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2021年3月10日

12683:(厚労行政に)マイクロマネージメントのもたらすもの;若倉正登コラム採録

清澤のコメント;マイクロマネジメントとは、管理者である上司が部下の業務に強い監督・干渉を行うことで、一般には否定的な意味で用いられる。マイクロマネジメントを行う管理者は、業務のあらゆる手順を監督し、意志決定の一切を部下に任せない。部下の立場から見れば、上司がマイクロマネジメントを行っていると感じられることは多いが、上司がそのことを自覚することは稀であるとされる。対義語は、マクロマネジメント。(ウィキペディアより)今回も患者に優しい目を向ける若倉先輩のコラム再録です。出典はいつもの「眼科ケア」です。眼科従業員向けの雑誌ですが、実用的な記事のほかにこのような精神論も掲載されています。眼科医院の院長先生におねだりして医院で勉強会資料としてご購入いただけると喜ばしいと思います。

 ーーー記事採録ーーーー

マイクロマネージメントのもたらすもの

私の提言、苦言、放言 第177回 井上眼科病院名誉院長 若倉雅登

視覚関連の障害者手帳、障害年金、後遺障害などの等級規定を見ていつも感じるのは、細かく決められている基準の根拠の出典が不明なことである。これらの基準はその上位にある基本的な条項に基づいて、それぞれの領域の医学の専門家たちによってルールが決められたものだろう。その基本的な条項とは、障害年金でいえば以下のとおりである。

「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」(一級)

「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(二級)

「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(三級)たとえば、がんや難病の治療をしていても、病気を持ちながらも社会復帰させることが医療のテーマとなっている現代において、「長期にわたる安静を必要とする病状」というのが本当に存在するのかは疑わしい。この文章が時代錯誤に私には見えるのだが、ここではそのことは不間として話を進める。ここで注意してもらいたいのは、日常生活や労働力を主題にしているところである。視覚障害認定でいえば、生活や労働の話なのに、医療機関で測定した視力や視野などの基準を転用してよいのかということである。視力や視野はあくまで医療基準であり、決して視覚障害の状態を、労働や生活能力と比較した調査研究に基づいて決めた基準では一ないからである。ここで視覚障害以外の障害はどうなっているのかをみてみた。目の障害のほか、聴覚、鼻腔機能、音声または言語機能、上肢・下肢、体幹・脊柱、肢体、神経系統、精神などに分類され、さらに心疾患、腎疾患、血液・造血器疾患、代謝疾患―悪性新生物など臓器別にも細かく分類されている。しかも驚くべきは、細かに数値が規定されている基準が多いのである。たとえば、呼吸器では動脈血酸素分圧、腎臓では腎不全の場合、血清クレアチニンや内因性クレアチエンクリアランス、ネフローゼ症候群では尿蛋白量などの数値基準が決められ、血液・造血器疾患でも極めて詳細かつ複雑な数値基準がある。門外漢の領域ではあるけれども、これらの数字が本当に生活や労働能力との関連の研究を背景として、支障の程度に鑑みて公平に決められたものなのかはなはだ疑間だ。一方、代謝疾患の糖尿病もさぞやと思って調べてみたが、こちらは細かな数値は示されておらず、身体の一般状態を重視した基準となっており、たいへん常識的だと感じた。数値化しにくい精神や、神経系の障害についても同様であり、これなら判定者の裁量が重要視され、その日が公正であれば問題は少ないはずだ。

ここで私には、以下の新たな問題意識が出てくる。視力や視野が障害のレベルに入らなくても、脳腫瘍、脳脊髄膜炎後や頭部外傷、薬物障害、発達障害などのさまざまな脳の障害のために視機能を生活上うまく利用できない症例は、不利ではないかということである。従来からよく研究されている眼疾患と異なり、そうした症例では視覚障害を想像させる病名がつかないこともある。従来は心因性などとして軽視されてきた非器質性症状のメカニズムが理解されるようになるなど、この領域は進歩が著しいので、いつたん決めた障害基準が陳腐になる速度は速い。医学的観点からそれぞれの専門医によって、上から目線で決めた数値や病名などをこと細かに決めたルールが正しいやり方なのか。この干渉し過ぎというか、マイクロマネージメント的なやり方で、将来もよいのかという疑間がある。当事者目線や、一般常識人の視点を加えた柔軟な判定ルールにしないと、福祉における公平性は生まれないと私は思う。ちなみに、日本と異なり、英国やヨーロッパの先進国ではそのような専門医による過干渉はない.病名や症状によらず、心身症状でどれだけ日常生活に困り、稼得能力が低下しているかを医師と福祉の専門家とで判定する仕組みが当たり前になっているからである。

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