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2021年5月25日

12888:親の「公立離れ」を招いた私立とのオンライン授業格差、学校と教師に募る不信:記事紹介

清澤のコメント:小学校中学校計4校を担当している春の学校検診が終わりました。視力低下が検出された子供たちがメガネつくりの要否などを診断するために連日来院しています。今年はアレルギー性疾患が少なく、近視などの屈折異常が多い印象です。私は、視力を測った後で調節麻痺剤を使って近視、遠視、乱視などを見極め、後日に眼鏡処方は行う事にしています。そんな折、「親の『公立離れ』を招いた私立とのオンライン授業格差、学校と教師に募る不信」という記事を見かけました。教師は忙しいという姿が浮き彫りになります。

  ---記事の要点----

妹尾昌俊 2021/05/24 ダイヤモンド・オンライン 提供 

コロナ禍で全国一斉休校になった際、オンライン授業の有無で公立学校と私立学校に格差が生まれた。公立が総じて「フリーズ状態」に陥ったのに対し、私立学校は対応が進んだ。炭鉱のカナリアは、受験生の「公立離れ」という危険を知らせている。特集『教師 出世・カネ・絶望』(全15回)の#2では、『教師と学校の失敗学』(PHP新書)を5月に上梓した教育研究家の妹尾昌俊氏が、コロナ危機の中で生じた学校教育の失敗を斬る。

オンライン授業でフリーズ

「もう公立学校には期待しない」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国一斉休校が決まった昨春、多くの校長や教師は卒業式をどうするか、通知表をどう渡すかに腐心した。もっと深刻な問題である「休校中の学びをどうするか」について、彼らは知恵を絞るべきだった。

 多くの学校が共通して行ったのは「プリント爆弾」。大量の宿題プリントや紙のドリルを配って、「家庭でやっておいてください」と告げた。「学校は閉めて、プリントを渡して後はおうちでよろしくって、勉強は家庭に丸投げですか」という声が多数上がった。

 文部科学省が2020年6月に全国の教育委員会を調査したところ、休校中の公立学校においてオンラインで双方向性のある授業などができた自治体は、小学校で約8%、中学校で約10%、高校で約47%だった。学校を単位に実際の実施率を測ると、もっと低い可能性が高い。

 休校から2カ月、3カ月がたっていたにもかかわらず、多くの公立学校は有効な手だてを講じることなく「フリーズ状態」(身動きが取れないまま)だったのである。対して私立学校は徐々に対応が進んだ。

 首都圏模試センターが20年6月中旬に首都圏の私立中学校・高校を対象に実施したアンケート調査(112校回答)によると、授業やホームルームへのオンライン活用を開始した時期は3月中が17.9%、4月中が51.8%、5月中が28.6%。調査時点で開始していないところはゼロだった。

総じてオンライン授業で公立と私立の間に格差が生じた。結果、動きの鈍い公立に見切りを付けたのか、「もう公立学校には期待しない」という保護者、生徒が増えているようだ。二つの側面からそう示唆されている。

首都圏の私立中受験率が過去2番目の高水準に

 一つとして、不十分だった学校の対応を学習塾やオンライン講座などで補った家庭がかなりあった。学習塾の85%は同年4月までにオンライン授業を導入していた。緊急事態宣言発令下における対応の満足度を保護者に尋ねた質問では、「学校の方が良い」と答えた人が12.0%だったのに対して、「学習塾の方が良い」という回答は88.0%に上った。

 もう一つは、中学校や高校で私立に流れる動きである。21年の1都3県の私立中学校の受験率は、20.8%で過去2番目に高い水準だった。このままでは私立人気は年々強まっていく可能性を否定できない。

