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2020年3月9日

11592:フランス医療制度のいま:[第1回]公的システム共有型電子カルテの記事紹介

奥田 七峰子(日本医師会総合政策研究機構フランス駐在研究員/医療通訳)

医学界新聞 第3361号 (2020年3月2日) http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03361_05

清澤のコメント:医学界新聞(医学書院)にこの記事が掲載されました。以前、フランスに滞在した 1976-7年当時の紙カルテとは全く違うシステムになっているようです。その実態と目的が分かる程度に記事の要点を抄出してみます。開業のGPでもまだ20%程度の普及のようです。

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 人口およそ6700万人に対し,日本と同様に国民皆保険制度を敷く国,仏国。16歳以上の全国民にマイナンバーである社会保障番号を付与し,かかりつけ医登録を義務付けている。政府主導のPHR(Personal Health Record)や救急要請電話への医師によるトリアージなどの制度は,日本の医療者からの関心も高い。

 奥田氏が,その興味深い制度を3回に分けて報告する

仏国健康保険証「ヴィタル・カード」:ICチップ,顔写真,社会保障番号があり,全ての保険医療サービスにこのカードが必要。DMP開設にはこの番号の他,全国疾病保険金庫から送られる番号やワンタイムパスワードも必要。

 仏国ではさまざまな電子カルテが使われているが,全てのソフトウェア・メーカーに,公的システム共有型電子カルテであるDMP(Dossier Médical Partagé)との互換性を義務付けている。

 どの医療者が使っているソフトも全て,公的保険者である全国疾病保険金庫(Caisse Nationale de l’Assurance Maladie)が運営するDMPのシステムに乗るようにできている。

 この全国的につながれたシステムであるDMPポータルサイト内に,患者自身のマイカルテであるDMP医療情報(PHR)を開設する。患者自身が作らない場合には,かかりつけ医や薬剤師が作ることもできる。

 現在は希望者だけが作るオプトインの電子カルテだが,2021年末までには全国民が拒否しなければ持つことになるオプトアウトになる。2018年時点で既に5億ユーロが費やされており,着工から実に15年以上の歳月がたったことになる。DMPシステムが,この数年で仏国全土に一気に広まった。

患者のカルテは患者自身のもの

 DMPシステムが着工される以前からも,カルテに患者がアクセスする権利はあった。しかし実態は,自分のカルテへのアクセス方法確立が難しく,実現されていなかった。

2004年患者権利法(社会保障法典)の中で,患者のカルテアクセス権の延長として個人の医療情報電子化と共有を可能にした。仏国全国で自分の医療情報に自分でアクセスできるように,というのが本法の目的。すなわち医療者ではなく,患者が見られる,患者が決めた医療者が見られる/書き込めることが第一の目的。それまで使用されてきた情報も含めて,DMP上にアップロードされる必要がある。DMPシステムとの互換性の暗黙の必然がソフトウェア業界にDMPシステムへの対応を推し進めることになった。患者自身も自分で意思を表明できなくなった場合の代弁者の指定に用いられています。

 DMPの所有権は患者に属し,患者自身によって,患者個人のカルテにアクセスできる人(医療者,信頼できる代弁者,検査機関など)を決めることになります。医療職の場合でも,閲覧・記入範囲は職域ごとに分かれています。セキュリティは非常に厳重に管理されており,公的保険者すら,患者の個人カルテにはアクセスできません。

 患者本人と患者が決めた医療者のみが医学的情報(病歴,検査結果,処方箋,リビングウィル,緊急時の連絡先など)を入力できます。医療者と非医療者が書いた部分の違いはわかるようになっています。患者が望めば,閲覧できる医療者の限定もできます(例:精神科医だけに見えるようにしたい部分を産科医には見えないようにする)。緊急時の連絡先に指名された人にも,カルテのアクセス権が与えられます。これが大きな安心材料・モチベーションとなり,高齢者や高齢の親を持つ人を中心に,多くの人がDMP内にPHRを作ることにつながったのです。

仏国全土へ広がるDMP

 DMP登録カルテ数は,2019年9月に700万件にまで広がった。登録数拡大要因。

*ロスト・かかりつけ医世代

 仏国で第二次世界大戦後のベビーブーマー世代の医療職が大量退職する時期に多くの患者が“かかりつけ医難民”になった。かかりつけ医変更,引っ越に,自分の医療情報が必要で患者がDMPにPHRを作成した。

*患者本人から医療情報を聞き出せない際に有効

 救急時や重度認知症など医療情報を言えない場合でも有効。

*連携の促進

 病診連携等がスムーズになる。医師と多職種の電話越しの連携にも有効。

 開業するGP(General practitioner)の20%がアクセスし,うち50%が書き込んだことがある。GPがターゲット医療者として力を入れて導入が進められた。その他の医療職者の利用率はひくい。

 施設ごとの導入割合を見ると,2019年8月末現在で13%の医療機関,4%の高齢者施設で使える。まだまだ普及途上。

 DMP普及促進対象:かかりつけ医への強化を継続する一方で,臨床検査技師,薬剤師にターゲットが定められた。特に,市中の調剤薬局が登録促進の中心となる。薬局とDMPの親和性は高く,全国薬剤師会主導の電子お薬カルテにより,全国どこの薬局でも患者の薬歴が既に見られる。

DMPシステムがめざす目的地は

 仏国政府の最終的な目的は全国民,全医療者がDMPシステムを使用して,ケアシステムが改善されることにあります。二次利用へのハードルは高い。二次利用を進めるには新たな法律の整備が必要となる。

おくだ・なおこ氏
日本医師会総合政策研究機構フランス駐在研究員。1992~2004年American Hospital of Parisにて医療通訳として勤務。https://www.naokookuda.frhttps://www.facebook.com/naoko.okuda.54にて仏国の医療制度について発信中。

Categorised in: ご近所の話題