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2020年7月1日

12039:65歳の母が目の痛みと物が二重に見えると言い出した:眼窩偽腫瘍、特発性眼窩炎症(日刊ゲンダイ自著記事)

65歳の母が目の痛みと物が二重に見えると言い出した

写真はイメージ

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【Q】65歳の母が眼痛と複視を訴えて特発性眼窩(がんか)炎症と診断され、数年間ステロイド投与が続いています。原因と最新の治療法を教えてください。

【A】目のくぼみ(眼窩)の内側に炎症が生じるこの疾患は「特発性眼窩炎症」と呼ばれ、成人の痛みを伴う眼窩腫瘤(しこり)で最も一般的なものです。悪性腫瘍の経過に似ているため、1954年に「炎症性偽腫瘍」と命名されました。限局化すれば、外眼筋、涙腺、強膜、ブドウ膜、上眼窩裂に影響し、広がると眼窩脂肪組織を巻き込みます。甲状腺眼症および眼窩リンパ腫に次ぐ頻度の高い眼窩疾患です。

 特発性眼窩炎症は、既知の原因を伴わず、リンパ球浸潤を示す眼窩炎症過程です。涙腺54%、外眼筋50%、眼窩脂肪75%、視神経20%などに影響します。病因は不明ですが、さまざまなリウマチ性疾患とも関連します。

 特発性眼窩炎症は、突然の痛み、眼球突出、腫脹と紅斑などの炎症性徴候を示し、普通は片側のみに表れます。痛みが一般的症状で約60%、複視(物が二重に見える=35%)と続きます。

 眼窩周囲組織の浮腫と腫脹も多く(75%)、眼球突出(30~60%)、眼球運動制限(50%)、充血(50%)、結膜浮腫(30%)が起きます。

 CTは、眼窩脂肪、筋肉、骨構造の評価に優れ、MRIは軟部組織の評価に適します。涙腺と外眼筋は肥大し、視神経を囲む炎症も観察できます。

■軽症なら経過観察し20%が寛解維持

 眼球構造物は非特異的肥厚を示し眼窩脂肪には浸潤と炎症が見られます。眼窩先端部および頭蓋内にも炎症は広がります。非特異的眼窩炎症は眼窩疾患の10%程度とされますが、私の診療所でも大学の神経眼科外来でも増えている印象があります。同様な臨床像の眼窩疾患は甲状腺眼症、眼窩リンパ腫、眼窩蜂窩織炎です。甲状腺眼疾患が眼窩炎症で最も一般的で、眼窩炎症症例の60%を占めます。

 非特異的眼窩炎症の治療として、軽症例では経過観察し、20%が寛解を維持します。症状が悪化する場合には追加治療法です。非ステロイド系抗炎症薬が軽症例で 使われます。全身性コルチコステロイドが、抗炎症効果および免疫抑制効果による主力療法です。

 ステロイドへの反応は急速で、全症状が劇的に改善されます。治療法には、観察単独、抗生物質、経口コルチコステロイド、静脈内コルチコステロイド、放射線療法および全身性免疫抑制薬(メトトレキサート、アザチオプリン、およびシクロスポリン)が含まれます。

 全体像として、67%が完全な症状解消、17%が部分的症状改善、17%では症状の改善なしだったそうです。比較的早期に症状安定が得られれば市中の診療所での加療観察も可能ですが、重症例は全身性免疫抑制剤などが用いられる専門病院での加療が必要です。

関連記事: この記事は先の「モノが二重に見え始め甲状腺異常と診断…治療すれば治る?」の続編です。 https://hc.nikkan-gendai.com/articles/273700  

下記リンクは当ブログのさらに詳しい特発性眼窩炎症の記事です。

Categorised in: 神経眼科