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2016年3月5日

7543: 知っておきたい眼腫瘍診療

87626知っておきたい眼腫瘍診療 ≪眼科臨床エキスパート≫

シリーズ編集:吉村 長久/後藤 浩/谷原 秀信
編集:大島 浩一/後藤 浩

書 評

一般眼科医にこそ持ってほしい眼腫瘍の知識
書評者:清澤 源弘(清澤眼科医院理事長)

 序文には,「眼腫瘍は数も少なくまた治療に当たっては専門的な知識が必要であるがゆえに,大学でさえも眼腫瘍を扱わない施設が増えている。しかし,第一線の眼科医はこの病変は腫瘍なのではないか?と考えて,それを適切な施設に送ることが必要である。そのためには,眼腫瘍に対する広範な知識を必要とする。だからこそ,毎日眼腫瘍を扱うわけではない一般眼科医にも眼腫瘍の知識を持っていてほしい」という内容のことが書かれています。

 私の場合,大学に勤務していた頃までは眼腫瘍もそれなりに最終的な主治医として診ていましたが,開業してからは,その疾患が眼腫瘍であると思えば,専門の施設に紹介するようにしています。それでも,神経眼科学を専門にしていますから,年に3,4例は眼瞼の悪性腫瘍や眼窩腫瘍が紛れ込んできます。編者の東京医科大学教授の後藤浩先生には,そんな患者さんの治療をお願いしたりもします。

 本文は,第1章「総説」,第2章「総論」,第3章「各論」から構成されています。この構成もバランスの良い構成と言えそうです。

 第1章では診療概論を眼瞼腫瘍,角結膜腫瘍,眼窩腫瘍,眼内腫瘍に分けて編者のおひとりの大島浩一先生が著します。眼科腫瘍診断は治療計画を立案するための根拠を得ることであると述べられています。

 第2章は先の4分野についての腫瘍総論が述べられています。第2章までは通読されることをお勧めします。

 第I節は「眼瞼腫瘍総論」で疫学的事項,どう診てどう考えるか,必要な検査,良性腫瘍の治療,悪性腫瘍の治療が述べられています。腫瘍切除後の眼瞼再建法もここに記載されています。

 第II節は「角結膜腫瘍総論」。内容の章立ては前の眼瞼と同じですが,特殊な検査項目として,遺伝子再構成やフローサイトメトリーなども説明してあります。

 第III節は「眼窩腫瘍総論」。眼窩腫瘍診断のフローチャートや画像診断のオーダーの概略,眼窩腫瘍の手術的な取り方の概略も記載されていますから,専門医が眼窩腫瘍にどう対応するのかをここで見ておかれるとよいでしょう。

 第IV節は「眼内腫瘍総論」です。どう診てどう考えるか?という部分には鑑別診断の表が作ってあって,福島県立医科大学准教授の古田実先生の苦労がしのばれます。眼内腫瘍の診断法もさまざまなものが詳しく記載されています。

 トピックスという面白いページがこの後に6項目作ってあります。「なぜ網膜芽細胞腫を重粒子線・サイバーナイフで治療しないのか」とか,「なぜ悪性黒色腫を眼動注で治療しないのか」といった玄人筋の薀蓄がここには書かれています。

 第3章は各論。さて,この本のボリュームとしては半分を少し超える部分が各論です。「眼瞼腫瘍」「角結膜腫瘍」「眼窩腫瘍」「眼内腫瘍」と進み,前章までにはなかった「小児から弱年者に発症しやすい疾患」として,「角結膜デルモイド」「毛細血管性血管腫(ストロベリーマーク)」などが追加で解説されています。第3章は,量も多いので,無理に通読はしなくても,疾患の説明が必要な患者さんが目の前に現れてから紐解いても間に合いそうです。

 各論では各項目の最後に「一般眼科医へのアドバイス」という数行の記載が付いています。例えば眼窩腫瘍では,「試験切除してみて悪性だった場合には直ちに次の治療に移行しなくてはなりません。どこまでをわれわれ一般眼科医が扱い,どこからは眼腫瘍専門医に手渡していくべきか?」といったアドバイスがそこには的確に与えられています。

 一般眼科医が手にしてみることをぜひお勧めしたい一冊であると思います。

[これは、正月休みに依頼を受けて私が記載した書評です。]

Categorised in: 神経眼科