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2019年5月16日

10727:眼の健康と栄養

学術誌「食と医療」の第9巻の第2特集:「眼疾患と栄養素」の最初の論文が私の「眼の健康と栄養」です。今回発刊されたので、私の担当部分を抄出してみます。詳しくはこの学術誌本体をご覧ください。別刷り希望の方は医院までご請求ください。

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眼の健康と栄養
清澤源弘、清澤眼科医院、東京医科歯科大学眼科臨床教授
小町祐子、清澤眼科医院

【要旨】
多くの眼疾患がビタミンをはじめとする栄養素の不足で発症する。ビタミンAの不足は、欠乏の程度に応じて夜盲症、眼球乾燥症などを起こす。ルテインとゼアキサンチンは黄斑変性の予防に推奨される。ビタミンB1(チアミン)欠乏は角膜や結膜の変化を起こす。ビタミンB2(リボフラビン)の欠乏は眼瞼の落屑性皮膚炎、輪部周辺の血管増生を伴う角膜炎を示し、白内障の誘因ともなる。ビタミンB3(ナイアシン)は緑内障を予防する可能性がある。ビタミンB 6(ピリドキシン)、B 9(葉酸)、B 12(シアノコバラミン)の欠乏は、炎症やAMD発症のリスク増加に関連している。ビタミンCはコラーゲンを形成し、白内障防止に必要である。ビタミンE欠乏は網膜変性や失明につながる可能性がある。長鎖オメガ3脂肪酸の欠乏は、特に小児では視力を低下させる可能性がある。エタンブトールは血中の亜鉛を低下させる抗結核薬だが時に亜鉛欠乏性視神経症状を惹起する。このように、様々な栄養素が目の健康には必要であり、眼の健康に役立つサプリメントとしても投与されている。

<はじめに>
眼疾患の多くが栄養素の不足や加齢に伴う代謝変化に関連して発生することが報告されてきた。殊に、眼疾患と栄養の関連は古くから論じられており、Duke-ElderのSystem of Ophthalmologyにもビタミン欠乏症などの項で詳しく論じられている1)。現代の日本および西欧諸国の食事環境では、栄養不足に直接起因する眼疾患の発生は多くないと思われる。しかし、近年のわが国では高齢者の栄養不足、特に微量栄養素の欠乏が問題視されるようになり、全身的な健康とともに、眼の健康状態への影響も看過はできない。また、ある栄養素の欠乏をきたすような薬剤を用いた治療や、体内の代謝酵素の先天的な欠乏などを持つ個体においては特定の栄養素の欠損症状や過剰症状を呈するケースが存在する。
最近では、サプリメントとして眼の健康増進を目的にした栄養素の補充が盛んに薦められている。そのいくつかはエビデンスに基づいた有効性が証明されているが、その摂取は慎重に行われなければならない。充足しているものを更に追加することが健康に良いかどうか不明であり、また、脂溶性ビタミン類等、体内からの排出が限られた栄養素においては過剰症も起こり得るであろう。本稿では眼の健康に関与することが知られる栄養素、特にビタミンや微量栄養素について、その眼疾患との関連の概要をレビューしてみたい。
眼の健康にとって特に重要な栄養素が存在する。これらの栄養素は視覚機能を維持し、有害な光から眼を保護し、加齢による退行性疾患の発症を抑えるのに役立つ2)。

