お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2020年1月14日

11437:眼も心臓も、イカの体は驚くほどハイスペックだった:記事紹介

清澤のコメント:今日は烏賊の目の話。網膜の内側に神経線維層があるのが目だと思っていましたが、烏賊の目では神経線維が網膜の後ろの方に出ているのだそうです。

生物進化を食べる(第3話)軟体動物篇 2019.06.28(Fri)大平 万里

 イカの眼は、見た目では私たち人間の眼に近いように感じられる。写真はアオリイカ。

カメラ眼の構造の比較。左が脊椎動物の眼で、右が頭足類の眼。(1)網膜(2)神経線維(3)視神経(4)盲斑。 (図版:Caerbannog from Wikimedia Commons)

脊椎動物に次いで擬人化されやすいのは、タコ・イカ・カニである。2つの眼の存在が「顔のパーツ」として認識されることが大きい。イカの眼はつぶらな瞳があるようにも見え、より親しみやすさがあるといえる。

 実は、イカの眼はレンズでピント調節をする「カメラ眼」であり、ヒトと同じタイプである。レンズがあるために、つぶらな瞳に見えるのだ。カメラ眼は、多くの光を集めて対象物をより高解像度で見るという利点があるのだが、では、イカの高性能な光受容器は、どのように発達したのだろうか。

祖先を求め「大爆発」期へ、だが姿ははっきりしない・・・

 その経緯は、約5億4000年前の「カンブリア紀の大爆発」にさかのぼる。カンブリア紀の大爆発以前の「エディアカラ生物群」とよばれる6億年ほど前の生物には、積極的に自分で動いて餌を探す体制のものはあまりいなかったと考えられている。

 しかし、カンブリア紀の大爆発では、甲羅や殻を発達させた動物が増える。と同時に、運動できる体のつくり、すなわち筋肉を発達させた動物も激増した。「攻撃は最大の防御」とばかりに、運動性能をさらに向上させ、獲物(あるいは天敵)をより鮮明に認識するために眼を発達させた動物が覇者になっていった。前回登場した「アノマロカリス」はその典型例である。カンブリア紀の大爆発は、眼という感覚器の発達によって加速されたと考える研究者もいるくらいである。

 現在もイカが生き残っているということは、イカの祖先もおそらくはカンブリア紀の大爆発の「攻撃は最大の防御」の流れに乗ったのだろう。ただし、カンブリア紀のイカの祖先の姿ははっきりしない。殻の化石は残っているものの、中身の化石がないのである。それはイカと近縁で、カンブリア紀以降に大繁栄するアンモナイトも同様である。世界中で大量に発掘されるが、殻から顔や体を出しているようなイラストはあくまで想像図であって、化石として残っているのは殻だけだ。

「殻を体の内部にしまい込む」というイカの進化

イカの系統的な位置は、大きい分類では「冠輪動物」であり、その中の「軟体動物」ということになる。軟体動物には貝類やナメクジなども含まれるが、その中でもイカは「頭足類」というかなり高度に進化したグループに入る。

 ともあれ、殻を内に秘めたイカの仲間の一部は、恐竜大絶滅の時代を生き抜いて、初登場から現在まで数億年にわたって生きのびている。中生代に大繁栄したにもかかわらず、6600万年前の白亜紀末に完全に絶滅してしまったアンモナイトとは対照的である。運もあるだろうが、やはり生存に有利なさまざまな形質を試行錯誤してきたことが大きいだろう。そのひとつが、イカのカメラ眼であるといえる。

みな眼、体色変化に墨吐き・・・ハイスペックなイカの体

 イカの発達したカメラ眼には、実はヒトのカメラ眼と異なったところがある。それは、ヒトの眼には光を受容できない「盲斑(もうはん)」という部分があるのに対して、イカの眼にはそれがないという違いである。ヒトの眼の視神経につながる神経線維は光が当たる側に配置されているために、どこかにその視神経の出口をつくらないと脳へ情報を伝達することができない。その出口が盲斑である。

 一方、イカの眼では神経線維は光を受容する裏側に配置されているために、視神経への出口をつくる必要がないのだ。つまりイカの眼には「死角」がない。一方、死角が生じうるヒトの眼は、工業製品として見れば明らかに進化上の設計ミスとしかいいようがないだろう。

Categorised in: ご近所の話題