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2020年2月25日

11551:看護師の離職相次ぐ 若倉雅登:記事紹介

清澤のコメント: この記事は眼科ケア2020.2号からの抜粋です。 病院で眼科を担当する医師の立場としては、外来や病棟の看護師が数年でローテ―トさせられるのは、それまでの教育にかけた努力が無駄になってしまうので辛い。現場の看護師としても、得意分野だけをやらせておいてくれないか?という声もあるだろう。地方の病院の現場としては、ただでさえ少ない看護師をいかに有効に回そうかという思惑はありそうである。

日本の看護師の世界でも眼科専門の日本視機能看護学会( https://www.shikinoukango.jp/ )があるが、米国では眼科のregistered nurse (登録看護師)という資格がある。(https://www.registerednursing.org/specialty/ophthalmic-nurse/)看護師という資格の上に、助産師のように更なる専門資格を設けるのも一案ではあろうかと思う。

それにしても、文中に紹介されている荒川和子さんに自分のクリニックを手助けしていただけていることに感慨を覚え、改めて感謝の念を感じたものです。

追記:あらゆる眼科およびその他の医学領域での研究会の中止が続いております。果たしてどうなることやら。

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「眼科ケア」2月号 私の提言、苦言、放言 第164回

井上眼科病院名誉院長 若倉雅登

岩手県立遠野病院で看護師の離職が相次いでいるとのニュース 1)を見た。以前、私は岩手県立遠野病院の「病院の出前(訪間診療)を紹介した。遠野市は岩手県の内陸にある広域の市だが、人口も人口密度も低い。「病院の出前」というのは、当時の貴田岡博史副院長(のちの院長)の発案で進んだもので、画期的な取り組みだと、自著『三流になった日本の医療』2)の中で述べた。

私が取材で訪ねた病院のニュースであり、「働き方改革による労働環境の悪化」が主たる原因とのことなので気になった。同院は「外来、病棟看護の一元化」という方針を打ち出し、看護師がローテーシヨンでさまざまな持ち場を担当することで仕事の効率化を図り、超過勤務などを減らそうという目算らしい。看護師たちは細分化された内科、外科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、小児科等々の各科の外来と病棟をローテーションすることになる。郷右近祐司現院長は「広い分野をカバーできるゼネラリストの看護師の育成」を口にしているという。

私には若干、異論がある。50年前、 100年前とは違って、各診療科は医学の進歩にしたがつて専門性、特異性が高度化している。かつては、わからなかつた疾患に新たな病名が与えられ、あるいは新たな分類がなされるようになっている。そもそも、医師の世界でも専門性が高度になり、眼科においても角膜、緑内障、白内障、網膜硝子体、神経眼科、小児眼科など、細分化されるほどで、眼科といえども各領域とも十二分にできる眼科ゼネラリストがいるとすれば、よほどのスーバーマンである。まして、身体を横断的に専門的に診られるゼネラリスト医師など、まずありえない。そうであれば、看護師の仕事も診療科ごとに著しく異なる作業や役割があるはずだから、ゼネラリストを目指すというのは、表面的な、助手的な仕事をすればよいといっているのと同じではなかろうか。

「私どものNPO法人「日と心の健康相談室」(以下、相談室)の理事長である荒川和子さんは、大学病院と眼科専門病院とを合わせて、30年以上にわたって眼科における看護師として勤務してきた、いわば眼科に特化した日本では稀有な眼科専門看護師である。だから、眼科のどの領域についても広い知識と経験があり、神経眼科や小児眼科にも精通しており、先進的な治療も含めて、種々の治療法や手術についてもほぼ理解している。それだけではなく、視党障害、ロービジョン、神経眼科や心療眼科領域の患者さんの看護にも多く携わってきた。だから、相談室にアクセスしてくる多様な目や視覚の異常のある人たちの相談に乗ることができるのである。相談というのは、ただ話を開いて、応答するのではない。必要なら、専門性の高い眼科医、神経内科医、精神科医につなげたり、地域の支援施設、生活訓練専門職、カウンセラーなどに協力要請もする.このように相談室では、高度に専門性の高いナーシングをしているともいえるのである。

看護師やコメディカルスタッフが目指すべきは質の高い、専門性の高い知識と技量の習得であり、それこそが時代の要求である。もちろん、それは最初からでなくてもよく、若いうちは広い領域を知ることは重要であろう. つまり、若いうちは自然とゼネラリストになるが、究極は専門性を追求すべきだ。

ところで、先の記事で、病院側は超過勤務手当の削減を進めようとしているが、「月に60時間のただ働きを強いられた」と証言する看護師もいたと報じている。そこからは、労働時間の削減でなく、手当の削減をしている病院の姿勢が見え隠れする。前出の貴田岡元院長も「医療の質を保つのが原点。病棟と外来看護の一元化は看護師数を増やして初めて成り立つものだ」と述べている。報酬とは金額や時間だけではない。質の高い医療を提供しているという衿持、自分が成長しているという実感、働きがいや働きやすさも立派な報

酬だ。

似たような問題を抱える施設は少なくないだろう。この病院には、もっともっと知恵を絞ってもらいたいと思う。

  • 岩手日報、看護師離職相次ぐ、県立遠野病院、働き方改革が背景に

https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/10/30/67141

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