代表的栄養素と眼疾患の関連
1. ビタミンA 3-5)
〔概要〕ビタミンA(レチノイド)は、光受容体としても知られている網膜視細胞でのロドプシン合成と維持に不可欠である。また、眼および皮膚の粘膜を保持し、抵抗力を強める働きを持つ。したがって十分な量のビタミンAを摂取していないと、欠乏の程度に応じて夜盲症、眼球乾燥症、さらには深刻な症状を呈することもある。ビタミンA欠乏症は、世界的にみれば、失明の最も一般的な原因の1つとなっている。ビタミンAは動物由来の食品のみに含まれ、卵黄や肝油、乳製品などから摂取される。しかし、人体は抗酸化植物化合物であるカロテノイドをビタミンAに変換することが可能であることから、要求量の平均約30%を緑黄色野菜や果物から摂取している。
(図:トマトなど色鮮やかな野菜はビタミンAに転換されるカロテノイドを多く含む)
〔眼疾患との関連〕ビタミンAは視覚機能の維持に大きく関与している。ひとつはレチノイン酸が眼上皮細胞を正常化し、粘膜機能を維持する点である。この機能により角膜の透明性が維持される。また、ビタミンA(レチナール)はオプシンと結合しロドプシンとなる。光感知細胞でのロドプシン機能により、暗所視が可能となる。さらに、ビタミンAは眼球の正常発達にも関与している。したがって、ビタミンA欠乏により様々な視覚機能の低下を招くことになる。ビタミンA欠乏症は現代社会の先進国においては滅多に見られないが、対処しなければ重篤な視覚障害を来す。
ビタミンA欠乏症は、夜盲症、羞明から始まる進行性の眼疾患である。外胚葉構造、特に上皮粘膜に影響をもたらし、やがて眼球乾燥症(xerophthalmia)を発症する。眼球乾燥症は単なるドライアイとは異なり、結膜や角膜の乾燥と、そこから派生した涙小管や瞼板における感染に対する抵抗性の低下を示す。ビトー斑(Bitot spot)と呼ばれる白色の角化した変化が球結膜の露出分に現れ、進行すれば角膜は軟化して穿孔し角膜軟化症で失明にいたる。ロドプシンの前駆物質であるビタミンA欠如による光覚の低下や夜盲は明確な臨床的所見である。他覚的所見として、網膜電図は減弱する。ビタミンA欠乏が色素網膜ジストロフィの原因になるという主張の妥当性は確信を持って確立されているわけではないが、眼球乾燥症に伴った眼底変化が見られたとの報告があり、複数の白い斑点が網膜周辺部に現れる白点状ジストロフィ(albipunctate dystrophy)とに似ていると言われている。これらの変化はビタミンAの適切な投与後には可逆的に回復する。実験的に作られたビタミンA欠乏は、網膜の退行性変化、特に、最終的に光覚を消失させる桿体障害を引き起こすことがわかっており、さらには白内障の発症との関連も議論されている。ビタミンAを多く含む食事療法は、白内障や加齢黄斑変性症(AMD)のリスクの低下と関連している可能性がある、という研究もある。
また、因果関係は証明されていないが、妊婦のビタミンAの著しい欠乏が子供の顔面および眼の異常と関連しているという例も、少数ながら報告されている。ビタミンA不足の食事を与えた実験動物の子には肉眼的な眼球奇形が生るという報告もある。
一方、ビタミンA過剰症は頭蓋内圧の亢進を来し、うっ血乳頭の所見を呈する。母体での過剰は胎児奇形の原因となる。

2.ルテインとゼアキサンチン6,7)
〔概要〕ルテインとゼアキサンチンは黄斑色素として知られているカロテノイド系の酸化防止剤である。 1日の推奨摂取量は設定されていないが、果物や野菜を多く含む食事でこれらの栄養素を十分に供給することができる。ルテインとゼアキサンチンは黄色に見え、網膜中心部の視細胞の層である黄斑に集中している。ルテインおよびゼアキサンチンは天然の日焼け止め剤として機能する。眼を有害な青い光から守る上で中心的な役割を果たすと考えられている。
〔眼疾患との関連〕ルテインとゼアキサンチンは植物によって合成される有益な化合物のグループの一部であり、通常、食品中に一緒に存在する。ほうれん草、ケール、パセリ、ピスタチオ、グリーンピースなどが最も良い摂取源とされている。さらに、卵黄、スイートコーン、赤ブドウなどにも多く含まれている。カロテノイドは脂肪とともに摂取することで吸収がよくなるため、野菜のサラダにアボカドオイルや健康的な油脂を加えるのがよい。卵黄はその高脂肪含有量のために最良の供給源の一つと考えられている。
ある研究によれば、ルテインとゼアキサンチンの網膜におけるレベルは摂取量に比例する。中高年者を対象とした観察研究では、ルテインおよびゼアキサンチンの、一方または双方を1日6 mg摂取すると、その抗酸化作用によりAMDのリスクが有意に低下したことが示されている。また、ルテインとゼアキサンチンの摂取量が最も多い人は、摂取量が最も少ない人と比較してAMDの発症リスクが43%低いことも報告されている。しかし、他のメタアナリシスでは後期段階のAMDに対してのみ防御し、初期段階のものに対しては防御しないと報告しているものもある。
また、ルテインが白内障を予防することも示唆する報告がある。無作為化対照試験で、白内障患者に対するルテインの潜在的な利点として、1週間に3回15mgのルテインを含むサプリメントを摂取している人は、2年間で視力の改善を経験したことが報告されている。
これらの化合物について、1日の推奨摂取量および安全な補助投与量は規定されていない。有害作用のない試験では、1日当たり最大20mgのルテインが6ヶ月間、使用されている。しかし、わずか6 mg程度のルテインとゼアキサンチンでも効果が見られる可能性があり、野菜や果物を豊富な摂取により、この程度の量は自然に摂取することができるため、必ずしもサプリメントのような補足摂取を必要とするものではない。

