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2019年11月18日

11312:「外傷性視神経症の診断と治療について教えてください」の記事が掲載されました

◎ 新しい眼科19:臨時増刊号 「中途失明の可能性のある疾患Q&A」(メディカル葵出版)288-291. 2019.11.30発行、6600円、に私たちの依頼原稿「外傷性視神経症の診断と治療について教えてください」が掲載されました。その概要を採録します。興味のある方は、当医院に別刷り請求をなさるか、当該書籍をご覧ください。

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外傷性視神経症の診断と治療について教えてください

清澤源弘,小町祐子, Goodman Michael,大野明子  

別刷請求先: 〒136-0075

       東京都江東区新砂3-3-53 アルカナール南砂2階

Title:Diagnosis and treatment of traumatic optic neuropathy

Q: 外傷性視神経症の診断と治療について教えてください

A:

■           頭部および顔面外傷時の眉毛部外側の打撲により視神経が障害され、視力障害を引き起こした状態を外傷性視神経症とよぶ。

■           視神経の挫滅、骨折による圧迫、視神経管内の出血による圧迫、栄養血管の断裂、視神経管内における視神経の浮腫による圧迫などが原因に挙げられる。

■           保存的治療のほか、視神経の減圧を目的としたステロイド療法、血腫や骨折発見時には手術療法が行われるが、確立された治療法は定まっていない。

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はじめに:眉毛部外側の打撲によって、視神経の挫滅、骨折による圧迫、視神経管内の出血による圧迫、栄養血管の断裂、視神経管内における視神経の浮腫による圧迫などが原因となる。

外傷性視神経症の診断 (抄出

TONの主な原因である視神経管骨折では、多くの場合、眉毛外側の打撲を認める。したがって、眉毛外側に創を認める場合は視神経管骨折を併発している可能性があり、視力測定ができない状態であっても直接および間接の対光反射を確認する必要がある。―――

TON診断に関する新しい方向性としては、Bodanapally らのMRIを用いて視神経の拡散テンソルによる評価を試みた報告がある。軸方向の拡散係数axial diffusivity (AD) は眼窩内視神経を前方と後方のセグメントに分割し、拡散テンソルのセグメント間の違いを評価した。

外傷性視神経症の治療 (抄出)

Chaon BCらは「外傷性視神経症治療法に標準的治療法はあるか?」という総説をまとめ、以下のように述べている。TONに対する外科的または内科的介入を調査したランダム化比較試験は存在しない。――SosinらはTON後の治療転帰を検討している。コルチコステロイド投与と観察のみの転帰は同等であったとしている。BignamiらはTONに対してーー外傷後8時間以内のステロイド治療を推薦しており、メチルプレドニゾロン療法は、その神経保護メカニズムのために選択の最初の治療法として支持されているという。そしてステロイド治療に加えて12~24時間以内の内視鏡による外科的減圧術が最善であったとしており、手術は治療の12〜24時間以内に行うべきだと述べている。

Steinsapirらはステロイドの使用にむしろ批判的である。しかし、エビデンスが乏しいとしても、実際には何もしないよりは多少なりとも回復を期待してステロイドを投与することは許されるだろう。ステロイドを投与するならば、250mgを1日4回2日間パルスで投与するか、中・低用量としては、1日60~100mgの投与を行う方法が治療の選択になり得る。

最新の治療研究: (抄出)

Kashkouliらによって間接的TON患者において、最初にエリスロポエチン(EPO)の静脈内投与が開始され、2014年にフェーズ2で再試験されており、その効果を静脈内ステロイドと比較して観察した。主要評価項目は最高矯正視力(BCVA)の変化で、副次的項目として色覚の変化や相対的瞳孔求心路障害(RAPD)、副作用、そして最終的な視覚改善に影響する要因の評価が含まれた。EPO:69名、ステロイド:15名、観察:16名の3群全てでBCVAの有意な改善を示した。BCVAは群間での有意差はなかったが、色覚はEPO群で有意に改善されたという。

Benowitzらは、眼の投射ニューロンである網膜神経節細胞(RGC)は視神経損傷後に軸索を再生する能力をほとんど示さないが、20世紀の研究では一部のRGCが視神経に移植された末梢神経のセグメントを通して軸索を再生できることが示されたとしている。(中略)視神経再生の進歩は、視覚的な回復だけでなく、成熟した中枢神経系の他の部分への損傷後の転帰の改善にもその応用は有望であると述べている。

自験症例

20代女性。バッティングセンターで右眼に自打球を受けた。受傷3日後、都内某病院を受診。前房出血、網膜変化が認められたが右眼視力は(0.7)であった。受傷10日目、急激な視力低下をきたして初診病院を再受診し、紹介来院となった。来院時視力、右:指数弁、左:(1.2)。眼底には視神経と黄斑の間に脈絡膜破裂があり、(0.02)まで視力が回復した時点でも、ゴールドマン視野では中心視野が障害され耳側から下方周辺視野のみ残存している状態であった。視力低下が脈絡膜破裂によるものか、TONかが検討された。MRIでは内側の吹き抜け骨折と視神経変化も認められたため、TONとしてステロイドパルス療法が施行された。視力は2週間で(0.7)、その後(1.2)まで回復し、最終的には視野も著明な改善を示した。

本症例は視力低下発症が受傷10日後と遅く、隅角解離と脈絡膜破裂、吹き抜け骨折を伴う点が非定型的であった。しかし、ステロイドが著効した経緯から、この視力低下は主にTONによるものであり、ステロイドによる消炎効果が奏功したものと考えられた。

まとめ

 TONは一般に受傷直後から急激な視力低下を来すことが多く、できるだけ早期の治療開始が予後に影響すると言われている。しかし、その治療法については未だ議論が続いている状況である。また、紹介した自験例のように非定型的かつステロイド治療が奏功した症例も存在する。近年では、神経再生治療の急速な発展によりTONに対しても加療として有効であるとの報告も見られるようになり、今後、TON治療への新規療法としての応用も期待されるところである。

以前の外傷性視神経症の関連記事を下にリンクいたします。東北大学での自験例20例のまとめが収載してあります。

Categorised in: 神経眼科