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2020年2月25日

11553:交感神経の過剰な活性化はメラニン細胞幹細胞の枯渇で白髪を引き起こす

清澤のコメント: 「ストレスに伴う白髪形成は交感神経の過剰興奮によるメラニン細胞の枯渇による」というネイチャー論文。そうだとすれば、原田病に見られる免疫現象による白髪、夕焼け状眼底、そして難聴とは別のメカニズムによる物だという事になります。 此処では、まずNatureの抄録を邦訳。次にWIREDに掲載されたその解りやすい解説記事の要点を採録します。

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Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells.

交感神経の過剰な活性化は、メラニン細胞幹細胞の枯渇を引き起こします
Bing Zhangほか
経験的および逸話的な証拠はストレスを白髪化の促進(色素沈着していない髪の形成)と関連付けますが、これまでのところ、この関連性の科学的検証はほとんどありませんでした。ここでは、マウスでは、急性ストレスがメラニン細胞幹細胞の急速な枯渇を通じて白髪につながることを報告します。副腎摘除、除神経、化学遺伝学、細胞アブレーション、メラニン細胞幹細胞のアドレナリン受容体のノックアウトの組み合わせを使用して、ストレス誘発性のメラノサイト幹細胞の喪失は免疫攻撃または副腎ストレスホルモンとは無関係であることがわかります。代わりに、白髪はメラニン細胞の幹細胞のニッチを支配する交感神経の活性化から生じます。ストレスの条件下では、これらの交感神経の活性化は、神経伝達物質ノルアドレナリン(ノルエピネフリンとしても知られる)のバースト放出につながります。これにより、静止期のメラノサイト幹細胞が急速に増殖し、その後、ニッチからの分化、移動、永久的な枯渇が続きます。メラノサイト幹細胞の増殖の一時的な抑制は、ストレスによる髪の白髪化を防ぎます。私たちの研究は、急性ストレスによって誘発される神経活動が体性幹細胞の急速かつ永続的な損失を促進できることを実証し、体性幹細胞の維持が生物の全体的な生理学的状態によって直接影響を受ける例を示しています

ーーーもう少しわかりやすいWiredの 記事を抄出ーーーー

2020.02.23  強いストレスによって「白髪」になるメカニズムが、実験結果から見えてきた

強いストレスを感じると白髪が増えるメカニズムが、このほどマウスを用いた実験によって明らかになった。かつての研究では免疫細胞が白髪を誘発する可能性が示唆されていたが、実際はストレスによる色素幹細胞の枯渇が影響していたようだ。

TEXT BY SANAE AKIYAMA

「強いストレスと白髪」の関連性は一般的によく知られていて、急激なストレスを感じたあと白髪が一気に増えて驚いた人たちも多いことだろう。

このほどハーヴァード大学の研究チームは、強いストレスが体に及ぼす影響のほんの一部、すなわち白髪化を促すメカニズムをマウスの実験において報告している。ストレスは全身の組織に作用するものだが、その影響が外観から見えやすい頭髪や肌は、肉体的または精神的負荷の分子的メカニズムを解き明かすうえで最適なのだ。

科学誌『Nature』に掲載された実験結果によると、急性ストレスが毛包内の色素幹細胞に及ぼす不可逆的な損傷が報告されている。

免疫細胞やコルチゾールは関係してない

T細胞やB細胞、そしてミエロイド系細胞(マクロファージ、好中球など)といった免疫細胞を欠くマウスでも、ストレスを与えると白毛になった。

次に研究者らは、コルチゾールを生成する副腎皮質を欠いたマウスで実験した。ところが、コルチゾールホルモンが生成できないように副腎を摘出したマウスでも、ストレスで白い毛になった。強いストレスにおける白髪化に、免疫細胞やコルチゾールは関与していないことが明らかになった。

交感神経系が毛包の幹細胞に及ぼす影響

通常、毛穴の奥には毛根があり、その毛根は毛包と呼ばれる袋状の組織に包まれている。毛包内には2種類の幹細胞がある。毛そのものをつくる「毛包幹細胞」と、毛に色をつける「色素幹細胞」。色素幹細胞が活性化されると、それらの一部がメラニン細胞に分化し、これらがメラニンを合成して毛を根本から着色する。

研究チームは、ストレス下において活性化する「交感神経系」に着目した。ノルアドレナリンは心拍数を上昇させ、危険に素早く反応できるようにする。しかし、高レヴェルのノルアドレナリンは色素幹細胞に有害であり、その損失を引き起こす。急性ストレスによって交感神経が活性化されると、色素幹細胞の集団全体を永久に枯渇させることがことがわかった。

色素幹細胞が枯渇

研究チームは、強いストレスは交感神経に働きかけてノルアドレナリンを放出させ、それが毛包にある色素幹細胞に取り込まれることを発見した。通常、色素幹細胞の活性はそれらの一部だけをメラニン細胞に分化させるが、ノルアドレナリンによる過剰活性は色素幹細胞のすべてをメラニン細胞に変換させてしまう。すると、色素幹細胞が枯渇してしまい、髪に色素をつけるメラニン細胞の供給源がなくなってしまう。

マウスはストレスを受けてから5日以内に色素幹細胞を失った。ただし、分化したメラニン細胞はまだ存在しているため、この時点では毛髪は色素沈着したまま。新しく毛が生え替わると、毛を着色するメラニン細胞をつくる幹細胞がないため、新しい毛は色素を失う。

交感神経から神経伝達物質を介して色素幹細胞に影響を及ぼす仕組みは、ヒトとマウスで非常に似通っている。強いストレスによりヒトの髪の色が失われる主な理由も、メラニン細胞を再生する幹細胞を失うから。幹細胞はいったん失われると戻ることはない。変化は永続的であるため、ストレスが幹細胞に与える影響を理解することが非常に重要。

ストレスと幹細胞の関係

末梢神経が臓器機能、毛管、免疫などを調節することは知られていた。が、末梢神経による幹細胞の調節は明らかになっていなかった。この結果は、ストレス下において末梢神経が幹細胞とその機能をコントロールでき、毛髪に対する色素幹細胞への影響を示したもの。この研究は、ストレスがさまざまな組織の幹細胞にどのように影響するのか、科学者が理解するうえで重要な知見となるだろう。

Categorised in: 全身病と眼