3.ビタミンB 類
1) ビタミンB1 8)
〔概要〕ビタミンB1(チアミン)は、大豆、イースト、豚肉などで得られ、炭水化物の代謝に必要である。その欠乏は角膜や結膜の変化、球後視神経炎を起こす。また表層性出血性脳症(Wernicke脳症)を起こす。
〔眼疾患との関連〕チアミン(ビタミンB 1)は、適切な細胞機能および食物をエネルギーに変換するのに役割を果たす。したがって、チアミンを多く含む食事は白内障を発症するリスクの低下と関連している。オーストラリアの2,900人を対象とした観察研究では、チアミンを多く含む食事療法によって白内障を発症するリスクが40%減少することが示唆されている。また、この研究は、タンパク質、ビタミンA、ナイアシン、およびリボフラビンが白内障から保護する可能性があることを示している。さらに、チアミンは、糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)の初期段階の治療法としても提案されている。臨床試験では1日3回服用した100 mgのチアミンが尿中のアルブミン量を減少させることがわかった。

2) ビタミンB2 9)
ビタミンB2(リボフラビン)はレバーやうなぎ、納豆、卵に含まれる。抗酸化物質で眼を含む体の酸化ストレスを減らす可能性がある。特に、リボフラビンの白内障予防作用の可能性について、研究がおこなわれている。リボフラビン欠乏は舌炎、口角炎、眼瞼の落屑性皮膚炎、輪部周辺の血管増生を伴う角膜炎を示す。白内障の誘因、視神経炎の原因ともなり、実験動物では小眼球や水頭症などの奇形を作る。

3) ビタミンB3 10,11)
ビタミンB3(ナイアシン)は肉類や魚類、ピーナツなどに含まれる。脂質、糖質、たんぱく質の代謝に不可欠で、抗酸化剤としても作用する。最近の研究では、ナイアシンが緑内障の予防に役割を果たす可能性があることが示唆されている。成人の栄養素消費と緑内障の危険性に関する韓国の観察研究は、ナイアシンの低い食事摂取量との関連性を見出している。さらに、動物実験では、高用量のナイアシンサプリメントが緑内障の予防に効果的であることが示されている。ナイアシン欠乏と緑内障との間の潜在的な関連性についてはさらなる研究が必要であろう。
ナイアシンを多く含む食品を摂取しても悪影響があるという証拠はない。しかし、ナイアシンのサプリメントからの摂取については慎重を要する。ナイアシンは 1日に1.5〜5グラムと大量に摂取すると、視力障害、黄斑損傷、角膜の炎症など、眼に悪影響を及ぼすことがある

