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2020年3月16日

11628:眼精疲労,asthenopia,ocular strain

清澤のコメント:つい最近出版され、著者献本の届いた 「今日の治療指針2020年版 (2020年1月1日発行)から、私が担当した「眼精疲労」の項目です。旧版(61版)と同じ記述にならぬように、編集部で毎年著者と担当項目を入れ替えています。 電子版で見ていただきますと、末尾に本にはない3編ほどの参考文献も見られます。 電子版は検索もでき、使いやすくなっています。お買い求めください。眼精疲労の治療は、各々の原因を決めるまでが勝負。ことに治療に使うべき薬剤も多くはなく、ややまとめにくい項目ではありました。-----

眼精疲労

asthenopia,ocular strain

清澤源弘(清澤眼科医院・院長(東京))

治療のポイント

・点眼や眼周囲の温療法により血流改善をはかるなどのセルフケアを試みる.

・セルフケアで改善がみられなければ眼科専門医へコンサルトし,原疾患に対する治療を行う.

◆病態と診断

・眼精疲労は,眼を持続的に使ったとき,眼痛,重圧感,頭重感,視力低下,時には複視などを訴える状態を指す.重篤な場合には悪心・嘔吐をきたすこともある.

・多くは単独あるいは複合的な眼科的要因が考えられるため,眼科専門医へコンサルトする.

A. 調節性眼精疲労

・遠視・乱視の未矯正,近視の過矯正,老視や調節衰弱の近業時における未矯正など,適正な屈折矯正がなされていない場合に起こる.

・過度な調節を恒常的に強いられることによる.

B. 筋性眼精疲労

・長時間の近業は左右の視線を合わせるための内よせ(輻輳)の負荷が大きいが,間欠性外斜視や輻輳不全があるとその負担はさらに増大し眼精疲労の症状をきたす.また,老人性眼瞼下垂では無意識に前頭筋を使って瞼を挙げ視線を確保しようとする.

・随意筋の恒常的緊張により,頭痛や疲労を訴える.

C. 不等像性眼精疲労

・屈折異常に2ジオプトリー以上の左右差があるとき,矯正眼鏡の度数差により網膜像に不等像が発生する.

D. 症候性眼精疲労

・“治療すべき原因疾患がほかにある”という意味で,角結膜炎,ぶどう膜炎,緑内障などの疾患に伴う慢性的刺激感を眼精疲労として訴える場合がある.また,ドライアイは眼の疲れを訴える場合が多い(「ドライアイ」の項参照).

・さらに,眼瞼けいれんは頭頸部ジストニアのなかで眼輪筋の不随意なれん縮が目立つものであり,開瞼維持困難や眼部不快感,眼痛などの不定愁訴を訴える.

E神経性眼精疲労

・以上の原因が除外される場合,心因性を想定して神経性眼精疲労と診断する場合がある.

◆治療方針

 対症療法として点眼や眼周囲の血流改善により症状が軽快することがあるが,それぞれの原因に合わせ,専門医により以下の治療が行われる.A~Cの眼精疲労は両眼視が鍵であり,眼科医のもとで適正な矯正を受けることが重要である.

A. 調節性眼精疲労

 作業距離に応じた適正な屈折矯正を行う.眼科医の診断のもと眼鏡処方を受ける必要がある.点眼薬の処方を追加する.

Px処方例

 サンコバ点眼液 1回1~2滴 1日4回 点眼

B. 筋性眼精疲労

 若年の間欠性外斜視や輻輳不全症例には輻輳訓練を試みる.代償不全性斜視の場合はプリズム眼鏡処方が有効なこともある.重症例には斜視手術も検討する.老人性眼瞼下垂では眼瞼挙筋の短縮手術も検討する.

C. 不等像性眼精疲労

 屈折異常の強い眼の矯正度数を弱くし,両眼のバランスをとる.

D. 症候性眼精疲労

 各原疾患に対する治療が基本である.眼瞼けいれんが原因の場合にはボツリヌスA毒素の眼輪筋内への局所注射が行われる.

E. 神経性眼精疲労

 必要があれば,精神科への紹介も考える.

■患者説明のポイント

・デジタルデバイスを使用した業務など,長時間の近業では,1時間1回程度の休憩をはさむ,乾燥した環境では点眼薬などを適切に使用する,眼周囲を温めて血流の改善をはかる,といったセルフケア方法を説明し,改善がみられなければ,眼科専門医への受診を勧める.

文献

1)Sheppard AL,et al:Digital eye strain:prevalence,measurement and amelioration.BMJ Open Ophthalmology 3:e000146,2018

2)Rosenfield M:Computer vision syndrome:a review of ocular causes and potential treatments.Ophthalmic Physiol Opt 31:502-515,2011

3)清澤源弘,他:眼瞼痙攣の治療.神経眼科 34:411-420,2017

今日の治療指針2020年版 20200101 発行

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Categorised in: 全身病と眼