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2020年3月27日

11677:欧米の言語はなぜ繰り返しが多く、くどいのか?:記事紹介です

清澤のコメント:脳の視覚生理学では、日本語における漢字とかなの処理経路の違いというのは、古くから興味を持って研究されてきたテーマです。つまり、漢字はパターン認識で腹側視覚路、仮名は音のような連続処理で背側視覚路というわけです。昔、私もそのようなことを考えてみた時期がありました。繰り返しが多くてくどいのがそれと関連するかどうかは知りません。欧米の言語は、主語と述語がきっちりしている感じがあり、自動翻訳でも主語述語の不明確な日本語の下手な文章はきれいには訳されにくい気がいたします。末尾に関連論文を採録しておきます。

―――記事の要点を抄出―――

2020年3月26日(木)11時10分 平野卿子(ドイツ語翻訳家)

<ドイツ語の本を日本語に翻訳する際、4分の1ほどカットしたいと著者に申し出たことがある。著者に理由を説明すると、「きっと日本人のほうが、頭がいいんですね」と笑った>

ドイツ語であれ英語であれ、繰り返しの多さだ。これでもかこれでもかというほど、同じことを繰り返す。

以前、『幸せの公式』(講談社)という作品を翻訳した。最新の脳科学の知見をベースに幸せとは何かについて論じた、とても興味深い作品だった。著者はドイツの有名週刊誌『シュピーゲル』の元記者で、文章はとてもうまい。

しかし、とにかく繰り返しが多く、くどいのだ。―――どうしてもこの膨大な繰り返しを訳す気にはなれなかったため、思い切って最初の10ページをコピーして削りたい箇所を囲い、「このようにカットしたいと思います」とエージェントにファクスで送った。――すると、その1時間後になんと著者から直接返事が来たのだ。「了解。すっきりして、かえってわかりやすくなったかもしれません」。

数年後、「あなたのファクスを見て、確かにこれでも通じると思いました」と言うので、「実はあなたの本だけではありません。他にも、著者の了解を得てカットしたことがあるんです。私と同じようなことを感じている日本人翻訳者は多いと思いますよ」と私は言った。

表音文字と表意文字を同時に使う日本語

私の昔からの自論はこうだ。アルファベットとカナ(ひらがな・カタカナ)は表音文字であり、漢字は表意文字だ。日本語はこの両方を同時に使う言語である。漢字とカナは脳の別のところで認識されるため、脳はより活性化される。しかも漢字は図像なので、視覚に訴える力がカナよりはるかに強い。だから、日本語を読むときには表音文字だけの欧米語よりずっとしっかり記憶される、と。

実はこれはなかなかいい線をいっていた。最近調べたところ、認知心理学が専門である米タフツ大学のメアリアン・ウルフ(Maryanne Wolf)教授によると、表音文字を使う英語の場合は使われるのは頭の後ろの左側から耳の上にかけてであり、表意文字の中国語の場合は頭の左側と同時に右側の後ろから耳の上あたりも使われるという。

したがって日本語は、漢字を読むときは中国語に近いルート、カナを読むときは英語に近いルートと、英語と中国語の混合型となる。

先のドイツ人著者はこう話してくれた。つい何度も同じ内容を文章で繰り返してしまうのは、そうしないと読者が忘れてしまうのではないかと思うからだ、と。

「日本の読者はそんなことはないんですか?」と聞かれたので、先の自論を展開したところ、「きっと日本人のほうが、頭がいいんですね」と笑いながらも、日本語についても少し知識のある彼は、「なるほど」とうなずいた

[筆者]平野卿子:翻訳家。お茶の水女子大学卒業後、ドイツ・テュービンゲン大学留学。著書に『肌断食――スキンケア、やめました』(河出書房新社)。

---昔の論文です----

Jpn J Ophthalmol  39 (2), 198-205 1995

Effect of Kanji and Kana Reading on Cerebral Blood Flow Patterns Measured by PET M Kiyosawa 1M ItohY NakagawaN KobayashiM Tamai

さまざまな種類の記号から視覚情報を処理する際の経路のそれぞれの機能を調査するために、陽電子放射断層撮影(PET)により、日本語の形態文字(漢字)と表音文字(カナ)の読み取りが脳血流(CBF)に及ぼす影響を調べました。 9人の日本人男性に、スキャンの2分前にランダムな順序で3つの視覚的条件が表示されました。目の開いたコントロール、漢字の形態図の読み、かな音節の読み。漢字または仮名で書かれた3つの単語が表示され、被験者はそれらを黙って読み、他の2つの単語と論理的に無関係な単語を識別するように指示されました。読書と分析のタスクは、視覚関連の皮質の広い領域を活性化しました。漢字と仮名の読みを比較すると、代謝が高く、前者は一次視覚皮質の後部にしかなかった。 CBFの増加のパターンはわずかに異なりましたが、ほとんどのCBF増加は両方の刺激に共通でした。左半球のCBF変化の相関行列は、漢字の読みでは腹側のつながり、仮名の読みでは背側のつながりを示した。私たちの結果は、日本語の形態図と音節図を読むとき、パターン化された知覚と逐次的な知覚の間に脳の機能的な違いがあることを示唆しています。

同様の研究

Categorised in: 神経眼科