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2019年2月1日

10436:抗LRP4抗体:筋無力症を起こす第3の抗体

清澤のコメント:当医院の神経内科医との話や医科歯科大神経眼科外来のケースカンファランスで、第3の筋無力症を起こす抗体としての抗LRP4抗体が話題になった。そこで今日はその抗LRP4抗体についておさらいをしてみたい。

参考ページ:https://www.jbpo.or.jp/med/jb_square/mg/milestone/mi08-2/01.php

抗LRP4抗体の発見について

抗LRP4抗体発見の経緯:

東京大学 医科学研究所所属の樋口理らが、2011年にLRP4の細胞外領域に対する自己抗体が一部のMG患者血清中に存在することを世界で初めて報告した。

 彼らは抗AChR抗体陰性MG患者300例[double seronegative MG272例]を対象に抗LRP4抗体の有無を調べ、その結果、9例の抗LRP4抗体陽性患者を同定し、第3番目の病原性自己抗体とした。

抗LRP4抗体陽性例のMGに占める割合:

 樋口らの報告では我が国におけるLRP4抗体陽性MGの頻度は、double seronegative MGの2.2であり、既報の抗AChR抗体や抗MuSK抗体と比べ極めて低い割合といえる。一方、諸外国の報告ではばらつきがみられるが、double seronegative MGの2.2~50%を占めると推測される。

抗LRP4抗体の役割:

― 抗MuSK抗体との機能の違い:

2006年にWeatherbeeらは、LRP4はLDL受容体ファミリーの一群に属する1回膜貫通型蛋白質で、その大部分を細胞外領域が占めていることを報告た。2008年、LRP4は「Agrin受容体である」との報告がなされた。

① LRP4はAgrin、MuSKいずれとも直接結合する

② Agrin刺激後の筋管細胞でのMuSKのリン酸化酵素活性上昇にLRP4が不可欠

③ AgrinとLRP4の相互作用の阻害により神経筋伝達機能が低下

抗LRP4抗体はAgrinが神経筋接合部のシナプス後膜にて誘導するAChR凝集を阻害

抗LRP4抗体はAgrin-LRP4-MuSKシグナルの機能的阻害を行う

LRP4は膜貫通型蛋白質で、筋膜上に位置し、Agrin、MuSKと複合体をなしている。現在、Agrin-LRP4-MuSKシグナル仮説のもと、神経筋接合部のAChRが集中的に局在し、シナプス機能を果たしていると考えられている。

抗AChR抗体、抗MuSK抗体との機能の違い:

AChR、MuSK、LRP4はいずれも神経筋接合部形成に必須である。抗体の構成成分であるIgGサブクラスをみると、抗LRP4抗体の大部分は抗AChR抗体と同じIgG1であり、IgG4である抗MuSK抗体とは異なる。

LRP4はAgrin受容体であり、AgrinによるMuSKの活性化にLRP4が不可欠であることが証明されており、抗MuSK抗体に似た、神経筋伝達機能を保持するためのシグナルの機能的阻害による機序も想定される。抗AChR抗体、抗MuSK抗体と同様に抗LRP4抗体は病原性抗体であると考えられている。

Categorised in: 神経眼科