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2020年11月23日

12454:新型コロナウィルス感染症について:國島広之 聖マリアンナ医科大学感染症学講座・教授(関東艮陵だより) 記事採録

東北大学医学部の同窓会を艮陵会といい、その関東支部が関東艮陵同窓会です。此の会では年に二度会報を発行しています。今回の50号には國島弘之先生が新型コロナウイルス感染症に関する記事を寄稿なさっています。この記事には新型コロナウイルス感染症の特徴、検査(殊にリアルタイムPCRの解説)、代表的治療薬、発熱患者の診療、感染伝播と対策が比較的詳しく伝えられています。その記事を此処にも採録させていただきます。なお関東艮陵同窓会ホームページhttp://www.gonryo.org/で参考文献を含む全文を見ていただくことができます(11月23日現在準備中です)。

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特集・ウイズ・コロナ時代を生き抜く

新型コロナウイルス感染症について

國島広之 聖マリアンナ医科大学感染症学講座・教授

はじめに

1996年にWHO(世界保健機関)は、「我々は今や地球規模で感染症による危機に瀕している。もはやどの国も安全ではない」と宣言しました。以来、交通のグローバル化、ボーダーレス化のなか、感染症は社会共通の課題として多くのクライシスが発生しています。筆者は呼吸器内科を中村俊夫教授(昭和41年卒)に師事した後、2002年から11年間、東北大学で賀来満夫教授に御指導いただきました。医学部教室員会での活動をはじめ仙台では楽しい思い出ばかりです。2003年のSARSアウトブレイク2009年のパンデミックインフルエンザ、2011年の東日本大震災など様々な事態で勉強させていただきました。2013年から関東に戻り、2016年から現職としております。この度は執筆の機会をいただきましたこと心から感謝申し上げます。

コロナウイルス

1968年にTyrellらによって、特徴的な王冠様突起(スパイク)を持つウイルス群として報告され、スパイクの形状からコロナ(ラテン語で王冠)ウイルスと名付けられました。家畜・家禽、実験動物領域での感染症であり、元来、インフルエンザ様症状の10〜20%はコロナウイルスとされます。2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、2003年に流行したSARS-CoVの近縁としてSARS-CoV-2と命名されました.

新型コロナウイルス感染症

曝露から発症までの潜伏期は4~5日、多くは軽症もしくは無症状であるものの、発症から一週間以降で肺炎や重症の呼吸不全をきたします。COVID-19感染者が濃厚接触者に二次感染させる発症からの期間は5日間程度、培養可能期間は8日程度です。したがってコロナウイルス感染症として感染性が強い初期の感冒から、サイトカインストームによる全身病態となります。軽症例を含む最も頻度の高い合併症としては、味覚嗅覚障害(コーヒーの薫りやカレーの辛さが判らないなど)は、20〜40%にみられるとともに、数ケ月に渡るようです。

致死率は3~4%(インフルエンザは0.1%以下)で、高齢者や喫煙者、肥満者では重症化のリスクが高いとされます。合併症として血栓傾向が増強することから、脳梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓がみられます。その他、QOLの低下、心筋障害なども報告されています。

検査

遺伝子検査もしくは抗原定量検査が感度・特異度が高い検査として行われています。SARS-CoV-2のPCR感度は約70%程度とされています。当然のことながら、曝露直後は陽注とはなりませんので検査のタイミングも重要となります。

リアルタイムPCR法では遺伝子検査のサイクル数を増やすほど増幅しますので、CT値(閾値到達サイクル数)が低いほど、遺伝子量が多いことを示します。現在のところ、CT値40をカツトオフとして40以下で陽性判定しています。したがって30後半では偽陽性、40前半では、より偽陰性の可能性があります。症状のある方は鑑別診断を含めて判断できるものの、無症状の方ですと偽陽性の推定が困難となります。流行状況や年齢、接急歴などにより事前確率が異なり、陽性となった場合は宿泊療養や入院、ご家族や周囲の濃厚接触調査を含む指定感染症であることも念頭に, 検査を行う際には丁寧な説明が必要と考えます。

