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2019年10月9日

11152:外転神経麻痺とは

外転神経麻痺 The Abducens nerve palsy

この外転神経麻痺というのも人気のメニューの一つです。

外転神経麻痺:複視の訴えが後天性の麻痺で見られます。

Ruth and Yungeによれば1000例の眼球運動神経の麻痺の内訳は、外転神経麻痺 419、動眼神経麻痺 290、滑車神経麻痺 172ですから外転神経の麻痺の頻度はもっとも高いものです。

外転神経の麻痺を伴う6つの症候群を説明いたします。

1、外転神経の単独麻痺

外転神経はしばしば動眼神経、滑車神経、三叉神経、顔面神経などの脳神経、交感神経や体を動かす運動神経の経路である錐体路などと、一緒に侵される事があるのですが、単独に第6外転神経だけが麻痺する場合もあります。

そのような単独外転神経麻痺にはどのような原因が隠されているのでしょうか?

○ 最もよく見られるのは若年のウイルス感染後のものです。15歳以下の症例ではウイルス感染をまず疑います。ウイルス感染であれば、その多くは4か月で解消します。

○ 40歳以下なら腫瘍を疑う必要がありますから、腫瘍の除外にはMRIを撮影することが必要です。

○ また、成人の単発麻痺では虚血性のものが疑われ易いです。老人なら、虚血の可能性が高く、原因の追及はやや手を緩めてよいと考えます。

○ しかし、4ヶ月以内に外転神経麻痺が改善ないし緩解しない場合や、他の神経症状が出現した場合には、さらに追加での検査が必要であると考えられます。

◎ 外転神経の単独麻痺の鑑別診断としては次のようなものがあげられます。

○ 眼筋無力症(重症筋無力症のうち眼の筋肉だけに症状が出ているタイプ)最近は抗アセチルコリン受容体抗体以外の異常の存在も指摘されています。これとは別に、抗GQ1b抗体陽性のフィッシャー症候群も外眼筋麻痺の位置系として鑑別に加えておきましょう。

○ 甲状腺疾患(バセドー病の眼症状では上転制限のほかに外転制限も見られる場合があります。)

○ Duane’s syndrome (type 1) :デュアン症候群は先天的な外眼筋の神経との接続異常ですが外直筋に動眼神経の線維が入るので眼球の外転が弱くなっています。

○ 近見反射の痙攣:近くを見ると左右の眼が内側によりますが、この近くを見る眼球運動が痙攣で強まっていると、眼位は内斜視になって外転が悪いように見えます。

○ 内壁の吹き抜け骨折で筋の挟まったもの:眼球を正面からたたくような鈍的な外傷では眼窩の下または内側の骨が破れて、眼窩脂肪や筋肉がそこに挟まります。内直筋が挟まると眼球は外に向けなくなって外転制限を起こしますから、一見外転神経麻痺様に見える場合があります。

○ 先天性内斜視で融像が壊れたもの:内斜視が生まれた直後からあってそれが融像で正位に保たれていた場合、融像が後に壊れて内斜視が明らかになる場合があります。これも外転神経麻痺とは分けて考えねばならないものです。

◎ このほかに様々な場所の病変で起きる外転神経の麻痺が知られています。

2、脳幹症候群

○ 脳幹と呼ばれる脊髄と脳の間の部分の障害では5番(三叉神経),7番(顔面神経),そして8番(聴神経)の各脳神経と小脳とが同時に侵されます。

○ 外転神経核は橋の比較的前方にあって、顔面神経を後ろに回って同側で脳幹の前に出ます。ですから外転神経の麻痺では、顔面神経の麻痺を伴うことがあるのです。

○ 外転神経の核には、(筋の運動を直接起こす)モーターニューロンと(筋の運動を直接起こす運動ニューロンにつなぐ中継ぎを行う)インターニューロンの両者が含まれています。そのため、外転神経核の障害では外直筋の麻痺だけではなくて同側の注視障害(左右眼が共に左右のいずれかを向くことが出来ないという症状)がみられるのです。

3、くも膜下腔症候群

○ 脳の表面と頭蓋骨の間の脳脊髄液がたまっている部分をくも膜下腔と呼びます。このくも膜下腔が、外転神経が侵される第2の場所です。

○ 脳圧亢進では脳幹が下向きに急激に変移しますから、外転神経の伸展によって、脳橋の出口またはデルロー管と呼ばれる部分で外転神経の損傷がみられることがあります。

○ 偽脳腫瘍とも呼ばれる脳圧の亢進する疾患ではその30%に外転神経麻痺が見られます。

○ また、偽脳腫瘍の他に、くも膜下出血、髄膜炎、(転移性の癌)細胞の浸潤が原因となってこの部分での外転神経麻痺の原因になります。

4、錐体先端症候群

○ 錐体というのは外耳と内耳が入っている側頭骨の部分です。

○ この錐体の炎症などの病的変化により、錐体の先端との接触に対して、この部分の外転神経には感受性があります。

○ この変化には小脳橋角腫瘍(聴神経)や中耳炎に続発する限局性の炎症や錐体骨外の膿瘍などがあります。

5、海綿静脈洞症候群

○ 海綿静脈洞というのは脳の下面にある静脈の集まった洞窟のような構造物です。その静脈の中を多くの神経などが通過して眼窩にむかっています。

○ 内頚動脈海綿静脈洞ろう(CCF)などのこの部分の病変でも外転神経は動眼神経などと共に麻痺することがあります。

6、眼窩症候群

○ 眼窩というのは頭蓋骨の前方にある眼球を含む骨の窪みで、左右に1つずつあって、上眼窩裂と視神経管で頭蓋内に通じています。

○ この上眼窩裂付近に病変があると第3(動眼神経),第5(三叉神経),第6(外転神経)脳神経の麻痺と眼窩徴候である眼瞼下垂、結膜浮腫、結膜充血などを伴う臨床所見が見られます。

○ その主な病因は外傷、炎症、腫瘍などです。

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まとめ:外転神経麻痺は、眼球を動かす神経の麻痺としては最も多いものです。脳幹の中から、眼科までのあらゆる部分の病気で発生します。その原因を見極めて本質的な治療に結び付けましょう。上の分類は発生部位別に分けていて、神経眼科レジデントマニュアルに書かれた分類を参考にしました。回復が4か月を超えて遅ければ、画像と採血の洗い直しが望ましいです。(2019.10.9改定)

Categorised in: 神経眼科