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2018年12月2日

10309:人はなぜ眠くなるのか? 鍵は脳内タンパク質の「リン酸化」にあり:記事紹介

眼科医清澤のコメント:Wired日本語版に紹介されたそれなりに理解しやすい科学記事です。脳内のSNIPPs(Sleep-Need-Index-Phosphoproteins)のリン酸化が重要な鍵であるとしていました。このブログでは1ページ程度に要点を抄出してみます。https://wired.jp/2018/11/27/why-you-get-sleepy/ 願わくは上記記事本文をご覧ください。

 ――記事抄出――

2018.11.27 TUE 13:30

人はなぜ眠くなるのか? 鍵は脳内タンパク質の「リン酸化」にあり

遺伝子変異のため睡眠を多く必要とするマウスを分析したところ、「リン酸化」と呼ばれる変異によって一部の脳内タンパク質の機能が低下していることが、筑波大学などの研究チームによって明らかになった。

◎筑波大学の研究者チームが2年前、起きていることのできないマウスを発見した。(☚これがnatureに出たキー論文)このマウスは「Sik3」という遺伝子に異常があるために、正常なマウスより3割も多く眠るようになっていた。起きたときは元気になっているが、正常なマウスより何時間も早く眠くなる。睡眠をとても必要としているようなのだ。

別の研究チームは、眠らせない状態に置いた(断眠させた)マウスと、Sik3遺伝子に変異をもつマウス(Sleepy変異マウス)の脳内の化学成分を調べた。その結果、この2種のマウスは、対照群である睡眠を十分にとったマウスと比べて、80種類の脳内タンパク質で状態の変化を確認できた。(☚清澤注:これで元のレターが開けます。)

◎鍵を握る「リン酸化」の現象

眠っているときに脳のニューロン(神経細胞)同士の接続が変化する。体は眠らせる物質や、逆に起こす物質を生産している。睡眠は学習を助けるし、長く寝ていないと死んでしまうが、1日のうち眠っていて活動できない時間は、大きな割合だ。

生化学的アプローチによってリン酸基の付着という「リン酸化」が80種類(それ以上あるかもしれない)のタンパク質で見られた。一般的にリン酸化は、タンパク質の活動をゼロにするか、低下させる。今回のケースも、80種類のタンパク質の機能をある程度低下させたと考えられる。

マウスの実験で見えてきたこと

リン酸基にくっつく酵素をコードするSik3遺伝子の変異によって、Sleepy変異マウスはその酵素が活発になりすぎている。そのことが、正常なマウスより多くのリン酸基がタンパク質に付着する原因かもしれない。

睡眠について研究する劉清華(リュウ・チンファ)たちは、彼らがSNIPPsと名づけたシナプスに関係するタンパク質が、睡眠と覚醒のサイクルに合わせてリン酸化の程度が上下することを突き止めた。SNIPPsのリン酸化の状態が、睡眠によって神経系のプロセスが回復することに関係しているようだ。

◎シナプスと睡眠の関連性

Sleepy変異マウスと断眠マウスは、正常なマウスと比べて80のタンパク質でリン酸化が進んでいた。研究者チームはその80のタンパク質を「SNIPPs(Sleep-Need-Index-Phosphoproteins;睡眠要求指標リン酸化タンパク質)」と名づけた。その後の実験で、マウスの起きている時間が長ければ長いほど、SNIPPsがリン酸化される割合が高くなることがわかった。睡眠について科学界でより広く議論されている、シナプスと睡眠の結びつきにも関わっていそうだ。

◎「シナプス恒常性仮説」と呼ばれる理論は、次の通り。

起きているときに学習と新しい記憶を通してシナプスが形成され、神経回路の結合が進む。そして、寝ているときに、それらの結合の一部は解除されたり、弱くされたりして、重要な記憶が強固にされる。

複数の研究により、覚醒時にシナプスが活発に活動できるように、その準備を睡眠時にしていることがわかっている。新しい論文には「睡眠の必要性とシナプスの活動とが関係していることを示す強い証拠がある」とかいてある。

(グラフ)SNIPPsのリン酸化の程度と時間(左下)起きているとき:SNIPPsには多くのリン酸基が付いていく。現在行われている学習と記憶形成に関わるシナプスの力は増す。(下右)眠っているとき:SNIPPsに付いていたリン酸基は離れる。シナプスの力は弱まり、そのことが脳が重要な記憶を強化し、新たな学習のための準備をすることに役立つ。

◎覚醒中にリン酸化が進む理由

シナプスでは、川上のニューロンは泡のような小胞に神経伝達物質をたくさん抱えている。その神経伝達物質は遠くからの信号を待っていて、信号が来ると急いでニューロンの細胞膜に行き、シナプス間隙に中身を放出する。そのメッセージを間隙の反対側にいるニューロンが受け取る。シナプシン1は小胞の表面に付いているが、リン酸化が進むと細胞膜のほうへ移動する。「おそらくこの変化によって、ニューロンに行動の準備をしろと言っているのだろう」と、トーマス・スキャメルはいう。

ひとつの解釈は、寝ないでいることで、シナプスの近くにある神経伝達物質が減少するというものだ。その場合、リン酸化は新たな供給を調整し、それまで脳がどのように活動していたかを示す履歴になるのかもしれない。

◎分子レヴェルでの解析で見えたこと

「筑波大の研究者がこの研究で主張するのは、信号のシャワーを発するシナプスに関わる一定のタンパク質の変化が、眠気の高まりに関連しているということだ」とリプトンは言う。

「Homer-1というタンパク質は、睡眠不足のときのシナプスにとって非常に重要だと考えられているが、SNIPPsのリストには入っていない。もしHomer-1がリン酸化から合図を受け取らないのならば、それは眠気を扱う生化学システムが複数存在する可能性も示唆している。

劉は:「80個のタンパク質のなかでも重要度に違いがあるだろう。これからの研究で、それらを選別する必要がある」

元記事は、Simons Foundationが発行するサイエンス雑誌『Quanta Magazine』の記事。QuantaMagazine.org

Categorised in: 神経眼科