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2020年3月20日

11648:「見えにくい」は認知症のリスク 目の変調は対応早く

清澤のコメント:一人の眼科医が視機能から認知機能までの全てを知り尽くし、治療することはむつかしいでしょう。しかし浅くてもその両者を認識することで患者さんのQOL改善を図ることは可能と思います。視機能低下と一部の認知症の関連は古くから考えられてきたことです。症例によっては、今でも視機能低下を改善させることで人の認知機能の改善を図ることができるかもしれません。白内障を専門とする大鹿先生と、認知症の眼球運動を専門とされる武田先生のインタビュー記事を紹介します。

ーー記事抜粋ですーーー 3/19(木) 7:47配信  https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200319-00000002-nikkeisty-hlth&p=1  

年齢とともに、かすむ、ぼやけるといった「見えにくさ」を感じることが増えてくる。だが、年のせいだから、と放置するのは危険。ドライアイと鬱の関連や、白内障による見えにくさが認知機能低下につながることなどが分かってきている。一方、白内障手術で抑うつ状態や認知機能が改善するという報告や、目の動きをとらえることで簡易に認知機能の低下がわかる検査も登場している。早めに「目の変調」をチェックして、認知機能を守りたい。

■白内障手術で抑うつ、認知機能も改善

対象物を見るだけでなく生涯の健康を下支えするのが視機能。イギリスで行われた「高齢社会で自立して生活するための条件を探る研究」では、認知機能、身体機能、視機能の3つの維持が重要と提言。視覚障害は他の機能障害を招き、死亡リスクも高めるとし、予防の必要性を説く。
日本は世界の中でも最も速く高齢化が進む国の一つ。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症となり、700万人を超えるという推計もあるが、認知機能の維持には視機能が大きく関わっているようだ。
米国で行われた60歳以上を対象にした約3000人の調査では、部屋の向こう側のテレビ画面が見えない、新聞が読めないといった視覚障害があると、認知機能障害や認知症のリスクが1.9~2.6倍になるという結果が出ている。
加齢によって罹患(りかん)数が増える白内障と認知機能の関連を研究するのが、筑波大学医学医療系眼科の大鹿哲郎教授。「白内障の手術を行い、視機能が回復すると、抑うつ状態、認知機能も改善した」(大鹿教授)。
白内障は目のレンズ機能を果たす無色透明な水晶体のたんぱく質が変化し、濁ることによって発症する病気。――水晶体の初期の混濁を含めた有病率は、50歳代で37~54%、60歳代で66~83%、70歳代で84~97%、80歳以上で100%とされている。

■視機能が良くなると睡眠も改善

白内障手術で抑うつや認知機能が改善されたメカニズムについて、「しっかり見えることによるメリットが大きい」と大鹿教授。物がよく見えないと、周囲が安全かどうかがわからず、動作が鈍く、遅くなる。相手の顔や対象物が見えないので消極的になり、引きこもるリスクも高い。「反対に、周囲がよく見えるようになると、動作も素早くなり、積極的な行動が可能になる。実際に、視力低下により寝たきりのような生活をしていた人が白内障手術を受けると元気に出歩き始め、身なりにかまわなかった方がきれいに化粧をするようになる、という変化は臨床事例でも多く見られる」(大鹿教授)
大鹿教授は水晶体の濁りが改善されることによって体内時計が正しく働くようになる、というメカニズムにも着目する。大鹿教授は「体内時計は光が網膜に届くことでリセットされるが、白内障によって水晶体が混濁すると光の透過率が下がり、網膜が光を受け取る量が減る。すると、光刺激によって分泌される睡眠ホルモンのメラトニンが正常に分泌されず、体内時計の乱れ、睡眠の質の悪化、さらには抑うつや認知機能低下につながっていくのではないかと考えている」と語る。
国内の1037人(平均年齢71.9歳)を対象にした研究でも、白内障手術を受けたグループは白内障手術を受けなかったグループよりも睡眠の質が良く、睡眠中の覚醒時間が短かったと報告されている。

白内障手術は認知機能改善に効果的だが、アルツハイマー病や脳血管疾患による認知症などの発症後に白内障の手術をしても効果は期待できないという。大鹿教授は「しかし、認知症の予備軍といわれる軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)の段階であれば認知機能が回復する可能性もある」と指摘する。
「私たちは普段あまり意識していないが、目から入る情報は五感で得る情報の約80%を占めると言われるほど多い。その情報量が大きく減ることが認知機能に何らかの影響をもたらすのは当然ともいえる。視機能が低下する病気は、白内障以外にも、緑内障や加齢黄斑変性などがあり、患者数が増加している。老年期に視力を維持していくためには、なによりも早期発見が重要」と大鹿教授は強調する。ーー

