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2019年6月24日

10850:多系統萎縮症の病態と症候:紹介

1)眼科でもこの病名での紹介を受けることが有るので、それを復習してみよう。

私たちが学んだ1980年ころには多系統萎縮症(multiple system atrophy; MSA)は,独立した疾 患として見出されたオリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy; OPCA),Shy-Drager 症候群(SDS),線条体黒質変性症 (striatonigral degeneration; SND)とされていた。それらが,しばしば共存することからGrahamと Oppenheimer によって 1969 年に提唱された名称が 多系統萎縮症 .1989 年に疾患特異性の極めて高い封入体 glial cytoplasmic inclusion(GCI)が見出され,MSA の疾患概念が確立するに至っている.その後,この封入体の主要構成成分がαシヌクレインであることが判明し,MSAはαシヌクレイノパチーに分類されている.

α-シヌクレイン はSNCA 遺伝子によってエンコードされるアミノ酸140残基からなるタンパク質で、このタンパクの断片が、アルツハイマー病に蓄積するアミロイド中の (主な構成成分であるアミロイドベータとは別の) 成分として発見され、もとのタンパク質がNACP (Non-Abeta component precursor非アミロイド成分の前駆体) と命名された。後にこれがシビレエイ属のシヌクレインタンパクと相同であることがわかり、ヒトα-シヌクレインと呼ばれるようになった。α-シヌクレインの蓄積は、パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患 (いわゆるシヌクレイノパチー) の原因とされている。

 1998 年には診断に関する第1回合意声明が出され,従来の臨床病型分類(OPCA,SND,SDS)は無くなり,パーキンソン症状を主体とする場合は MSA-P,小脳性運動失調を主体 とする場合は MSA-C という二つの分類となった

2) 多系統萎縮症の眼の特徴 J Clin Neurosci. 2018 Jan; 47: 234 – 239. Garcia MD、Pulido JS、Coon EA、Chen JJ。

アブストラクト

目的:眼科的特徴の観点から神経変性疾患である多系統萎縮症(MSA)の眼症状をよりよく理解すること。メイヨークリニックで診察を受けた患者を検索するために遡及的な症例シリーズ(1/1 / 2005-12 / 31/2014)を実施し、285症例が得られた。 285人のうち、39人に真のMSAが確認された。これらの39人の患者のそれぞれは、MSAに潜在的に関連する眼の異常についてさらに検討された。潜在的にMSAに起因すると思われる眼所見が患者の64%に見られた。

最も一般的なのはドライアイ(N = 14)、共動性眼球運動異常(N = 13)、および眼球の位置ずれ(N = 7)であった。 1人の患者は、瘢痕性天疱瘡のために乾癬と睫毛乱生による単眼複眼を持っていた。1人は両側視神経萎縮症を持っていた、そして、1人はAdieの強直性瞳孔を持っていた。

協同性眼球運動異常(33%)と眼球のずれ(18%)は、MSA-C患者でより一般的であった。ドライアイを除いて、眼所見を有する患者は、最初の神経学的症状の時から死に至るまでの寿命が著しく短かった。

我々の研究は、共動性眼球運動の異常とミスアライメントがMSA患者における一般的な眼所見であることを確認している。両側視神経萎縮症および瘢痕性類天疱瘡は、おそらくこの疾患に起因する可能性がある。これらの患者の寿命は有意に短いため、MSAの眼症状は予後不良を予測します。したがって、MSA患者は診断時に包括的な神経眼科検査を受け、その後はより短い寿命を示す可能性のある目の所見をスクリーニングすることを推奨する。

3).多系統萎縮症の病態と症候 渡辺宏久ほか: (臨床神経 2016;56:457-464)

上記論文の要旨: 多系統萎縮症(multiple system atrophy; MSA)は進行性の神経変性疾患で,パーキンソニズム,小脳失調,自律神経不全,錐体路徴候を経過中に種々の程度で認める.孤発性が圧倒的に多いが,主として常染色体劣性 を示す家系も報告されている.パーキンソニズムが優位な臨床病型は MSA-P(multiple system atrophy, parkinsonian variant),小脳失調が優位な臨床病型は MSA-C(multiple system atrophy, cerebellar variant)と呼ばれ,欧米では MSA-P が多く,日本では MSA-Cが多い.平均発症年令は 55~60 歳,予後は 6年から10年で,15年以上生存する症例もある.早期から高度に出現する自律神経不全は重要な予後不良因子の一つである.発症時には,運動症状もしくは自律神経不全のいずれか一方のみを有する症例が多く,いずれの症状も出現するまでの期間の中央値 は自験例では 2年である.現在広く用いられている診断基準は,運動症状と自律神経不全をともに認めることが必須であるため,運動症状もしくは自律神経不全のみを呈している段階では診断が出来ない.しかし,自律神経不全のみを呈する段階で突然死する症例もあることを念頭に置く必要がある.MSA に伴う自律神経不全の特徴の理解と病態に基づいた責任病巣の特定は,早期診断に有用な情報をもたらすと考えられる.従来は稀とされてきた認知症もMSA における重要な問題である.前頭葉機能低下は MSAでしばしば認め,MRI や CTにて進行とともに前頭側頭葉を中心とする大脳萎縮も明らかとなる.最近では,前頭側頭型認知症の病型を示す症例も報告されている.MSA の病態と症候の広がりを踏まえた,早期診断方法開発は,病態抑止治療展開の上でも極めて重要である. (臨床神経 2016;56:457-464) Key words: 多系統萎縮症,早期診断,突然死,自律神経不全,認知症

Categorised in: 全身病と眼