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2021年1月19日

12584:視神経交叉近傍に発生して視力を脅かす脳腫瘍にはどんなものがあるのだろうか?

清澤のコメント:直近の記事ではありませんが、下に引用するのは2020/10/17 の新聞記事です。誠に残念な失明ですが、この患者さんは両眼の視力を同時に失っていますので、視神経交叉付近の病変が考えられ、下垂体線腫や髄膜腫などが想起されます。果してどのような腫瘍であったのかを推定できるデータを探してみました。その結果見つかった2020年の論文ではトルコ鞍およびトルコ鞍上領域の下垂体腺腫(27人の患者)、トルコ鞍上領域の頭蓋咽頭腫(2人の患者)、鞍結節の髄膜腫(6人の患者)、および下垂体茎の下垂体茎部腫瘍(1人の患者)の割合であったとされていました。この論文に含められた腫瘍の平均最大直径は25.82±10.32mm(範囲、6–60 mm)であり、この患者さんの80ミリの腫瘍は特に大きい物だったことが判ります。視覚症状の期間は1〜24か月の範囲であったということで、患者さんの病歴とも相違しては居ませんでした。この元論文は網膜神経線維層や神経節細胞の脱落を論じたものでした。(末尾に論文情報記載)

ーーー新聞記事ーーー

視力ほぼ失ったアイドル、力強く歩く姿…見えるようになったのだろうか

 脳腫瘍が原因で、昨秋に視力をほぼ失った群馬のご当地アイドル「あかぎ団」のメンバー・加藤さやかさん(32)。今年9月に動画投稿サイト「ユーチューブ」へ上がった草津温泉を旅する動画では、カメラに向かって話し、力強く歩く姿があった。目は見えるようになったのだろうか――。今月17日に手術から1年を迎える加藤さんに現状を聞いた。(竹田迅岐)https://86f44815e541bfefa087f54accee655a.safeframe.googlesyndication.com/safeframe/1-0-37/html/container.html

■懸命のステージ

 加藤さんは昨年8月、脳に直径8センチの腫瘍が見つかり、8時間におよぶ手術を乗り越えた。術後は視界が徐々に薄れ、2週間後にはほぼ何も見えなくなった。つらい日々が続いたが、メンバーやファンに支えられ、今年1月にステージ復帰を果たしていた。

 「視力は回復したのですか」。そう声をかけると、小さくほほ笑み「まだ字は読めないし、人の顔もわからない。よくなった感覚はないんです。少しずつ慣れてはきたかも」と語った。

 ステージでは下に落ちないよう注意し、実際に違う方向に動いてしまうことも。それでも徐々に慣れ、ファンから「見えてるみたい」と言われる機会は増えた。「でも、まだ納得できる動きではないです。本当はもっと上手に踊れるのにな」。もどかしく、悔しい気持ちは今も消えない。

 県外からの来場者が増える中で、目が見えないことを知らないファンもいる。「一人だけ違った動きをしてファンを戸惑わせたくない。障害を持っている人も頑張っているんだよ」。そんな思いを伝えたくて8月からは、自己紹介で目が見えないことを告白している。

■現状を見つめる

 「腫瘍を取ればすぐに目が見えるようになる」。1年前はそう勝手に信じていたが、何も変わらないまま時だけが過ぎていく。「視力が戻るのは時間がかかると認める過程で『障害者です』と言葉にしてもいいと思えた。見えない現状で、できることを増やすのも大事なこと」と感じるようになった。最近ではユーチューブから流れる音を聞きながら、目が見えない人の化粧の仕方などを勉強している。

 一番痛感したのは「自分で選べない」という現実だ。スーパーでおすしを買う時、ネタがわからず1貫ずつ母親に教えてもらうことも。ふとした瞬間に「何かを選ぶ場面って、日常でこんなにあるんだ」と驚いた。

 一方で、欲しいものも見つけた。白杖はくじょうだ。これまでは「今、見えないだけ」と避けてきた。だが、現状を受け入れたことで、白杖があれば行動範囲を広げられることに気づいた。そして「いつか目は良くなる」と信じる日々が続く。

■希望の光信じて

 復帰後はメンバーも積極的に声をかけてくれ、さらに時間がたつと、メンバー同士で声をかけ合う場面が増えた。「私の存在がメンバーの成長にもつながってくれたらうれしい」

 腫瘍は取ったが再発や転移の可能性は残されている。今月末も検査があり、その結果を聞くのが怖い。検査日が近づくにつれて不安でたまらなくなる。それでもファンと話す時間は不安から解放されるから不思議だ。

 昨秋、理由を公表しないまま休みに入ったがファンは復帰を待ってくれていた。9月にはファン約80人と「生誕祭」を開催。来場者がライトを振ってくれ、ダンス中もぼんやりとした光に導かれるように正面を向くことができた。「あかぎ団こそが自分の帰る場所だ」。そう毎日感じている。

 ただメンバーやファンの姿を直接見たわけではない。「視力が回復して、みんなの笑顔を見ることができた時が本当の意味で帰ってこれた瞬間だと思う」。「その時」を思い描いて、今日も前を向いて歩いていく。

関連論文紹介:Lee, GI., Park, KA., Oh, S.Y. et al. Analysis of Optic Chiasmal Compression Caused by Brain Tumors Using Optical Coherence Tomography Angiography. Sci Rep 10, 2088 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-59158-1

果たしてこの両眼性の視力低下はどのような腫瘍で起こるのだろうか?その答えは「光コヒーレンストモグラフィー血管造影法を用いた脳腫瘍によって引き起こされた視交叉圧迫の分析 Ga-In Lee他:Scientific Reports第10巻、記事番号:2088(2020)」で見つかった。

この論文では、光コヒーレンストモグラフィー血管造影(OCT-A)を使用して、脳腫瘍によって引き起こされた視交叉圧迫のある眼の黄斑および乳頭周囲の微小血管の変化を、健康な対照眼と比較して定量的に評価していた。その論文の結果の最初の部分を見ると、「この研究には、視交叉圧迫のある36人の患者の合計36眼が含まれていた。これらの患者では、トルコ鞍およびトルコ鞍上領域の下垂体腺腫(27人の患者)、セラー上領域の頭蓋咽頭腫(2人の患者)、鞍結節の髄膜腫(6人の患者)、および下垂体茎の下垂体茎部(1人の患者)による視交叉圧迫を示した。腫瘍の平均最大直径は25.82±10.32mm(範囲、6–60 mm)であり、視覚症状の期間は1〜24か月の範囲であった。すべての患者は経蝶形骨腫瘍切除術を受けた。 最良の矯正視力(BCVA)と視野欠損は、2つのグループ間で大幅に異なっていた。 (網膜神経線維層(pRNFL)と神経節細胞層複合体(GCC)の厚さは、平均値と4象限値を含めて、対照群よりも患者群で有意に低かった(すべてP <0.001)。

Categorised in: 神経眼科