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2019年7月19日

10922:前頭葉関連症状と社会行動障害 セイリアンスとの関連とは

神経眼科医 清澤のコメント: salienceは先日の 眼科医に知っていただきたい向精神薬の副作用のチェックポイント、そしてその対策 渡邊 衡一郎(杏林大学医学部 精神神経科学教室 教授) にて解説された単語です。

統合失調症では「他の周囲の対象にくらべて突出して際立った対象を感ずる」という現象であるセイリアンスが存在するという。また、動機的セイリアンス系の障害は、社会行動障害として分類される諸症状を形成しているという。先日の心療眼科研究会では杏林大精神科山口教授によって、此の現象が解説された。後に、この会の世話人気賀沢先生にセイリアンスを解説した総説を教えていただいたので、良くはわからぬままに、その要点を抜粋してみよう。

─動機的セイリアンス障害─大東祥孝 (高次脳機能研究 32(2): 212 ~ 217,2012)の要旨:

◎前頭葉関連症状を,1)遂行機能制御系の障害と2)動機的セイリアンス系の障害とに区別して捉える。後者が社会行動障害としてカテゴリー化される症状を形成している。前頭葉関連症状のうちの動機的セイリアンス系の障害としては,①脱抑制,②アパシー,③被影響性症状─常同性(固執)症状,および④障害についての気づきの稀薄化をあげ、それぞれについて,セイリアンス障害との関連を説明している。
脳の機能を神経行動学的に,大きく,①遂行制御機能系(executive control system)と,②動機的セイリアンス系 (motivational salient system)の2つに区別するシステムを示す(Selley ら 2007) 此処では、前頭葉関連症状のうちの,とりわけ動機的セイリアンス系の障害として捉えうる「社会行動障害」を中心にその症候をまとめている。

Ⅰ.セイリアンス(salience)
セイリアンスという概念が神経科学に導入されることになったのは,統合失調症のドパミン仮説 の流れのなかで,神経化学的─精神病理学的仮説としてKapurら(2003)によって提起された “Aberrant Salience”仮説が大きな契機となっている。

セイリアンス(際立ち)は、他の周囲の対象にくらべて突出して際立った対象という意味である。これに “motivational”という形容詞が付加されると,報酬に関連した特定の刺激が強く個体の注意を惹き,個体に「目的志向型」の行動を惹起する事態を表現する。

ドパミン系は,環境における新しい報酬に関連し,さらにその報酬とそれらの連関に関する個体(動物)の学習をたかめ,これらの刺激を際立たせることによって,個体に目的志向型の行動をとらせる。

ドパミン・ ニューロンが勝手に発火する結果,異常な新奇性や際立ちが発生し,統合失調症の幻覚や妄想が出現するというのが『“Aberrant Salience”仮説』であり、簡潔に「セイリアンス仮説」とも称される。

セイリアンスという概念を,より一般化して,Selleyらは2007年に① 遂行機能制御系(executive control system)と②動機的際立ち系(motivational salient system)とを区別した。

Ⅱ.解離する二つのネットワーク機能
①遂行機能制御系(executive control system)と いうのは,前頭葉背外側と頭頂連合野の連繋を基盤に,外界との知覚・運動に際して生じる「認知的問題解決」に対応する機能系であって,頭頂連合野が外界からの情報をルーチンの手法で処理することが困難になった際に,前頭葉関連の遂行機能が働き始めることになる。頭頂連合野と強く連繋した認知機能障害を,総体として遂行・制御障害と称する。
②セイリアンス系,動機的際立ち系(motivational salient system)というのは,認知的問題解決系に対し,情動・社会行動系とみなしうるシステムであり,前頭葉内側前部帯状回と,内側底面の眼窩脳─島皮質とから構成され,皮質下・辺縁系と強い結合を有している系である。セイリアンス・システムは,個体が,その場その場でどのように外的情報をうけとめ,いずれが自身にとって重要であるかを読み取って行動化する際に,活性化する。そしてその障害は,前頭葉関連症状としては, 脱抑制,アパシー,被影響性─常同性(固執)症状, 気づきの欠如,として出現する。

