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2020年10月14日

12352:米国の大学入試でペーパーテスト廃止! の影響:記事紹介です

清澤のコメント:このところ眼科に直接関連のない記事を続けて取り上げています。日本では大学入試のペーパー試験や共通試験が平等を担保するものであると無前提的に信じられていますが、米国ではそれが否定されて一発で決まる共通試験を行うことが禁じられる判決が出たという話題です。マイノリティー問題が大きな意味を持つ米国らしい話題といえましょう。要領の良い受験対策を施された志願者ではなく、コツコツ勉強するタイプの学生が欲しいという米国大学の姿勢は評価されます。世の中では最終的にまじめでコツコツ努力する人が勝ち残ると思うのですが、今の風潮では無駄な努力をせずコストパフォーマンスの良い道を目指すと公言する若者が目立つのは社会のためには望ましくはない事なのでしょう。

   ――――記事の概要―――

試験2020年10月13日(火)18時15分

<一発勝負のペーパーテストで合否が決まるのは「不公平」という画期的な判決。大学入試は「テスト慣れ」だけでは乗り切れない時代がくる?>

去る8月31日にカリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所は、UC BerkeleyやUCLAなど10公立大学が参加するカリフォルニア大学システムに対して「SAT」や「ACT」と呼ばれる大学入学共通テストのスコアを入学選考で使用することを禁止する命令を出しました。

大学入学共通テストは、貧困層、人種マイノリティー、障がい者など社会的弱者にとって不公平であり「差別」に当たるという理由ですが、この判決以前からアメリカでは共通テストは裕福層に有利であるとして批判が高まっていました。

共通テストは社会的弱者にとって不平等

日本では「公平性」を保つために「一発勝負のテストスコア」で合否を決める受験方法が一般的です。しかしペーパーテストのスコアそのものが「不公平である」というこの決定は、世界の大学入試のあり方にインパクトを与えることでしょう。

カリフォルニア大学バークレー校の研究者ソール・ゲイザーは、カリファルニア大学システムの受験生160万人のSATスコア、高校の成績、家庭の経済力の相関性を分析しました。

その結果、SATの成績上位10%のうち貧困層はわずか5%であったのに対して、高校の成績上位10%のうち貧困層は23%を占めることを発見しました。つまりSATスコアは(学校の成績に比べて)裕福層ほどハイスコアが取りやすく、貧困層にとって不利であることが分かったのです。

全米大学入学共通テストを実施するカレッジボードは、SATスコア、高校の成績、人種グループの関連性を調査しました。その結果、SATスコアが高く、成績が低いグループ(手抜きタイプ)には裕福層の白人男性が多く、SATスコアが低く、成績が高いグループ(コツコツタイプ)には貧困層のマイノリティ女性が多いことが分かりました。

SATやACTのスコアは試験対策をするほどスコアが上がる傾向があります。SAT対策を提供している私立進学校の生徒や学習塾が実施するSAT対策コースを受講できる子どもほどハイスコアが取りやすくなります。さらにアメリカの大学入学共通テストは何回でも受験でき、かつ、最高点だけを大学に提出できるシステムがあるので、複数回受験できる生徒にとって有利なのです。

大学でのパフォーマンスを決定する要因は何か?

ベイツ大学の入学選考担当者ウィリアム・ヒスが同大学に通う12万3,000人の学生を追跡調査したところ、大学での成績を予測できる最大のファクターは、共通テストのスコアでなく、高校時代を通しての成績であることを発見しました。

シカゴ大学のエレイン・アレンスワースとカイリー・クラークが同大学の卒業生5万5,000人を調査した所、高校時代の成績は、ACTテストのスコアよりも「5倍正確に」大学でのパフォーマンスを予測できることを発見しました。

アレンスワース博士は「実際には高校の成績は大学の成績と比例する一方で、共通テストスコアは大学の成績との関連性が低いことが分かった」と述べています。

カレッジボードの調査でも、高校時代を通して成績が良い「コツコツタイプ」の学生は、テストスコアが高く高校時代の成績が低い「手抜きタイプ」の学生よりも大学で良い成績を収めることが分かっています。

高校時代を通して真剣に学業に取り組んできた生徒ほど大学でも良い成績を収めるというのは誰にとっても理解できる話です。これまでのように共通テストのスコアに重点を置いて合否判断をすると、大学にとって本当に必要な人材を見落としてしまう可能性があるわけです。

アメリカのAO入試は何を重視しているのか?

アメリカの大学入試は全て「AO入試」と呼ばれる方法で合否を決定します。AOとは「Admission Office」の略で、入学選考に関わる一切の業務を行う部署の名称です。AO入試では、単に学力だけを見るのでなく、エッセイや推薦状など、多面的視点から学生を選抜します。

全米のAO担当者を対象に実施している調査報告書の最新版によると、合否判断において重視する要素の順位は以下の通りでした。

1)高校時代の成績 
2)大学準備コースの成績 
3)学校カリキュラムの難易度 
)共通テストスコア 
5)エッセイ 
6)大学への関心の高さ 
7)カウンセラーの推薦状 
8)先生の推薦状 
9)学年の成績順位 
10)課外活動の実績

この調査は毎年行われていますが、共通テストスコアの比重は減少傾向にあり、高校時代の成績は上昇傾向にあります。AO担当者の視点が、テストスコアよりも高校時代を通してどれだけ頑張ってきたのかという「やる気」をより評価するように変化してきていることが読み取れます。

もう一つ重要性が増しているのが「大学準備コースの成績」です。具体的にはAP(アドバンスプレイスメント)と呼ばれる大学教養課程の先取りコースやIB(インターナショナルバカロレア)と呼ばれる国際的な高校卒業資格コースの履修歴が重視されるようになっています。

一般にアメリカの大学受験には日本のような「学部受験」や「理系・文系の区別」はありません。医者を目指そうが、弁護士を目指そうが、すべての受験生は志望大学の教養課程を受験します。そのため大学は「大学準備コース」によって学生の興味分野や専門性を見極めようとしているのです。

例えば医学を目指す学生であれば、生物学、化学、物理学のAPコースでの成績が将来の成功を予測すると言われています。ビジネスを目指すのであれば微分積分や統計学など数字に関連するAPコースの履修が重視されます。

以上のようにアメリカの大学は、テストスコアよりも学生の「やる気」や「専門性」を評価する方向へとシフトしてきています。大学に入ってからも努力を継続していく人材、自分の目指す分野でリーダーシップを発揮できる学生を発掘しようとしているのです。

世界大学ランキングはアメリカがトップを独占

テストスコアで合否決定をする受験システムに比べて大きな手間と時間を要するアメリカのAO入試ですが、それなりの成果を上げています。

英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによる最新の世界大学ランキングを見ると、トップ10大学のうち8大学をアメリカが独占しています。さらにトップ50大学のうち半数以上の26大学がアメリカの大学です。日本は東京大学が36位にランクしているのみですから、いかにアメリカの大学が世界から優秀な人材を集めることに成功しているのかが分かります。

グローバル化が進んだ今、早稲田大学、慶應大学、上智大学など、日本のトップ大学でもIBスコアを使ったAO入試を取り入れる動きが広がっています。大学進学後も伸び続ける「やる気」のある人材を発掘するために、日本の大学入試も多様化が進んでいくことは間違いありません。


[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

Categorised in: ご近所の話題