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2021年1月6日

12550:「顔認証システム捜査」の実態:記事紹介

清澤のコメント:人が人の顔を認識する能力には驚くべきものがありますが、それを機械に認識させて犯罪捜査に使うという技術は既に相当程度進んでいるようです。学習院中学に侵入して机にナイフを置いたという事件でも、瞬時に犯人が逮捕されましたが、この手法は象徴的な事件では既に犯人確保のため水面下で利用されているそうです。

  ーーー記事の要点ーーー

東京五輪「テロ対策」にも すでに水面下で運用「顔認証システム捜査」の実態 フォーサイト-新潮社ニュースマガジン今井 良 警視庁【時事通信社】

 2021年に開催予定の東京五輪。政府は新型コロナ対策とテロ対策も兼ねて、競技場への入場時、すべての人に対する「顔認証」の導入を検討している。

 全国の警察が今年3月から、犯行現場等における防犯カメラ画像やSNS上の顔画像について、警察当局が持つ顔画像データベースと照合する「顔認証システム」の本格運用を開始していた。

 すでに、警察が捜査に関連して自前で持つデータと公のものとを突き合わせていることは、常日頃アナウンスされている。ここ数年で注目を集めているのが、防犯カメラ等の画像をつなぎ合わせて犯人を追跡する捜査手法「リレー方式」。

 そしてこのリレー方式を一躍有名にしたのが、「警視庁捜査支援分析センター」(Sousa Sien Bunseki Center)、通称「SSBC」である。

 SSBCは2009年4月、警視庁刑事部の附置機関として100名体制で発足した。「SSBCは、警視庁プロパーで捜査一課や機動捜査隊員だった職員と、民間でエンジニアを務めた経歴を持ついわゆる特別捜査官出身者で構成されている。プロパー組は豊富な捜査経験を、民間出身組はテクニカルな知識を事件捜査に活用してもらっている」(警視庁関係者)

 豊富な刑事経験から紡がれる捜査センスと最新のデジタル技術に知悉している捜査員が、切磋琢磨しつつ日々の事件捜査に当たっている。

「クレイジーハロウィーン2018」捜査本部

 「至急。至急。渋谷区宇田川町・センター街において暴動が発生している模様。至急応援を要請されたい!」現場の機動隊員から切迫した警察無線が流れた。2018年10月

 センター街で愛車を暴徒に横転させられた男性は渋谷警察署に器物損壊の被害届を出した。事件捜査の白羽の矢が立ったのは、刑事警察の花形とも呼ばれる捜査1課だった。総勢四十数名の捜査員が渋谷署の講堂に参集した。

 屈強な捜査員たちが集う中、IT企業のエリートのような風貌の集団が後から登場した。彼らこそ、警視庁が誇る「SSBC」の精鋭たちだった。SSBCはまさに現代社会の多種多様な犯罪対処にふさわしい手法を開発・駆使して捜査支援を行うセクション。

 「ホシの人定を急げ」―基本とは、「人定の把握」である。氏名・住所・生年月日・家族状況・勤務先・立ち回り先、そして前科前歴など容疑者の人となりを把握することである。マル被(被疑者のこと)は4人だ。まずはこの4人を追うぞ!」SSBCはいち早く、現場付近の防犯カメラ画像、動画投稿サイトにアップされていた、車を横転させる一連の映像を入手していた。当時渋谷の街にいた群衆は約4万人。そのうちの4人が主たる行為者とされたのだった。

 「警視庁のものです。恐れ入りますが捜査の関係で防犯カメラの画像を見せてほしい」 <事件の捜査に必要なため、防犯カメラ画像の提供にご協力願います>

 警視庁には、「防犯カメラデータベース」が存在している。これは、都内各所のどの場所にどのような形式の防犯カメラが設置されているか、警視庁が独自にデータベース化したものだ。

 SSBC捜査員と捜査1課員は画像収集に際し、まずこのリストアップされたカメラの管理者をあたっていったのだ。並行して進められたのが、「当日のSNSへの投稿動画」のチェックである。

