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2020年2月18日

11528:細胞外小胞エクソソームがもたらす疾患と臨床応用に向けた研究:記事紹介

清澤のコメント:エクソソームに関する解説記事が保険医新聞最新号に出ていました。眼の組織には直接の関連はありませんが、目新しい話でしたので抄出して紹介します。ネット上で見かけた「細胞外小胞、エクソソームの特性と機能」(下の図の出典)(https://www.dojindo.co.jp/letterj/169/review/02.html)も概要の理解への参考になりました。

東京医科大学 医学総合研究 分子細胞治療研究部門 吉岡 祐亮

はじめに:

生体内においても細胞同士がコミュニケーションを必要としている。ヒトの体は集合体であるため、個々の細胞だけではわれわれの体を正常に保つことはできず、細胞同士でコミュニケーションを取ることで、われわれの生体は正しい機能を果たすことができている。従来は、細胞同士の接着によって、近接する細胞間でコミュニケーションを図り、遠隔地の細胞にはサイトカインやホルモンなどの分子を使つてコミュニケーションを図っていると考えられていた。しかし、これらコミュニケーションツールに加えて、細胞が分泌する小胞エクソソームが細胞間コミュニケーションに寄与することが明らかとなり、注目を集めている。

「エクソソームとは」;

エクソソームとは細胞が分泌する脂質二重膜を有する100 nm程度の小胞である。エクソソームは、ほぼ全ての細胞から分泌されていると考えられ、小胞内には様々なタンパク質をはじめ、microRNA(miRNA)やmRNAなどの核酸も含まれている。そして、脂質膜上には綱胞膜同様にタンパク質が存在している。細胞がエクソソームを分泌しているのは、エクソソームに上記のような機能性分子を内封し、近傍の細胞および体液を通じて遠隔地に存在する細胞へ、メッセージ代わりに機能分子を届けるためである。エクソソームは最近発見されたわけではないが、エクソソームが細胞間のコミュニケーションツールとして働くことが証明され始めると、免疫や発生、造血などの生理現象のみならず、様々な疾患にもエクソソームが関与していることが明らかとなってきた。

「がんとエクソソーム」;

エクソソームが関与する疾患の中で、がんに関する報告が多い。固形がんはがん細胞を中心とした腫瘍組織内に血管内皮細胞や免疫細胞、線維芽細胞など複数の細胞が存在しているため、がんの本態解明には、これら組胞がどのように相互作用しているかを明らかこする必要がある。さらに、がんの特徴の1つである転移に関しても、転移先臓器に対するがん細胞の作用を理解する必要があり、これらの細胞間の相互作用に関してエクソソームが関与していることが明らかとなってきている。

「エクソソームを用いた診断法の開発」:

がん細胞を含む多くの細胞がエクソソームを分泌しているため、体液中には大量のエクソソームが循環している。そして、エクソソームには、曲来する細胞のメッセージとも言うべき、痕跡が残っている。それら痕跡を解析することで、診断を行うエクソソームリキッドバイオプシーが注目される。

早期のがん細胞も、エクソソームを分泌している。それらのエクソソーム内包物に特異的な分子を見出せれば、早期がん細胞が分泌したエクソソームを体液中から検出することで、早期がんの診断も可能である。実際にエクソソームを利用した診断法の論文報告例が多くある。

エクソソームを用いた治療法の開発:

エクソソームが、がんの悪性化に関与することが見出されており、がん微小環境内における血管新生や、がん転移に関わるエクソソームを遮断し、周辺細胞とのコミユニケーションを断つことで、新規治療法の開発が可能だと考えられている。特に悪性化に寄与するエクソソームは、がん細胞から分泌される場合が多い。これら分泌されたエクソソームは体液中を循環し、転移先臓器で作用する。したがって、エクソソームが転移先臓器へ辿り着く前に、エクソソームを体液中から除去することで転移の抑制が可能である。

また、間葉系幹細胞(Mesenchymastem cell:MSC)が分泌するエクソソームにも注目が集まつている。MSCは、骨髄や脂肪組織内に含まれ、骨や筋肉、内臓などの細胞に分化する多能性幹細胞である。MSCを用いて、心臓、肝臓などの組織修復や臓器再生研究が行われており、臨床応用可能な再生医療ツールとして実現化が期待される。このような研究を通してMSCに曲来するエクソソームは様々な細胞に対して、アポトーシス抑制、抗炎症作用を誘導することや、血管に対して新生血管形成、抗リモデリング作用を持つことが分かつてきた。従来のMSCを用いた細胞治療と比較して、そのエクソソームを利用する治療戦略は、MSC採取の侵襲リスクを減らすほか、他の細胞種への分化や血管の石灰化、また腫瘍発生などのリスクを回避できる利点などがある。

「おわりに」

細胞が分泌する小さな粒子に詰め込まれたメッセージを理解し、細胞間のコミュニケーションを明ら力にすることで疾患メカニズムの解明に繋がることはもちろん、それらメッセージを読み解くことで疾患の存在を確認するツールや細胞間コミュニケーションツールを利用した治療法の開発へと繋げることが可能である。エクソソームは細胞間コミュニケーションツールとしての役割を持つことが明らかになり、エクソソームに対する見方も大きく変わってきた。

(2019年11月21日企画講演会から 東京保険医新聞 2020年1月5・15日合併号)

Categorised in: 全身病と眼