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2018年8月24日

10081:横静脈洞狭窄症の一例:(横静脈洞血栓症)

横静脈洞狭窄症の一例:(横静脈洞血栓症)

横静脈洞狭窄症の一例を2018年神経眼科学会に演題提出するとの連絡を戴いた。 この症例報告は、我々が経験した脳静脈洞血栓症を扱った症例の報告である。ステント留置に当たっては抗凝固療法も並施されたであろう。演者は石井楓子他であり、指導者は神経眼科外来主任の江本博文。私も共同演者に加えていただいた。その所属は東京医科歯科大学眼科と血管治療科。抄録は以下の通り。

 

【症例】37歳、女性。

【主訴】頭痛、両眼複視。

【現病歴】X4月から霧視の自覚あり、同5月初旬から頭痛が出現した。同8日に近医眼科、同11日に近医脳外科を受診したが、特に異常を指摘されなかった。同22日、当科受診。

【初診時所見】(視力・眼圧・前眼部・中間透光体):特に異常なし。(眼底):両眼うっ血乳頭。(視野検査):両眼マリオット盲点の拡大。(眼球運動):両眼軽度の外転制限。発熱はなく、頭痛は臥位で増悪し、起坐位で改善した。臥位ではwhoosing soundの自覚があった。身長151cm、体重50kgBMI: 21.9。内服薬は、痛み止めのロキソニンのみであった。腰椎穿刺では初圧35cmH2Oで、髄液に異常は認めなかった。

【経過】MRI/MRVで脳静脈洞血栓症は否定的とされ、特発性頭蓋内圧亢進症としてダイアモックスを投与開始した。その後、頭痛、複視の症状はやや軽減したが持続し、うっ血乳頭はやや増悪した。ダイアモックスを増量したが、依然として旺盛なうっ血乳頭を認めたため、外科的治療を検討した。同615日、脳血管撮影で左横静脈洞閉塞、右横静脈洞狭窄を認め、右横静脈洞狭窄に対しステント留置術を施行した。現在、うっ血乳頭は消失し改善し、再狭窄も認めていない。
【考察】脳静脈洞狭窄症は初回のMRVで診断できない症例もある。薬物治療が無効な場合は、他疾患を除外した上で脳血管撮影や狭窄部の圧格差測定などを行い、interventionを検討する必要がある。

演者らによると:

○脳静脈洞狭窄症は横静脈洞に好発し、CT-Angiographyでの報告では、一般人の33%に片側狭窄、5%に両側狭窄を認めており、頻度が高い。

○このように狭窄があっても、脳圧亢進をきたさない症例も多いが、狭窄部での圧格差が810mmHg以上あると、脳圧亢進をきたしやすいと報告されている。

○原因として、くも膜顆粒の肥大、脳圧亢進による静脈洞壁の線維化などが考えられている。

10%が失明に至る特発性頭蓋内圧亢進症は、10万人に12人の割合でみられ、この中に脳静脈洞狭窄症に起因する症例が含まれている。

○従って特発性頭蓋内圧亢進症では、造影MRVなどで、脳静脈洞血栓症・狭窄症の検索が必要であるが、脳静脈洞狭窄症で脳圧が亢進している場合でも、初回のMRVで狭窄を指摘できない症例もある。

○初期治療は、acetazolamide投与と、体重減量(510%)であるが、20%ほどに見られる治療抵抗性の症例では失明予防のためinterventionが必要となる。

○薬物治療抵抗性の症例に対して、近年ではステント留置術が行われ、成績も比較的良い。平均22.3か月の観察期間での改善率は、頭痛(88%)、うっ血乳頭(97%)、視覚障害(87%)、拍動耳鳴(93%)である。

○合併症は、ステント内血栓症、ステント再狭窄、硬膜下血腫、くも膜下出血などで、開頭術で対応可能である。

○ステント留置術の10%ほどの症例で、ステント再留置術や、V-Pシャント留置術の追加が必要である。

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◎さらに、脳静脈・静脈洞閉塞症について一般向けの記載を探して見ると:(https://yomidr.yomiuri.co.jp/iryo-taizen/archive-taizen/OYTED576/脳から血液が流れ出る静脈は、太い静脈洞となって脳の外に出る。この静脈洞や、脳の静脈が血栓や炎症などでふさがると脳静脈・静脈洞閉塞症になる。

【原因】 副鼻腔、扁桃、歯根部、中耳などの炎症によって起こる事がある。そのほかに妊娠後期から産褥期、経口避妊薬服用時、ベーチェット病の人、抗カルジオリピン抗体陽性の人など。

【発症】 頭痛、意識障害などの頭蓋内圧亢進による症状と、血流障害による脳の局所神経症状を合併。

【治療方法】 急性期にはヘパリンの投与が有効とされる。脳浮腫に対してはグリセロール(抗脳浮腫薬)を使う。けいれん治療の目的には抗けいれん薬を使う。

 

◎更に、日本脳卒中学会(http://www.jsts.gr.jp/guideline/076_077.pdf)のページによれば、この疾患に対するエビデンスとしては次のことがまとめられている。その様な症例の治療に当たっては、参考になるだろう。

特殊な病態による脳梗塞の治療 脳静脈・静脈洞閉塞症:

推奨 1. 血栓症による脳静脈閉塞症で脳梗塞を生じた場合では積極的な抗凝固療法[活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)値が約2倍程度になるようヘパリン量を調節し、約2週間のヘパリン持続静注後、経口投与に切り替える]が推奨される(グレードB)。

推奨2. 脳静脈閉塞症急性期に出血性梗塞をきたしても、発症数日以内に明らかな出血の拡大傾向がなければ、抗凝固療法を考慮して良い。しかしその投与は慎重を要する(グレードC1

Categorised in: 神経眼科