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2020年3月15日

11624:「8050問題」、とは

清澤のコメント;神経眼科疾患を扱っていると、眼瞼痙攣などで時にこの「8050」リスクのような患者さんに出会います。「目と心の健康相談室」理事長の荒川和子看護師が対応してくれます。当医院にいる臨床心理士、神経内科医などの手を借りることも多々あります。 しかし、この記事の様にきれいに解決できる例はまれです。ここでは、朝日デジタルの記事の最初部分を抄出して紹介します。;朝日新聞デジタル>ひきこもりのリアル「8050」リスク>から

記事独自

第1回まじめに生きた、貯金は尽きた 46歳が手にした5円玉

川口敦子、江口悟、岡野翔2020年3月3日 18時15分

写真・図版

 ひきこもり状態などの事情を抱える中年の子が、高齢の親に生活費を頼って同居する中で社会から孤立してしまう「8050(ハチマルゴーマル)問題」が注目されています。いま40代前後の世代には、就労でのつまずきが、ひきこもりのきっかけになった人も多いようです。就職氷河期を経験したある男性を取材しました。

 男性が私立大を卒業した97年は就職氷河期のただ中。唯一内定をもらったシステム関連会社。入ってみると、今で言う「ブラック企業」だった。求められる仕事がこなせず、月曜から金曜まで社に泊まり込むことも。社の業績も上がらず、2年目で解雇された。

 やがて派遣の仕事も紹介されなくなり、30歳のころ、両親と暮らすマンションの自室にひきこもり状態になった。昼夜逆転の生活。世間話がつらく、4年間理髪店に行けなかった。外出は図書館に行く程度。目に入る人、ビル、車……。すべて自分と関係ないものに映った。悩みを打ち明けられる友達はおらず、両親以外との接点がなくなった。

 「親が子供に期待することは、自分達(たち)が居なくなっても、しっかりと生きてゆけるようになること。手助けをしたいが、十分な意思の疎通が出来(でき)ないでいる。応援団長で居続けるつもりだが、もっと外の世界に出ていってほしい。返事を書いてくれ」。父は交換日記を提案してくれたが、やりとりは続かなかった。

 男性は、自身を「まじめ底辺」とたとえる。不真面目に生きてきたつもりはない。置かれた場所で地道に仕事をしようとしてきた。でも、うまくいかない。「目端の利く人と違う。私は耐えることしかできないんです」

 30代半ばに貯金が底をついた。経済的に自立しなければと思いながら、親に迷惑をかけて何もできていない自分が情けなく、腹立たしかった。

 転機は、ひきこもりの当事者や家族の会との出会いだった。親への罪悪感や年を重ねていく自分への焦りも、不思議とその場では話せた。話し終えると、参加者は「自分の息子の気持ちが初めて分かった」と喜んでくれた。社会とつながれた気がした。

 人とのつながりはできたが、やはり定職に就きたい。自治体の窓口に行き、中高年部門でカウンセリングを受けた。40代になり、仕事の選択肢が狭まっていく一方で、民間企業に恐怖心を抱いた過去の体験から解放されてもいい、と思い始めていた。採用されやすく年齢が上がっても続けやすい職種としてカウンセラーから勧められたのは、ビル管理の仕事だった。

 面談するうちに、より前向きになれた。アドバイスに従って職業訓練を受講し、2級ボイラー技士、危険物取扱者などいくつかの資格をとった。そして、2017年春、ビルメンテナンス会社の社員となった。43歳だった。

 両親は80歳近くになり、生活は年金頼り。いつどうなるか分からない不安は残る。それでも、男性は手取りの半分の約10万円を毎月渡す。「本当に申し訳ないことをした。長く見守ってくれた2人へ、せめてもの感謝です」

 1月の給料明細に「感謝 入社1000日記念」と書かれた小さな封筒が挟まれていた。5円玉のキーホルダーが入っていた。「ご縁ですね。人との出会いに恵まれた。私は幸運な人間です。これまで不義理をしてきた人たちに少しでも恩を返せたら」

 窮地にあった自分を救ってくれた家族会とのつながりは今も続く。就職後も、休日や仕事終わりにボランティアで、ひきこもっていた時の体験を話している。

    ◇

 新卒一括採用の慣行が続く日本では、もともと再挑戦のハードルが高い。就職氷河期には「受かる人は何社も受かる一方、スキルを持たない人は排除され、格差が広がった」と宮本みち子・放送大学名誉教授(社会学)は指摘する。

 宮本氏によると、この世代が成長する過程では、労働市場が高度化した一方、地域社会の中で人間関係の希薄化が進んだ。就職で失敗すると、自信を失って友人と距離を置きがちで、他人に助けを求められないまま30~40代となり、親としか人間関係がなくなる人も目立つという。

 政府は昨年、就職氷河期に安定した職に就けなかった人らを対象に3年間で30万人を正社員にする目標を掲げた。だが、宮本氏は「それでも救済されない人は多い。ひきこもる人のほかにも、障害がある人や親の介護に携わる人ら壮年期に働けない人はたくさんいる」と指摘。安心して過ごせる「居場所」や、それぞれの状態に合った働き方や社会参加ができる「中間的就労」の場を多くつくる必要があると提言する。

     ◇

 男性のように、いったんひきこもり状態になったものの、支援に頼りながら社会とのつながりを取り戻すことができる人ばかりではない。仕事がなければ、親の年金などに頼らざるを得ず、親子で社会から孤立してしまうなどするのが、「8050問題」だ。

 生活困窮者の支援に長年取り組む大阪府豊中市社会福祉協議会の勝部麗子さんが13年ごろ、「80代の親と50代の子の孤立家庭が目立つ」との実感から「8050問題」という言葉を使い始め、福祉関係者の間で定着していった。

 実際、そうした家庭では、ひきこもりや精神疾患、病気、親の介護などを背景に子が就労などの社会参加をしていない事例が目立つ。こうした状況を親が「恥」と受け止めてしまい、外に助けを求めないこともある。親の体力や気力が衰えて困窮や孤立が深刻化すれば、「共倒れ」にもつながりかねない。(川口敦子、江口悟、岡野翔)

連載ひきこもりのリアル「8050」リスク(全7回)が掲載中です。

Categorised in: ご近所の話題