抗原定性検査はイムノクロマト法を用いている場合は、現在のところ、感度ならびに特異度の何れもりPCR検査より劣るため、より慎重な判断が必要となります。

抗体検査は特に重症肺炎期におけるPCR検査の偽陰性を補完することを目的として、発症10日以降にIgG検査であれば一定の有用性があります。ただし、SARS-CoV-2のスパイク抗原に対するIgG抗体の半減期は1ケ月程度です。他のウイルス性呼吸器感染症と同様に、抗体の持続性や再罹患の影響は分かりません。

治療

治療現在、わが国では、重症のCOVID-19に対してレムデシビルならびにデキサメサゾンが承認されています。ファビピラビルはプラセボ群との単盲検試験で有効性が報告されました。その他、抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体やイベルメクチン、シクレソニドなど多くの薬剤が検討されています。今後は、どのような患者に、どのようなタイミングで、どのような薬剤が有効か検証していく必要があるとともに、一般外来や高齢者施設における軽症例を含めた治療や管理指針が求められます。

発熱患者の診療

自施設では2020年10月15日現在、基本的に発熱と呼吸器症状を呈する方に対して3500件のPCR検査を行い、複数の偽陽性を含む陽性67件(1.9%)となっています。新型コロナウイルス感染症は検査時点(麻疹と同様)で臨床診断例となりますので、半日後の検査結果判明までは、その他の診療や治療が中断することがあります。自験例ではカンピロバクター腸炎、溶連菌性扁桃腺炎も多く、なかには初診の急性白血病、肺結核、急性虫垂炎、心筋炎などもありました。自分としては、「アタマがコロナ」にならないように、できるだけコロナ以外の鑑別診断を心掛けたいと考えています。今夏、南半球ではインフルエンザは流行しなかったものの、今冬に向けて診療所、高齢者施設、地域病院、基幹病院の連携を図っていく必要があると思います。

感染伝播と対策

COVID-19が発生してしばらく経ち、コロナが好きなところ、嫌いなところが少しずつ分かってきました。COVID-19は発症前から伝播性がみられるため、発熱者のみの対応では十分な対策ができません。したがつて、密閉・密集,密接というCOVID-19の主要な伝播要因を避けることが重要となります。外出・仕事時における常時マスク着用(ユニバーサルマスキング)、ソーシャルディスタンス、換気、手術衛生が有用となり、多数との会食や職場での体憩などは要注意となります。一方、マスク着用ができる観劇や公共交通機関でのリスクは低いです。

医療施設では、職員同士の会食、食事介助や吸引処置などの密接なケア、PCR偽陰性患者の転科・転室・転棟などで感染が拡大する傾向があります。通常の外来診察のみでは殆ど伝播リスクはありません。

また、わが国におけるCOVID-19の特徴は、20〜30代の若年者に罹患者が多いことです。SNSと地理情報システムを組み合わせて検討すると、国内での流行状況に差があること。地域内でも時間的空間的均一性に乏しいこと、SNSを用いて流行初期の動向評価ならびに地域クラスターの捕捉ができることも新たにわかってきました。日本プロ野球機構、Jリーグ、国立劇場などのお手伝いもするなか、来年のオリンピツク開催に向けて、科学的知見をもとに社会と連携していくことの重要性が高まっており、今後は医療と社会の垣根を越えたネットワークがより一層不可欠になると考えます。

おわりに

今年の10月に、半年ぶりに学会で仙台を来訪し、大学と仙台厚生病院に顔を出して本田芳宏先生に教えていただいた場所に行ってきました。八幡町と広瀬町の中間、土橋通り沿いに小さな石碑「疱瘡神碑」があります。古来は疱瘡(天然痘)が猛威を振るつたともに、現代と同様に多くの人々に怖れを抱かせたのだと思います。最も有効な感染対策は、最新の正しい情報の共有です。艮陵同窓会関東連人口会の皆さまのヒューマンネットワークが更に一層繋がることを祈念しております。ありがとうございました。

参考文献:略

Categorised in: ご近所の話題