4) ビタミンB6、B9、B12 12)
ビタミンB群の眼の健康に与える影響について調査した研究がある。特に、ビタミンB 6(ピリドキシン)、B 9(葉酸)、B 12(シアノコバラミン)の組み合わせは、炎症やAMD発症のリスク増加に関連しているとされるアミノ酸であるホモシステインの濃度を下げることができる。女性を対象とした臨床試験では、ビタミンB 12とビタミンB 6およびB 9を同時に投与すると、AMD発症リスクが34%低下することが示された。しかし、ビタミンBが豊富な食品の摂取量を増やしても同様の効果があるかどうかは不明である。
ピリドキシン欠乏は眼角部に結膜炎を起こす。シアノコバラミン欠乏は悪性貧血の原因となり、タバコ弱視の原因ともなるとされる。

5) ビタミンC 13)
ビタミンC(アスコルビン酸)は新鮮な果実や野菜に含まれ、有害なフリーラジカルから眼を保護する強力な酸化防止剤である。ビタミンCはコラーゲンを形成する。コラーゲンは強膜や硝子体など、眼構造を構成するのに必要なタンパク質である。また、ビタミンCは水晶体の代謝に必要である。加齢と白内障進行で減ずることもあり、白内障の人は抗酸化状態が低い傾向があるとの報告もある。したがって、眼は他の多くの器官以上に大量の酸化防止剤であるビタミンCを必要とする。眼房水中のビタミンC濃度は他の体液中濃度よりも高いことが知られている。房水は毛様体で分泌され、水晶体への栄養補給を担う。ビタミンCが白内障やAMDの進行を防ぐのを助けるかもしれないことを示唆している。房水中のビタミンCレベルはその食事摂取量に比例する。サプリメントを摂取したり、ビタミンCを多く含む食品を摂取したりすることで、その濃度を高めることができる。加齢性眼疾患研究(Age-Related Eye Disease Study;AREDS)に基づいたサプリメントを毎日服用すると、白内障やAMDといった加齢性疾患の症状が進行するリスクが25%減少する可能性があるとの報告がある。また、他の観察研究では、1日のビタミンC摂取量が490 mgを超えると125 mg以下の場合と比較して、白内障を発症するリスクが75%減少したことが示された。
ビタミンCの欠乏では、角膜創傷や潰瘍からの治癒を遅延させる。実験動物ではその欠乏は網膜神経節細胞の核の膨化を起こす。

6) ビタミンE 14,15)
ビタミンE (トコフェロール)は、アーモンド、ヒマワリの種、亜麻仁油のような植物油に含まれている。有害な酸化から脂肪酸を保護する脂溶性抗酸化剤に含まれる栄養素である。多くの眼の疾病状態は酸化ストレスに関連していると考えられている。それは体の酸化防止剤とフリーラジカルの間の不均衡である。ビタミンEは、有害な不安定分子であるフリーラジカルによる損傷から、眼の細胞を含めた様々な細胞を保護するのに役立つ強力な抗酸化剤である。網膜は高濃度の脂肪酸を含んでいるので、適切なビタミンE摂取は眼の健康維持には重要な役割を果たす。
ビタミンE欠乏症は網膜変性や失明につながる可能性がある。ビタミンE代謝障害の患者では網膜色素変性症がみられ、我々もその疾患を報告した。
ビタミンEの補充はAMDのための予防的治療として、前出のAREDSに基づいたサプリメントに使用されている。また、食事における摂取の増量によって白内障リスクを減少させることも可能であると考えられる。
一方、食生活で充足している場合、さらにビタミンEサプリメントを服用することで、特記するような効用が得られるかどうかは不明である。毎日7mgを超えるビタミンEを摂取すると、加齢性白内障のリスクが6%減少したとの報告がある。反対に、無作為化比較試験では、ビタミンEサプリメントが白内障の進行を遅らせたり、予防したりすることはなかったとする報告もある。さらに、ビタミンEを多く含む食事療法が加齢性白内障の予防に役立つかもしれないということを示唆した複数の研究が存在する。
3,640人を対象とした7年間の研究では、AREDSサプリメントで1日に400 IUのビタミンEと他のいくつかの栄養素を摂取すると、AMDの進行リスクが25%減少したとしている。適切なビタミンEを含む食事は、適切な目の健康を維持するために推奨されている。