Ⅲ.前頭葉関連症状
今日までの知見から,前頭葉関連症状と考えられている症候のなかで,従来,前頭葉症状の主要な三徴候と考えられてきたのは,脱抑制,アパシー,遂行機能障害である。
これらは,前頭葉皮質・ 皮質下症状(前頭葉皮質→線条体→淡蒼球→視床 →前頭葉皮質)であることが確認されており,関連する前頭葉皮質部位は,脱抑制=前頭葉底面眼 窩脳損傷,アパシー=前頭葉内側面損傷,遂行機能障害=前頭葉背外側面損傷であると想定されている。

Ⅳ.前頭葉関連社会行動障害, セイリアンス障害
1. 脱抑制(disinhibition)
脱抑制は,社会的な許容範囲を超えた,逸脱行動としてみとめられる(易怒性,性的逸脱行動,窃盗,ギャンブル,など)。そうした自身の行動に ついて,「してはいけないこと」と自ら述べながら も,これを抑制することができない。前頭葉底面眼窩脳損傷でよくみられ,ギャンブリング課題(Iowa Gambling Task)で通常とは異なる行動パターンを示すことが多い。おそらくは報酬的行為のセイリアンスが高まり,遂行制御系によって抑制しえない状態になっているために,脱抑制行為にはしることになるのではないかと想定される。

2.アパシー(apathy),自発性低下(aspontaneity)
原則として,外界で生じている出来事に「無関心」であり,「うつ」とは異なって,悲哀感を示すということがない。前頭葉内側面─基底核─視床回路との関連が指摘されているが,右半球損傷や多発性脳梗塞などでもしばしばみとめられる病態である。
セイリアンスという視点からみれば,アパシー というのは,患者にとって「際立って関心をひく」対象が乏しくなっている状態とみなすことができるので,この症状も,セイリアンス障害の亜型と捉えることが可能である。

3. 被影響性─常同性(固執)症状(stimulus bound stereotypical behavior)
外的刺激に非自律的に影響されて行動をおこしてしまうことがあり,これを被影響性症状(stimulus bound behavior)と称している。
被影響性の亢進と固執的常同性は同時にみとめられることが稀ではなく,基盤にある発現機序は,いわば負のセイリア ンスともいうべき状態である。

4.障害についての気づきの稀薄化(loss of awareness, reduced awareness)
前頭葉性の社会行動障害への対応をより困難に させている重要な側面が上記1-3の行動障害に対する患者の「気づきの 稀薄化」。再帰性自己意識の障害である。自己自身へと向かう意識が稀薄化していることを強くうかがわれる。前頭葉損傷患者でみられる「気づきの欠如」は,再帰性意識それ自体の稀薄化,もしくは,再帰性意識のセイリアンス障害へのアクセス障害によって生じるのではないかと思われる。

 

◎オブジェクト、人物、ピクセルなど、アイテムの特徴は、隣人と比較して際立っている状態または品質です。 顕著性検出は、生物が利用可能な感覚データの最も適切なサブセットに彼らの限られた知覚的および認知的資源を集中させることを可能にすることによって学習および生存を促進する重要な注意メカニズムであると考えられる。
顕著性は通常、白い点で囲まれた赤い点、留守番電話のちらつきのメッセージインジケータ、またはその他の静かな環境での大きな騒音など、アイテムとその周辺の間のコントラストから発生します。 顕著性検出はしばしば視覚系の文脈で研究されるが、類似のメカニズムが他の感覚系でも機能する。 顕著なものはトレーニングによって影響を受ける可能性があります。たとえば、人間の被験者にとっては、特定の文字がトレーニングによって顕著になることがあります。

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