 インターネット上には当日の暴動の様子を撮影した動画が氾濫していた。独自の「ビッグデータAI検索」を用いることにしたのだ。AIが膨大な動画データを数秒で解析。数万点に及ぶ動画から事件に関連したもののみを抽出し、リストアップした。機械学習とは、AIが持つディープラーニング(深層学習)機能の賜物だ。そして、画像の中で車横転に関わった人物は何者か。捜査本部はここでもAIを活用した「顔照合」を行っていた。

 顔照合の手順は、まず被疑者の顔画像を拡大・鮮明化する処置を施す。そしてクリアになった顔画像を「顔画像識別システム」にインプットする。顔画像識別システムは、警察当局が保管する運転免許台帳の写真データと抽出した顔画像で一致したものを、わずか数秒で検出するシステムである。

 SSBC捜査員は興奮して思わず声を上げた。ハロウィーン暴徒の4人のうち3人が忽然と浮上した。

 男たちの顔写真は警視庁の全捜査員が持つ専用スマホ「ポリスモード」に一斉送信され、3人の自宅、立ち回り先には捜査員が急行した。

 車横転の画像に映っている、残る1人の男については、運転免許証データとヒットしなかったため、捜査が続けられた。捜査の積み重ねで、渋谷の街に展開するSSBCと捜査1課員のペアは、被疑者たちの足取りをつかみ始めていた。

 「ビルのエントランスのカメラにヒット!」、、、「撮れ像」と「カメラデータベース」を駆使して、被疑者たちの足取りを「点」でとらえる防犯カメラ画像が、捜査員の手で逃走経路という「線」になっていく。この捜査手法こそ、いま注目を集めている「リレー方式」に他ならない。

 「JR渋谷駅改札口でヒット!」「山手線外回りに乗車、駅ホームのカメラにヒット!」、、 JR新宿駅隣接のバスセンターの防犯カメラに捉えられた被疑者の男。2人の捜査員はバスセンターに急行し、高速バス会社から提供された乗客名簿を入念にチェックする。「行き先は……山梨県内だ!」

 捜査員たちが向かった先は、山梨県富士吉田市の「富士山駅」だった。被疑者の画像を高速バス、鉄道を通じて追跡してきた捜査班だったが、この駅から先の足取りは、防犯カメラの設置場所もかなり少なく、足取りを追うのに時間がかかることが予想された。

 そこで捜査班が行ったのは、「聞き込み捜査」だ。お馴染みのこの捜査手法は、刑事の基本中の基本である。 「この男性に見覚えはありませんか?」 被疑者宅にほど近い住民に話を聞いた捜査員は、ついに最後の被疑者にたどりついたのだった。

警備目的とプライバシーとの両立

 渋谷のハロウィーン暴動から約1カ月が経過した2018年12月5日。警視庁は渋谷センター街で車を横転させ、一部を損壊させたとして、暴力行為等処罰法違反(共同器物損壊)の疑いで、男4人を通常逮捕した。警視庁が威信をかけて行ったAIと顔認証を組み合わせた捜査。デジタルとアナログ(聞き込み等)が見事に融合した成功例であった。

 警察庁が2009年から導入しているのが情報分析支援システムの「CIS-CATS」だ。これは犯歴情報、指紋データなど警察当局が持ついわゆるビッグデータを1つのシステムに統合したものだ。

 「今から20年くらい前までは、防犯カメラの映像を警察が使用することについても否定的な論調が少なくなかった。そのような状況下では、顔認証システムのような大量のデータ処理システムを警察が一元管理・利用するなど世の中に受け入れられるのは難しかった。しかし、今は防犯カメラ映像を犯罪捜査に使用することは違和感なく受け入れられており、むしろ捜査の必須アイテムのようになっている。顔認証システムの導入は必然であり、公になったのも自然の流れではないかと思う」

 「顔認証の精度が上がることで捜査支援システムの高度化が図られることは確かだが、このようなシステムはむしろ、テロなど大規模犯罪の予防に真価を発揮するのではないか。安易に人手が少なくて済むとかそういう感覚でなく、どうすれば警備目的とプライバシーとを両立できるかという運用の在り方について検討を重ねる必要があると思う」(2020年12月)

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