4. オメガ3脂肪酸16)
オメガ3脂肪酸は多価不飽和脂肪の一種である。魚、亜麻仁、大豆とナッツ、あるいはオリーブオイルなどの食用油にも含まれている。また、魚または微細藻類由来のオメガ3サプリメントで摂取することができる。
長鎖オメガ3脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)は網膜に大量に含まれており、視覚機能を維持するのに役立つ。また、乳児期の脳と眼の発達にも重要な役割を果たす。したがって、DHAの欠乏は、特に小児では視力を低下させる可能性がある。
油性の魚やサプリメントから適切な量の長鎖オメガ-3脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)とDHAを摂取すると、いくつかの眼疾患、特にドライアイのリスクを減らすことができる。オメガ3サプリメントを摂取することがドライアイ疾患のある人で症状を軽減する。ドライアイを持つ人々を対象とした研究では、EPAとDHAのサプリメントを毎日3ヶ月間摂取すると、涙液の分泌が増加することで不快感や時々ぼやける、といったドライアイの症状が著しく軽減された。
また、オメガ-3脂肪酸には抗炎症作用があり、食事に含まれると糖尿病網膜症を予防するのに役立つ。糖尿病の中高年成人を対象とした研究では、1日に500mg以上の長鎖オメガ3脂肪酸を摂取すると、糖尿病網膜症のリスクが低下する可能性があることがわかっている。31件の研究のレビューによると、伝統的な地中海式食事など、油分の高い魚を多く含む食事は糖尿病網膜症を予防する可能性があるとしている。これらの知見はより多くの研究によって裏付けられる必要があるが、それらは脂肪酸が原因であるかもしれないことを意味している。一方、オメガ-3脂肪酸はAMDには有効ではないという論文もある。

5.ガンマ-リノレン酸17,18)
ガンマ-リノレン酸(GLA)は、オメガ6脂肪酸である。ガンマ-リノレン酸の最も豊富な食品は月見草油とスターフラワー油である。現代的な食事では、十分に摂取することが難しい。ガンマ-リノレン酸には抗炎症作用がある。
月見草油を夕方服用すると、ドライアイの症状が軽減される可能性があることが指摘されている。あるランダム化比較試験はドライアイを有する女性に月見草油とガンマ-リノレン酸300mgを投与し、症状が6ヵ月間にわたって改善することを指摘した。

6. 亜鉛19,20)
亜鉛は、酸化防止剤として機能するスーパーオキシドジスムターゼを含む多くの必須酵素の一部となっている。亜鉛の天然食物源には、カキ、肉、カボチャの種、およびピーナッツが含まれる。
眼では網膜と脈絡膜が高レベルの亜鉛を含んでいる。視細胞の細胞膜を調節し、光とロドプシンの関係も調整する。よって、亜鉛欠乏では夜盲を呈することがある。また、抗結核薬のエタンブトールは血中の亜鉛を低下させることで薬効を発揮するが、血中亜鉛の不足は亜鉛欠乏性視神経症状を惹起し、亜鉛の投与がエタンブトール視神経症の回復を促すとされている。
さらに、早期黄斑変性症の高齢者に亜鉛サプリメントを投与し、黄斑変性の悪化が遅延したという報告も多い。

<おわりに>
 眼の健康と栄養の観点から、眼疾患に関わる栄養素として、各種ビタミン、不飽和脂肪酸および微量ミネラルについてレビューした。各栄養素の欠乏や過剰摂取は、特に、白内障やAMDといった加齢性の疾患に大きく関与している。また、抗炎症作用のある栄養素の摂取により糖尿病網膜症などの網膜疾患への影響についても研究が進められている。全身的に影響がみられる栄養素の欠乏や過剰は、眼の健康にも大きな影響を及ぼすものとして、今後も注目されていくものと思われる。なお、以下に示す引用文献は、紙面の都合により代表的なものに限らせていただいたことをお断りする。

<引用文献>
1) Duke-Elder: System of Ophthalmology. HENRY KIMPTON. LONDON. 1976. Vol.ⅩⅤ.168-171.
2) 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会報告書https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf
3) 厚生労働省:「統合医療」情報発信サイト. 海外の情報. ビタミンA. http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/13.html
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