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2020年1月2日

11415:神経障害性疼痛に関する理解の進歩:記事紹介

眼科医清澤のコメント;義兄が新年のあいさつに来てくれ、 歯科での慢性疼痛の研究を始めているという話を聞きました。その話はまた聞くとして、この話題は眼科でも注目されているので、少しググってみました。

2019年8月9日の記事です。

研究成果のポイント

・神経障害性疼痛※1の新規メカニズムを発見した。
・神経障害性疼痛を発症したラットでは、痛み刺激の伝達に重要である脊髄後角※2でFLRT3※3タンパク質の発現が増加しており、脊髄内介在神経で発現するFLRT3の抑制により持続的な鎮痛効果が見られた。
・15億人以上が患うとされる慢性疼痛に対して、高い鎮痛効果を示す治療薬の開発に繋がることが期待される。

概要

大阪大学大学院医学系研究科分子神経科学の藤田幸准教授、山下俊英教授(分子神経科学)らの研究グループは、神経の異常な興奮で起こる痛みである神経障害性疼痛において、痛みの伝達に重要である脊髄後角でFLRT3タンパク質の発現が増加し、痛みを増幅させることを動物モデルで発見しました。

慢性の疼痛は全世界で15億人以上の患者がいると推計され、一方で現在の治療に満足する患者さんは1/4程度に過ぎず、大きな社会問題となっています。特に神経障害性疼痛は、神経損傷、糖尿病、脳卒中などの疾患に起因して発症し、原因疾患の治癒後も持続する難治性の疼痛です。これまでの治療法は、中枢神経系での神経伝達の遮断や減弱をコンセプトとしており、めまいや眠気、依存などの副作用が認められていました。そのため、これらの副作用を回避して鎮痛効果を発揮する新規治療ターゲットが望まれていました。今回、山下教授らの研究グループは、神経障害性疼痛モデル動物では、FLRT3タンパク質が、痛みを伝える末梢神経、及び脊髄後角で発現が増加することを突き止めました。FLRT3を抑制すると、持続的な鎮痛効果がみられました(図1)

神経障害性疼痛の病態形成には、痛みの伝達経路の異常が疑われていた。神経の損傷によって脊髄後角では、神経回路の再編が起こり、神経細胞が過剰に興奮した状態に陥る。この神経興奮がどのような分子メカニズムで起こっているのかは不明だった。今回、脊髄後角に着目し、痛みの増幅に関わる分子や、そのメカニズムを調べた。先行研究から、脊髄後角のネトリン-4※4タンパク質が、Unc5B受容体※5を介して、脊髄後角での神経興奮を引き起こすことがわかっていた。しかし、ネトリン-4は神経損傷後に発現増加しないことから、神経損傷をきっかけとしてUnc5Bを介したシグナルのスイッチとなるメカニズムがあるのではないかと考えられた。

用語説明

※1 神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)
神経障害性疼痛は、体の感覚を伝える体性感覚神経系の、損傷や病変の結果として発症する。痛覚過敏や刺激がなくても痛みを感じる自発痛が症状の特徴である。

※2 脊髄後角(せきずいこうかく)
脊髄の細胞が分布する灰白質のうち、背側の部分。末梢からの痛み情報は、末梢神経(一次神経)から脊髄後角で二次痛覚神経に伝達され、脳へ伝わる。

※3 FLRT3(fibronectin leucine-rich transmembrane protein 3)
FLRTは膜貫通型タンパク質であり、哺乳類にはFLRT1-3までの3つのファミリー分子が存在する。FLRT3は神経突起伸張やガイダンスや細胞接着分子としての機能が知られている。これまで、末梢神経の切断によって、FLRT3の発現が増加することが知られていたが、成体で痛みを引き起こすメカニズムは本研究グループの成果によって初めて明らかになった。

※4 ネトリン-4
ネトリンは、発生期に神経軸索の誘引や反発などを制御することで、神経回路の形成に関わるファミリータンパク質である。他にも細胞移動や細胞生存など多様な機能を有する。本研究グループにより、Netrin4はUnc5B受容体を介して脊髄後角で痛みを引き起こすことが示されている。

※5 Unc5B受容体(アンク5B:Uncoordinated protein-5B)
Unc5はネトリンの受容体である。哺乳動物では、Unc5A-Dの4種類が存在する。FLRT3は、Unc5B受容体を介して、神経軸索のガイダンスを制御することが知られていた。

Categorised in: 神経眼科