。<不当な扱いに怒りの感情がなくて、変革はあり得ない>。満を持して本書を上梓じょうしし、怒りの原点そして、その改善案を記す。

 つかまり立ちを始めた乳幼児が家庭内で転んで頭をぶつけ、病院に運ばれる。ここで、「急性硬膜下血腫」「眼底出血」「脳浮腫」が認められると、虐待を疑い、児童虐待防止法に基づき病院から児童相談所に通告するルールがある。その後、子どもはまるで「さらわれる」かのように連れ去られ、両親には行き先を伏せたまま乳児院に保護される。転倒時、第三者の目撃があっても、全く考慮されない。この状態で家族は、数か月を過ごすこともままある。果ては、家族が傷害致死罪で実刑を言い渡される。CTのない時代なら「脳振盪しんとう」という病名しかつかなかった軽傷例までが、頑かたくななルールの運用により、冤罪えんざいへとつながっている。

 著者は、「急性硬膜下血腫」が虐待によって発症することを承知するが、同時に6か月から2歳までの子どもの家庭内の些細ささいな事故で起こる「中村I型」と称する急性硬膜下血腫の可能性を忘れてはいけないと警鐘を鳴らす。「中村I型」は1965年に論文発表されて以来、多くの症例報告があるが、日本脳神経外科学会と日本小児科学会との間で理解に乖離かいりがあり、後者はこれを認めていない。さらには、法曹界では、小児科学会の意見が優先される傾向にある。

 著者は、脳神経外科医と他領域の医師が、互いに「中村I型」の解明に尽力し、適切な判断基準を作ることを願う。「自分」ではなく「子ども」を守るため、脳神経外科、小児科、福祉、法曹、なにより政府が垣根を越え、専門知識を活いかし、柔らかな頭としなやかな心で、問題解決にあたってもらいたい。(引用終了)

Categorised in: 小児の眼科疾患