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2017年7月23日

9047:斜視の人は、ものが二つに見えるのか?(ヨミドクター:若倉雅登)記事紹介です

無題2017年7月20日 コラム

まず神経眼科医清澤のコメント:
今週も若倉先輩の指摘は健在。この記事で複視の全体像を理解いただけたでしょうか?
『斜視の定義は「外見上、左右の目の位置がずれている」ではなく、「両眼で対象物を一つにして見ること(両眼視)ができない状態」』とのこと。これは重要な指摘です。
ご本人または子供さんが斜視か?という事でしたらご相談ください。
また、後天性のものとして、明らかな6つの外眼筋のうちのいずれかのマヒである眼筋麻痺や、動眼神経+滑車神経+外転神経を合わせた眼球運動神経のマヒのほかに、ここで述べられている輻輳痙攣や開散麻痺といった病態の患者さんも、神経眼科外来ではしばしば見かけます。
症例ごとに、その原因を考えて、適切な治療をすることになります。
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斜視の人は、ものが二つに見えるのか?
「斜視の人は、両目で見ると、ものが二つに見える(複視がある)のですか?」という質問を時々いただきます。

斜視は、左右の目が別々の方向を向いています。つまり、「左右の目から別々の像が入ってくるから、一つのものが二つに見える(複視)のです」といえば、わかりやすいですね。確かに、そういう場合もありますが、そう簡単ではありません。

小さいときから左右の目が別々の向きにある斜視の人に、必ずしも複視が出現するわけではありません。

そもそも、斜視の定義は「外見上、左右の目の位置がずれている」ではなく、「両眼で対象物を一つにして見ること(両眼視)ができない状態」として定義します。だから、外見上は目がずれているように見えても斜視ではなかったり、両目が正しい位置にあるように見えても、医学上は斜視だったりすることがあります。

両眼視機能とは、対象物を左右の目で同時に見ることができて、それを一つのものとして認識でき、かつ左右それぞれの目と対象物との角度のわずかなズレ(専門用語で視差)を脳が計算して立体感、奥行き感を計算できる機能のことです。この機能は、生後1歳未満に急速に発達し、おおむね10歳以降にはもはや育たないとされる重要なものです。この両眼視機能がうまく発達しなかった場合、医学では、斜視という病気として扱うのです。

そもそも複視は、両眼視がある程度以上機能していなければ生じません。したがって、乳幼児期からの明らかな斜視は、事実上片眼で見ているため、複視にならないのです。

ところが、後天的に何らかの原因で急に斜視になると、複視が出るので大騒ぎになります。

複視の原因には、眼球運動を行わせる脳神経のまひ(原因は脳の病気などいろいろあります)や、目を動かす筋肉への神経伝達がうまくいかない場合や、眼球の周囲の病変のために眼球の動きが制限された時などと様々です。

ものを一つにして見る両眼視機能そのものが、うまく働かなくなる病気もあります。この機能は主として高次脳の仕事ですので、いろいろな大脳や脳幹疾患に伴ったり、画像で明確な異常がなくても神経回路の情報伝達に不調を来したりしたときに出現することもあります。

後者は、神経薬物や、頭部や 頸(けい) 部の打撲などの外傷で生ずることもありますが、原因がよくわからない場合も少なくありません。

輻湊(ふくそう) けいれん、あるいは 近見(きんけん) けいれんといって、不明な原因で突然起こる内斜視(両目が内側に寄って、ものが二つに見えてしまう)症例に時々出会います。画像診断でも原因はつかめず、「心因性」などと軽視されがちですが、実は高次脳の機能異常です。

発達途上の学童に多く見られますが、成人にもあります。原因が特定できなくても、手術などを含め、しっかり両眼視機能を保つような対応が必要であります。専門性の高い事項なので、眼科の中でも神経眼科、小児眼科領域に強い医師や施設を探す必要があります。(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

清澤が補追するこの記事関連の主なキーワード:

斜視斜視(しゃし)とは、片方の目は視線が正しく目標とする方向に向いているが、もう片方の目が内側や外側、あるいは上や下に向いている状態のことをいう。

複視: 物が、二重に(二つに)見えることを複視という。複視の原因はさまざまあるが、片眼ですでに二重に見える単眼性複視と両眼を開いた時だけに2重なのを感ずる両眼性複視を分ける。この記事では両眼性複視のことを論じた。

輻輳痙攣 輻輳痙攣というのは、両眼の視線の輻輳が本人の意図にかかわらず急に強く起こってしまうもの。

眼筋無力症
:神経筋接合部の不調子があって、筋の随意的収縮がきちんとできない疾患を筋無力症と呼び、その中で、眼瞼下垂や複視などの眼症状が主のものを眼筋型の重症筋無力症(眼筋型重症筋無力症、オッサーマン1型)と呼ぶ。


Categorised in: 神経眼科