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2018年10月8日

3261 エタンブトール視神経症 ethambutol optic neuropathy

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エタンブトール視神経症

 

 

以前にこのブログでは亜鉛欠乏性視神経症の中で此のエタンブトール視神経症を取り上げました。しかし、エタンブトール視神経症として独立した解説を作っておかないと其処にはたどり着けないことに漸く気が付きました。また、その発生原因の説もエタンブトールに寄る亜鉛キレート作用に因る亜鉛欠乏だけが提唱されているわけでもなさそうです。(初出20124.22.改訂2018.10.8)
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エタンブトール視神経症  ethambutol toxic optic neuropathy

概念:結核治療薬であるエタンブトールの副作用として起こる視神経障害。通常は両側性で、その多くは可逆性です。

成因:
結核および非定型好酸菌症に対してはエタンブトール、イソニアジド、リファンピシンの3剤が用いられますが、エタンブトールはその使用される症例の約1~3%に視神経障害が報告されており、その薬剤が用いられる病院に勤務しておりますと稀ならずその発症に遭遇します。(多くはないですが、イソニアジッドにも視神経障害の報告があります。)

その発症はある程度予測されるものであり、有り得べからざる薬害としては考えずに、むしろ発症後の速やかな対応を重要であると考えるべきでしょう。従ってエタンブトール被投与者では全例に1~2ヶ月に1回の定期的視機能検査を行う事が推奨されると思います。

投与一日量で25mg/kg/day以上、総投与量100~400gで発症し易いとされ、一日量15mg/kg/day以下では比較的安全であるという説明も見られます。

危険因子:
患者が60歳以上である事、アルコール中毒者である事、糖尿病を有する事、腎障害が有る事、貧血を有する事などが危険因子であり、これらを持つ患者ではその発症の危険が高いとされます。

また、エタンブトールに対してキレート作用を持つ亜鉛が欠乏することが一つの要因とする説があり、低亜鉛血症(0.7mg/l以下)も危険因子として挙げられています。動物実験では亜鉛分布の希薄な視交叉部に異常が起こり易いことが指摘されています。

臨床像:

投薬開始後3ヶ月以上を経てから起こる視力低下を主症状としますが、それは視神経黄斑線維束が冒されやすいからです。視力低下は亜急性で、視神経炎とは異なって痛みを伴わないのが通例です。その視力低下の程度は症例によってさまざまです。

投与開始から半年~1年以内にその発生は多いです。除々に両眼の視力低下を示し、中心暗点や色覚障害も合併します。

検査をすれば両耳側半盲や傍中心両耳側暗点も見られることが有ります。対光反応も減弱しますが、視機能の左右差が乏しければ相対的瞳孔反応減弱は見られないことも有るでしょう。

視神経乳頭の色調は正常であるか、或いは初期にはLeber病の如く多少の発赤を示しますが、最終的には蒼白になります。

スクリーニング検査には視力測定と河本式中心暗点計を使うのが実際的であるとされています。中心フリッカー値もその感度は高いですが、此の検査では測定毎のばらつきが大きくて、この疾患の発生が両眼性であるため、中心フリッカー値の左右差で病気の発症を検出するのは難しい事が有ります。いずれにしろ、体力の弱い高齢者の患者では、多少の視力低下は白内障に因るものか?等と思っているうちに急に視力が低下し、色覚も弱って居るのを見て漸く気がつくことが有ります。

視覚に異常が疑われたらハンフリー視野計などの静的視野検査も行いましょう。中心暗点だけでなく良く見ると両耳側半盲ないし両耳側傍中心暗点(BJOに出ている上の写真の症例など)のパターンを呈することも少なくは有りません。

このほかに全身症状として手袋と靴下型の知覚低下を示す症例も報告があります。

治療:
眼科医でその発症が疑われた場合にはエタンブトールをすぐに中止し他の抗結核薬に変更する事を処方している内科医に対して依頼しましょう。視力障害が軽いうちにエタンブトール使用を中止すれば、多くの場合には除々にではありますが、6月程度かけて視力は0,8など比較的良い所まで回復します。しかし、非定形抗酸菌症などでは、内科医にとっても他剤への交換が難しいと言う場合も有る模様です。

視力がいったん0.1以下程度まで著しく低下した症例では、その視力回復は良くない傾向が有りますが、この疾患での視力回復は上述の通り非常に遅いものなので、眼底に著明な視神経萎縮を認めてしまわないうちは、安易な視機能予後不良の宣告は避けて患者さんを励まして置くのが良さそうです。

補助的にビタミンB12(+B1、C、グルタチオン)などを投与しながら経過観察する。亜鉛を補う目的で亜鉛欠乏症に用いるように増量剤に亜鉛を含む胃薬のプロマックを投与することも私見としては有用なようです。

別名: Ethambutol-Related Toxic Optic Neuropathy
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清澤のコメント:この副作用が出た場合には短期間でもその時期に入院加療をした実績を残しておくことが良いと思います。因果関係の必ずしもはっきり証明されない薬害を、国が救済補填する制度が有りますが、その要件として発症した障害治療のために入院して治療されている事と言う指定が有ります。発症時に入院加療されていないと障害が軽微であると見なされて、その要件を満たせない可能性が有ります。

(この文章は患者さんやその御家族が読むことを考えて務めて平易に記載しました。また、他の資料も追加しておりますが、新潟大学高木先生の記述を多くの部分で参考にさせて戴きました。高木先生は既に亡くなり、そのページもなくなっています。)

Categorised in: 神経眼科