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2019年2月22日

10488:やっばりおかしい副作用報告制度(若倉雅登)記事紹介

清澤のコメント: 雑誌「眼科ケア」収載の随筆:若倉先生の薬剤性眼瞼痙攣を発症させる薬剤やそれを販売する企業、そして医薬品医療機器総合機構似対する告発文です。日常多くの原発性や薬剤性の眼瞼痙攣患者を見ていると、こちらも疲れて来て、この様な感情は鈍磨してきます。その怒りを持ち続けられる若倉先生の姿勢にはいつも感服しています。文中に出て来る「新しい眼科」誌の「全身薬による眼瞼や眼球運動の障害」も早速読みたいお話です。

  ――引用開始――
眼科ケアに連載の「私の提言、苦言、放言 井上眼科病院名誉院長 若倉雅登
第153回 やっばりおかしい副作用報告制度」:からの記事引用です。

引用開始:
「あたらしい眼科』35巻10号に「全身薬による眼瞼や眼球運動の障害」を書いた。すでに報告されている研究論文を引用しながらまとめたものである。ただ、その中で、すでに2018年に発表している、開瞼困難ヒ差明や眼痛で生活の質を著しく下げる疾患である眼瞼痙攣の発症前に服薬していた被疑薬について、上位の物を再掲しただけでなく、しばしば質問されるそれより下位の物も記述した。そこに含まれているのはほとんどがベンゾジアゼピン系か薬理学的類似薬だが、若干、その他の向精神薬も入っている。すると、英文での発表時は音沙汰がなかった先発医薬品を販売している製薬会社から面会の依頼が来た。論文には商品名でなく一般名で発表しているから、先発品を持つ会社からの問い合わせはうなずけるところだ。彼らは論文で紹介されたのは具体的にどういう症例なのか知りたいというのである。もし関連すれば副作用報告をPMDA (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に出してほしいということらしい。ただ、論文で挙げた薬剤が自社の物でなければ、面会は不要たそうだ。ベンゾジアゼピン系を含む睡眠導入薬、抗不安薬の大半は今やジェネリック医薬品の時代になっている。
2004年、私たちの研究グループはデパスC (エチゾラム)やベンゾジアゼピン系薬物が眼瞼痙攣発症の誘因になり得ることを国際誌に報告した。当時、デパスを開発販売していた三菱ウェルファーマの反応は迅速だった。やがて同業の添付文書に「眼瞼痙攣」の文字を入れ、注意事項として、「本剤の投与中は観察を十分に行い、瞬目過多、羞明感、眼乾燥感等の眼症状が認められた場合には迫切に投与すること」という文章を加えた。私が説明したことを十分に取り上げ、なかなか良心的な対応だと思った。そして、ほかのベンゾジアゼピン系薬物もこれに倣うだろうと高をくくった。しかし、後で考えるとこの判断は甘かった。まず製薬会社の聞き取り調査の中で、この副作用は重大かどうかを問われた。そのときの回答が失敗であった。
重大というのは生死に関わるようなことだと勝手に判断し、「重大とまでは言えない」と答えた。しかし、死亡はしないまでも、開瞼が著しく困難で、日常の眼球使用が容易にできない、事実上失明に近い重篤例もあることは確かだ。そこまでではなくとも、通常の労務ができなくなる例は多数あり、眼瞼痙攣は患者側に立てば、明らかに重大な副作用であった。添付文書に記載するということだったので、ほかの類似薬もこれに従って副作用として記載すれば、発症初期のうちに見つかるはずだから、重篤にはならないと甘く見通し
たのだ。
自身の診療でも、使用薬物の副作用について、添付文書を隅々まで読んで把握しているわけではないことも事実であり、そもそも眼瞼痙攣を確実に診断できる医師は少なく、まして当該薬を処方している医師は眼瞼痙攣を知らないか、目がぴくぴくする軽い病気と思っているだろうことまで斟酌できなかったのだ。
書式に従って副作用報告(症例報告)がPMDAに出され、妥当と判断されると当該薬の添付文書に記すよう指導を受けるらしい。この方法では、エチゾラムやベンゾジアゼピン系薬物による限瞼痙攣のように、とても一例一例報告を出すような数ではない大規模副
作用は、むしろ見過ごされてしまう。新薬が発売されるときには副作用が厳密に調べられるが、しかし、それは長くて服用開始から一年以内だ。薬剤性眼瞼痙攣では、服用してから早期に出現する例もあるにはあるが、普通は数力月から数年連用した例に出現する。神経系の薬物は依存性だけでなく、連用、蓄積、晩発といった事態も考慮すべきだ。売りに売った後に特許が切れてジェネリックになると、「うちの薬剤でなければ、面会は不要」という姿勢。先発医薬品の販売会社がこんな無責任でいいのだろうか。それを容赦している
PMDAの姿勢もおかしくないか。

Categorised in: 神経眼科