私立志向が強まるのは「このままでは公立学校は見限られるぞ」「公立離れが起きるぞ」という炭鉱のカナリアであろう。

 筆者が20年5月に保護者向けに実施したアンケート:「休校中の学校からのコミュニケーションや働き掛けが少なく、信頼感が下がったかどうか」を聞いたところ、公立小の保護者の50%、公立中の保護者の約56%が「信頼感が下がった」と回答。対して、国立・私立の小・中で「信頼感が下がった」と回答したのは23%。公立と国立・私立でかなり差が出たのである。一向に変わらない、変わろうとしない学校に保護者たちは失望し、信頼が低下した。

タブレットやノートPC、箱さえ開けていない学校も

 1年前と違って、いまではほとんどの公立小中学校で1人1台の端末(タブレット、ノートPC)が整備されている。だが、1年前と変わらないのは、活用できていない学校もまだまだ多いことだ。設定などに手間がかかることは理解できるが、この4月になっても箱さえ開けていない学校もあった。保護者、生徒との連絡・コミュケーション方法も、多くの公立学校は、いまだに紙のプリントと一斉配信メールくらいで、双方向性は低いままだ。

 こうした中、保護者と学校との亀裂はますます拡大している。教師の多忙はコロナ前からも深刻な問題だった。近年の学習指導要領の改訂で教える内容は増え続け、授業とその準備にも時間がかかる。ICT(情報通信技術)の導入が遅くて採点や事務作業の効率化が進んでいない学校も多い。同時に、部活動をはじめ、授業以外の負担も重い。筆者が教職員向けに実施したアンケートによると、「授業の準備をする時間が足りない」「仕事に追われて生活のゆとりがない」という回答が小中学校の先生で約8割、高校で7割前後に上った。

「教師が信頼されない」クライシスの悪循環

 筆者は20年4月に上梓した著書『教師崩壊』(PHP新書)で五つの「ティーチャーズ・クライシス」を示した。そのうちの一つが①「教師が信頼されない」というものだ。

 コロナ禍の休校対応しかり。学校や行政が失敗にふたをして学ばずに学校不信が増大し、「教師が信頼されない」というクライシスはさらに大きなものとなっている。

 五つのクライシスは独立したものではない。保護者や世間に教師、学校に対しての不信感が広がれば、現場は仕事がやりづらくなる。学校での仕事が増えたり教師のストレスが高まったりすると、②過労やうつ病などで「教師の命が失われる」というクライシスが強まる。

 そうした状況下では、教師の質は良くならず、教員人気も下がり、③「教師が足りない」「教育の質が危ない」というクライシスが増大する。教師不足によって採用と育成の両面で問題が深刻化したり、忙しさに追われたりして教師が考えることをしなくなると、④「教師が学びを放棄する」というクライシスの傾向も助長する。

 学ばない教師が増えると、教育の質は落ちる。授業の質が落ち、不祥事や学級崩壊などの問題が起きると⑤「教師が信頼されない」というクライシスが増幅される。

 五つのクライシスが互いに増幅し合い、さらなる悪循環を生み出している。

 英語のクライシス(crisis)には、「危機」のほかに「重大な変化が起きる転機、岐路」という意味もある。ではいま、どんな変化を起こすべきなのか。

 日本の学校と教師は大きな役割と業務を担い過ぎている。これを大胆に仕分けし、絞り込む。具体的には、学習指導要領が求める学習量と時間を減らしたり、給食や休み時間の見守り、部活動指導などは別のスタッフに任せたりするべきだ。

 その分、AI等では代替しにくい思考力、創造力を高める授業への改善や、ICTを活用した学びの充実など、教師は“本業”にもっと力と時間を使えるようにするべきだ。

 最重要課題は、あれもこれも教師に担わせる「欲張りな学校」をやめることである。いま動かずして、公立学校への信頼を挽回するチャンスはない。

せのお・まさとし/徳島県出身。京都大学大学院法学研究科を修了後、野村総合研究所を経て2016年に独立。全国各地で学校、教育委員会向けの研修・講演などを手掛けている。主な著書に『教師崩壊』(PHP新書)、『学校をおもしろくする思考法』(学事出版)など。5月に『教師と学校の失敗学』(PHP新書)を上梓。

Categorised in: ご近所の話題