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2016年12月14日

8405:小児のびまん性橋膠腫 (橋グリオーマ pontine glioma)眼所見?

本日の外来から:
下の記事と同じことを説明する医学生の動画です。 ディフューズ・イントリンジック・ポンタイン・グリオーマ

小児のびまん性橋膠腫 (橋グリオーマ) diffuse intrinsic pontine glioma DIPGを眼科医が診察し評価する場合に有用と思われる諸点を拾ってみます。
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外転神経、顔面神経、PPRFなどの含まれるポンスの断面が、腫瘍によって左右全体でびまん性に侵されると考えれば、下の記事の各症状は十分に想像できるでしょう。

(脳外科医沢村豊先生の記述を参考に:http://plaza.umin.ac.jp/sawamura/glioma/brainstemglioma/)
14618_myextj(借用元http://cursoenarm.net/UPTODATE/contents/mobipreview.htm?38/12/39113)
初めに
•脳幹部内部に発生する予後不良の小児腫瘍です
•小児脳腫瘍の10%くらいを占める
•小児では3歳から7歳くらいの幼児に多いのだが,大人にもみられる
•脳幹部は、大脳からの神経線維が集中して走る部位であり,呼吸中枢や意識の中枢がある
•脳幹部は上の方から順に中脳(midbrain),橋(pons),延髄(dedulla oblongata)と呼ばれる
•ほとんどの例は橋 pons に発生するので,橋グリオーマ pontine glioma と呼ばれる
•もし万一,生検術がされた場合,脳幹部神経膠腫の病理組織は星細胞系腫瘍
•末期になるとほとんどが膠芽腫の病理所見を呈す(剖検報告)
•histone H3のK27M遺伝子に変異がある

症状
•初期症状は,片方の目が内側による内斜視 (esotropia, 外転神経麻痺)が多い
(清澤の追記:ポンタイン・エソトロピアといって、橋病変では内斜視を示すことが多いが、時には外斜することもある。外転神経麻痺でも麻痺筋方向を見た時には内斜になるが、共動性内斜視と外典神経麻痺は厳密に見れば別物です)
•ふらついて歩くのが不安定になること(失調性歩行)を示す。
•3ヶ月くらいでゆっくり進行して気づかれるものから、3週間くらいで急激にひどい症状になるものまである
•逆に3ヶ月以上かかってゆっくり進行している脳神経麻痺や失調症状では,びまん性橋膠腫以外のものも考えなければならない。★1
•顔面神経麻痺で顔がゆがむ、眼球運動障害で眼の位置がおかしいなどの脳神経症状もでることがあるが,小児は自分から症状を訴えることが少ない。

MRI画像診断
•MRIでは脳幹部(とくに橋)が腫れて大きくなる。
•MRIのFLAIR(フレア)画像とかT2強調画像で,白くぼーっと滲んだように写る。
•腫瘍の一部が造影剤で白く増強されることがある。
•末期になっても水頭症は起きにくい。中脳水道の閉塞による水頭症は20%くらい。
•髄液にのって脊髄に転移する髄液播種が生じることがある

•小児の典型的なびまん性橋膠腫のMRI(T2強調画像)

•多くは脳幹部の橋を中心にして発生 (pontine glioma) し,上方の中脳や下方の延髄に浸潤してゆく。(清澤注:沢村先生は画像でそれとわかるから、手術による生検は推奨しないという。この記述は眼科医向けなので画像診断の詳細は割愛。)

治療
•摘出手術は脳幹部の重大な機能障害を生じるのでできない。手術の利点は少ない。
•世界標準治療は放射線治療。
•多くの場合,放射線照射により一時的な腫瘍の縮小効果と症状の改善は得られ、70%くらいで,症状が改善する。しかし,長期の治療効果はきわめて不良で再燃する。
•脳幹部の浮腫で症状が悪化したときにはステロイド(リンデロン、デカドロン)を使うと一時的に症状が改善する
•化学療法は効かないと思った方がいい。強くは勧められない。

予後
•橋グリオーマの子供たちが1年くらいのうちに死亡する確率は50%程度。
•2016年時点でも2年生存割合は10%以下。
•びまん性橋グリオーマとは違って,脳幹部の毛様細胞性星細胞腫は化学療法で小さくなりますし放射線治療が有効なことも多い
•小児と異なり成人の脳幹部の星細胞腫では,長期生存例もある。病理診断は同じでも生物学的には異なった特性を持つ。

•神経線維腫症の1型(NF-1)の患児にできる脳幹部膠腫は大きくならず,大きくなっても治療をしてはいけない。NF-1の患者に放射線治療はしない。

•毛様細胞性星細胞腫やNF-1に合併する脳幹部膠腫との鑑別診断は慎重に。

びまん性橋グリオーマではないかもしれない時というのは
•症状が出てから腫瘍が発見されるまで6ヶ月以上経過しているとき:
•思春期以降の年齢が高い例は違った治療と予後があるかもしれない。
•画像所見が典型的ではない時は:★1;毛様細胞性星細胞腫,神経節膠腫,乏突起膠腫,退形成性乏突起膠腫,退形成性乏突起星細胞腫,PNET,AT/RT,退形成性星細胞腫などなど。

Categorised in: 小児の眼科疾患