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2018年9月13日

第10116回 肥厚性硬膜炎の眼症状と治療

肥厚性硬膜炎の眼症状と治療idiopathic hypertrophic pachimeningitis 再訪 肥厚性硬膜炎という診断名は最近眼科の外来でも目にすることのあるものです。この疾患は、脳、脊髄硬膜の部分的または瀰漫性の肥厚により、硬膜の肥厚部位に応じて頭痛、うっ血乳頭、脳神経麻痺、小脳失調、対麻痺などの神経症状を呈するものです。診断にはMRIが非常に有用であり、肥厚硬膜を認めることで診断可能となる場合が多いとされます。再発寛解を繰り返す場合があり、その経過を年単位で長期的に観察する必要があります。 

1(図出典) しかし、髄膜炎の説明はあっても日本語での特発性肥厚性硬膜炎の説明、ことに眼の症状に関係したものは見つかりません。日本語および英語のページを探してみますと、感染性のもののほかに全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematosus、SLE)などではこの病気が現れることが書いてあります。 

この疾患は原因がわからないから特発性なのですが、組織検査をしてみると梅毒や結核などが見つかることもあるようです。通常この診断名は積極的に生検をして診断するというよりも、除外診断を進めて行き、MRIなどの画像診断で脳硬膜の肥厚が見つかった場合に、付けられる病名のようです。 

サジタル(http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0004-282X2003000100021&lng=en&nrm=iso)NEUROLOGY (2004;62:686-694)のニュースと総説という欄にM.J. Kupersmith, MDほかがIdiopathic hypertrophic pachymeningitis(特発性肥厚性硬膜炎)という論文を発表しています。これを通読してみると、この疾患の概要がよくわかります。

特発性肥厚性硬膜炎

背景: 肥厚性硬膜炎は局所的に脳硬膜の瀰漫性肥厚を示す珍しい病気であり、リウマチ性関節炎、梅毒、ヴェゲナー肉芽腫症、結核、および癌にも関連していることがある。特発性肥厚性髄膜炎のMRI所見と臨床結果および治療についての説明は、多くはありません。

研究の目的: 特発性肥厚性髄膜炎(IHP)患者の臨床と検査の評価、病気の経過、そして治療を調査して、臨床経過とMRIの結果を関連させて、特発性肥厚性髄膜炎IHPに関する諸報告を振り返る。 

方法:12人の患者での回顧的症例検討。年齢は39~88歳で平均年齢は55歳。神経画像検査と髄膜または眼窩の生検その両方またはいずれかで特発性肥厚性硬膜炎と診断できた症例。臨床的な特徴、検査結果、エンハンスしたMRI、そして臨床的な結果を症例毎に記録。 経過観察期間は3カ月から16年で、その平均は3.5年。 

結果: 初診時の主な臨床症状は、頭痛(11例)、視力低下(7例)、複視(4例)、乳頭浮腫(2例)、他の脳神経症状(3例)、運動失調(2例)と、痙攣(1例)。初診時のMRIでは、硬膜の異常なMRIでの増強造影効果の有る場所は臨床所見と関連していた、そして、蝶形骨大翼はすべての患者で侵されていた。赤血球沈降速度は5例で亢進。 脳脊髄液の蛋白は6例で増加し、リンパ球増加は4例にあった。脳硬膜生検5例と眼窩の軟部組織の生検1例では、小さな成熟したリンパ球、形質細胞、類上皮組織細胞の浸潤を示した。しかし、新生物、血管炎、感染性病原体は見られなかった。 

脳脊髄液も採取した組織にも菌はいなかった。ステロイド治療で視力が8例中7例では改善し、頭痛は11例中10例で制御できた。5例ではその他の神経症状に部分的な改善があった。6例ではステロイドの離脱中に再発があり、 一例は進行性の経過で死亡した。 4例にはメトトレキセートやアザチオプリンの抗癌剤がステロイドの減量の目的で用いられた。11例で行われた経過観察MRIでの変化は80%が臨床症状と相関していた(p = 0.01)。 

結論: 特発性肥厚性硬膜炎(IHP)はMRI画像で疑い、ついで生検によって病理学的に診断を確定することができる。未処置だと、臨床経過には通常、厳しい頭痛と進行性の神経学的症状の増悪、そして視力の喪失がおきる。 最初は、ステロイドによく反応するが、臨床症状はステロイドの減量でしばしば再発する。その場合には、時には免疫抑制剤の添加を必要とする。

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