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2021年5月28日

12895:ほとほと困った患者さんとの問答…どうしたらいいのか、お知恵を拝借したく:若倉先生コラムから

Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

2021年4月29日

医療・健康・介護のコラム

ほとほと困った患者さんとの問答…どうしたらいいのか、お知恵を拝借したく

神経眼科医清澤のコメント:私の様に、私費診療部分の無い保険診療だけを行っていても、このように患者さんが私の診療に満足いただけないことで困ることはしばしばあります。会計窓口での捨て台詞ともなれば最悪です。まして予約料を設定して診療をしている若倉先生の場合には患者さんからの苦情に苦労することは多数ありそうです。私費診療の美容形成外科でも似た状況があることでしょう。若倉先生のヨミドクターの今回の話題は、「自分の訴える異常を眼科医に理解し治療してもらえない」ことにいら立つ患者さんとでも申しましょうか?有名になりすぎたため、予約料を設定することであまりに多くの患者さんが若倉先生の前に並ぶのを避けていると伺ったことがあります。このお話、窓口の事務員さんの方が、若倉先輩よりも、もっと苦しかった事だろうと思って読みました。最近、私は通常の120%の自分の時間や人手をかけて、それでも納得していただけない場合には、その患者さんから自分は敢えてそっと離れる様に考えています。今までにそうしてドクターショッピングを繰り返して私のところにたどり着いた患者さんが、ここでも満足できる答えが聞けなかったのであれば、きっとまた次の医師を求めることでしょう。医療で医療者は自分にできる最大の努力を尽くす義務は感じますが、改善されるという結果に対する責任を負うものでは無いと思うのです。ここまでの困難なケースでも更に悩まれているのは、若倉先輩なればこその心のやさしさと感心するところでもあります。

   ーーーーヨミドクター記事採録ーーーー

 外来診療で、医者である私もほとほと困り果てるという事態が、年に2、3回はあります。異常ではない個人差にこだわり、「どうしても治してほしい」と頑強に求め続けるような場合です。

 今回は、読者の皆様に、そういう場合どうしたらいいのか、お知恵を拝借したく事例を紹介します。

 「目の充血」を訴える20歳代後半の女性が、診療情報提供書(紹介状)持参で来院されました。

 病的な変化はなく、ひと通り行った視機能検査でも、強めの近視以外に異常はみられません。「病気は全くないように私には見えますが……」と言うと、途端に不満顔になりました。そして、スマートフォンで撮影した目の画像を見せて、「夜になると、こんなに真っ赤になるのです」と言います。このためにコンタクトレンズもつけられないし、就活(就職活動)もできないと主張するのです。

 その画像では、確かに、現時点より結膜の血管は目立つように見えますが、目の炎症や傷などが原因の病的な充血ではないと判断できました。

 「結膜に血管があるのは当然です。充血は病気で生じるだけでなく、疲労とか、泣いたり怒ったり、自律神経の変化で強くなることがあり、また個人差も大きいのです」と説明しました。そして、たとえば就寝時などで自律神経がお休みモード(副交感神経優位)の時は充血し、活動モード(交感神経優位)になると充血が減るという生理的な変化もあるということも付け加えました。

 「目が正常だということは、何軒も眼科に行って言われているのでわかっています。『原因不明の病気を研究している医師だから』と紹介されたので、遠方からわざわざ来たのです。私はとても真剣なのです」

 かなり攻撃的な口調でそう述べます。

 紹介元の医師がどのような表現をしたのか明らかではありませんが、私に過度な期待を寄せていることは間違いありません。

 私は、個人個人が顔の造作も違い、同じ日本人でも肌や髪の色が少しずつは違うのと同じように結膜血管の状態には個人差があることを改めて説きました。言外に、「個人差を治せと言われても無理筋だ」とにおわせたつもりでしたが、ここからさらに押し問答になります。

 「じゃあなぜ、夜になるとあんなに充血するのですか」

 「先ほど言った、自律神経などの影響や、目の疲れが原因で充血するのではないですか」

 「じゃあ、疲れを取ってください」

 「ビタミン剤くらいならありますが、疲れを完全に取り除くような魔法の薬はありません。充血だけを一時的に取る収れん剤はありますが、リバウンドするので日常的に使うことは勧められません」

 「コンタクトレンズをすると角膜に傷がついて、もっと赤くなるのです。コンタクトはしてもいいのですか」

 「あなたの目の現状は、コンタクトを禁じなければいけない状態ではありません」

 「では、また赤くなったり、傷がついたら責任をとってくれるのですか」

などといった調子です。

 個人差の範囲にある充血に過度にこだわるところが病的だと考えられます。それを認めるなら心理的対処方法は伝えられますが、それを示唆的に口にすると、

 「やっぱり、心因性だというのでしょ、他の医者と同じじゃないですか」

 そして、帰り際、受付では、「診察に納得がいかないから予約診療費は払わない」と、ごねたそうです。

 医者に行けば治る、すべて解決するはず、と思い込んでいる方を説得するのは至難です。

 これも医師の一つの役割だと割り切ってはいますが、こんな反応は後味の悪いものです。ほとほと困りました。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

Categorised in: 神経眼科