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2018年10月4日

10161:眼が両脇にある動物はどのように見えているのですか?:自著記事紹介

眼が両脇にある動物はどのように見えているのですか?

神経眼科医清澤のコメント:月刊誌の臨床神経科学(clinical neuroscience)は中外医学社が出版している神経科学に関連した臨床的な話題を取り上げる格調の高い雑誌です。その10月号の本当に末尾に私の依頼原稿が掲載されました。作図や編集等を小町裕子さんが大いに手伝ってくださいました。御笑覧ください。
それなりに調べなおして記事にしてあります。

神経科学の素朴な疑問

QUEST10N

眼が両脇にある動物はどのように見えているのですか?

ANSWER

我々ヒトは両眼視をするために眼が顔の前面に2つ並んでいる。動物では食べるものによって草食獣と肉食獣に分けられ、それぞれ眼の位置が異なることに気付く。まず、ライオンやネコなどの肉食獣ではヒト同様に左右眼が比較的前面についていて、 両眼視できる範囲が広い。黄斑領域も左右眼で重複視している。一方、ウサギやウマなどの草食獣では左右の眼が体の側方についていて左右眼の重なる部分が少ないことが指摘されている(1,2)。

肉食獣では獲物を 得るために獲物までの距離を正確に把握することが必要であり、両眼の重なつた視野により両眼視差を検出して立体視による深視覚を得ている。捕食される側の草食獣では、眼が側方にあることで後方の見えない範囲が狭くなり広い範囲を見渡すことができるため、自分を捕食する恐れのある敵を早く発見でき、その敵から早<逃げること を容易にしている、と説かれる。ちなみに草食獣のウサギでは眼球が少し上側方に突出した構造をしている。その結果、両眼視 領域は前方と後方で各々約10°の非常に狭い範囲でしかなく周辺の大部分は単眼でしか見ていないが、周囲の360° を同時に見ることが可能で “ウサギには見えない死角 はない”とされる (図1)。ウマでも両眼視できる範囲は狭く前方65°程度の範囲であるが、単眼でのみ見える範囲は145°もあり、このため後方の死角は数度程度しかない。競走馬の視野後方に目隠しをして、前方に注意を集中させようとするのはこのためである。これに対してネコやヒトでは両眼視領域が120°程度であり、単眼のみで しか見えない領域はネコでは80°、ヒトでは40°である (図1) ここで注目されるのが鳥類である(3)、フクロウの例外を除いて、鳥類の両眼視は確実性と相対的な深さの認識を知覚させる高次機能をほとんど持たないと考えられている。むしろ、両眼視は、移動方向に見える視野を 有する必要性の結果である。なぜなら、各眼は両眼視を生じさせる反対側の視野からの投影を持たなくてはならないからである。 この反対側からの投影は、くちばしを取り巻き左右対称的に広がる視断を得るために必要なものである。これは、雛への給餌 または毛繕いなどにあたって対象に接触するための移動方向と時間を特定する。キツツキなど、そのような制御を必要としない鳥では両眼視野の幅は非常に小さく、鳥の両眼視は運動の制御において重要な役割を果たしてはいないことを示唆している。大多数の鳥類では、両眼視機能は両眼が一緒になって行うことができることにあるのではなくて、それぞれの眼が独立して働いているように見える。フクロウの幅広い両眼視野は、拡大した目と拡大した外耳との間 の相互作用の産物であるのかもしれない。

左右の視野の交叉は視神経交叉の程度によって決定されている。原因は不明だが、全身に色素が欠損しているatbino(白児症) 個体では、本来多くの交叉線維を持つラットやヒトなどにおいても、視神経交叉線維の割合が少ないことが知られている(4)。 ヒトの大脳第一次視覚領ではその前方の周辺領域が単眼視野相当領域とされている。その領域に限局した片側の脳梗塞などがあれば、視野欠損は同名半盲にはならず、反対眼片眼の耳側周辺の欠損になるが、患者が それを特に自覚できることは少ない。Albino患者の片眼を視覚刺激すると、正常のコントロールとは違って増加した視神経交叉線維の働きで対側の視覚領が有意に活動を高めるのを見ることができる(5)

文献

  1. Nityananda V, Read JCA. Stereopsis ln animats: evotulon, funcion and mechanisms, J Exp Biol. 2017:220:2502-12
  2. 魚里博 動物の視野 根木昭、田野保雄、大橋裕―、他、編。 眼のサイエンス 視覚の不思議 文光堂2010 p238-9.
  3.  Martin GR。What is binocular vision for? A brids’ eye view、J Vis 2009 :14: 1-19.
  4.  Jeffery G. Architecture of the optic chiasm and the mechanisms that sculpt its development. Physlol Rev 2001:81 :1393-414
  5. Nakagawa Y, Kiyosawa M. Tamai M, et al. Postron emission tomography and 18F― fluorodeoxyglucose for the detect on of visual pathway abnormalties in albinism Am J Ophthalmo1 1993 1116:112-3

Categorised in: 神経眼科