「緑内障や加齢黄斑変性による視野障害は自分で気づくのは難しいので、45歳を過ぎたら1度は眼科検診を。何もなければ5年後に再度、検診を受けてほしい」(大鹿教授)
なお、IT機器の長時間利用などに伴って現代人で急増しているドライアイとメンタルの関係も注目されている。
目に不快感やかすみがあるといったドライアイ症状のある患者40人を対象にした研究では、ドライアイの自覚症状とうつ病、不安スコアに正の相関があった。
ドライアイは点眼薬でも改善する。見えにくい状態を放置せず、早めに対処することが、認知機能や心の状態を守ることにもつながるといえそうだ。

■たった3分の「視線の追跡」で認知症を早期発見

「視機能」を手がかりに、認知症の早期発見を図るという取り組みもある。
目の動きを追跡する「アイトラッキング」という技術を用いて、3分間モニターを見るだけで認知機能のチェックが行える「アイトラッキング式簡易認知機能検査」だ。
モニターに問題と解答の選択肢が映し出される。これが3分間に10問続く。その間、モニターを追う被験者の視線の動きが記録され、正解を見つめていた時間が長いほど認知機能スコアが高いと判断される。

開発に携わった大阪大学大学院医学系研究科の武田朱公准教授は従来の認知機能検査は医師と対面し、10~20分の質疑応答で行われる。ごく基本的なことがわからず自尊心が傷ついたりということもしばしば起こる。短時間かつ実用的な検査方法が必要だと常々感じていた」と話す。
この検査では、JVCケンウッド社が開発した「Gazefinder(ゲイズファインダー)」という赤外線カメラで視線を検出する計測装置を用いている。この計測装置を認知症領域に適用できるのでは、と武田准教授は考えた。この検査法は、従来の認知機能検査と遜色ない精度で認知機能障害の評価が可能であることも確認された。

■認知症の「見逃し」なくして治療につなげる

武田准教授は「診療現場では、初診で認知症と診断される人のうち、数年前から進行していたはず、と思われる人が半数以上を占める」と話す。認知症には、遺伝的要因があるいっぽうで、高血圧や糖尿病、肥満、喫煙習慣や運動不足など、治療したり改善したりすることによって発症を避けられるリスクファクターが35%を占める、という報告がある。
「目の動きから得られる情報をもとに、簡易かつ正確に、認知症の手前の軽度認知障害の段階で発見できれば、これらのリスクファクターがある人は改善を心がけられる。それによって、認知機能の維持や正常化につなげていきたい」(武田准教授)

大鹿教授は「目の健康と認知機能の維持、さらには全身の健康維持のために私たちが日常生活でできる対策は共通している。それは、カラフルで抗酸化成分が豊富な野菜や果物、魚を含むバランスのいい食生活をこころがけること、こまめに運動をすること、禁煙することなどだ。当たり前のことだが重要なことだと認識してほしい」と提案する。
こうした生活習慣が目と脳のアンチエイジングに有効であることには科学的な根拠がある。日常の習慣を見直して健康維持につなげて、もし目の不調に気づいたら早めにケアをする、といった基本を大切にしたい。
(ライター 柳本操、イラスト 三弓素青)

恐縮ですが、その昔の私のアルツハイマー病にも視覚症状があることを書いた研究論文です:

Kiyosawa M, Bosley TM, Chawluk J, Jamieson D, Schatz NJ, Savino PJ, Sergott RC, Reivich M, Alavi A. Alzheimer’s disease with prominent visual symptoms. Clinical and metabolic evaluation. Ophthalmology. 1989 Jul;96:1077-85 その要旨翻訳:

顕著な視覚症状を伴うアルツハイマー病。 臨床的および代謝的評価。

清沢M 1 、 ボズレーTM 、ほか Ophthalmology 1989年7月; 96(7):1077-85; ディスカッション1085-6。

著者情報

1ペンシルバニア大学、フィラデルフィア,神経学。

概要

著者は、アルツハイマー型認知症の8人の患者(DAT)で病気の初期に顕著な視覚症状のある5人(VS)と視覚症状のない3人の患者(NVS)を検査した。 VS患者の神経眼科検査の結果は、図の転写、色か覚検査表でテストされた色覚、そして立体視において比較的一貫した異常を示した。 18F-フルオロ-2-デオキシグルコース陽電子放射断層撮影(PET)によって決定された脳のグルコース代謝は、VSおよびNVS患者の一次視覚皮質において、同年齢および性別を合わせた12人の正常なボランティアと比較して変化していません。 VS患者のグルコース代謝は、左右の視覚連合皮質でそれぞれ45%および34%減少しました(それぞれPが0.01未満およびPが0.05未満)、そして左および右下頭頂皮質で34および37%減少しました(Pが0.05未満)コントロールと比較; NVS患者は、これらの領域で有意な代謝変化はありませんでした。 症状、身体検査、および代謝画像検査は、これらの患者が、主に視覚失認による視覚症状を有する軽度の認知症を伴うことが多いDATの不均一だが明確な臨床サブグループであることを意味します。

Categorised in: 神経眼科