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2019年9月28日

11119:「子を東大に入れた私を褒めて」という親のエゴ 子供を「条件付き」で愛する親たち:記事紹介

先日娘が 「彼女は頭が悪いから」(脚注) という小説を古本で買ってきて読んでいるのを見ました。夕飯の時に話題になり、「大学に入って初めて男子に声を掛けられて有頂天になったナイーブな女子大生と、彼女は自分が東大生だから付いて来るのだろうと彼女を疎ましくなった東大生」の話だと子供から聞きました。先に家内が読むからという事で、私にはまだ回って来てはおりません。PRESIDENT Onlineに上野千鶴子さんの書いた記事が載っていて、この話にも言及されていました。 https://president.jp/articles/-/30064

「子供を親の作品」と思い込む親の大きな勘違いという話には全く同感です。----

(記事の要点の抄出)今春の東京大学入学式の祝辞で脚光を浴びた、東大名誉教授の上野千鶴子さん。その祝辞内容に対して、ある保護者から「東大に子供を合格させた親へのねぎらいの言葉がない」という反応があった。そうした親の「言い分」の背景にあるものとは(プレジデントFamily2019秋号)

「私の努力を認めてほしい」という親の言い分

私が今年度の東京大学の新入生に向けた祝辞には、大きな反響がありました。

かつては東大卒であっても、女性というだけで、男子に比べて有名企業、大手企業の総合職に採用されることは難しく、昇進もできませんでした。そして、今もなおそうした差別の構造は歴然と残っています。だからこそ、今年の東大の入学式の祝辞には、「すでにある社会の枠組みを超えて、どこでも生きていける『知』を身につけてほしい」という思いを込めたのです。東大の入学式で、近年、新入生以上に存在感を増しているのが、彼ら彼女らの親です。どちらが主役かわかったものではありません。入学式で私の祝辞を聞いた保護者の感想の中に、興味深いものがありました。「東大に合格させた親へのねぎらいの言葉がない」というんですね。思わず笑ってしまいました。

「周囲に自慢できるわが子」をつくった私をもっと褒めて

わが子の大学合格までの道のりに介入して、それを公然と口にして「褒めてほしい」とまで言う時代なのです。――難関校に合格した子供たちは、いわば親の作品、なかでも「成功作」です。学歴という見えやすい軸で、勝利をつかんだ「周囲に自慢できるわが子」をつくったわけですから、祝辞でも「作者である私を褒めてねぎらって」という気持ちになるのでしょう。

条件付きの親の愛「デキの悪い子はうちの子じゃない」

私は東大で「成功作」だったはずの子たちをたくさん見てきました。「勝ち残れなかった人はダメなやつなんだ」という選民思想を持った子が数多くいます。2016年に東大男子学生による、他大学の女子学生暴行事件が起きました。逮捕された男子学生の一人が「彼女は頭が悪いから」と取り調べの中で発言したのも、この延長線上にあると思います。「頑張ったわが子」をその成果を理由に褒めることは、裏返せば子供を条件付きで愛するということ。出来の良い子にだけ承認という報酬を与える。反対に出来の悪い子はうちの子じゃない。そういったサンクションを子に与えて叱咤激励する親が、あまりにも多いのです。過度な自尊感情が生まれると「自分の現在は自分の努力と能力によるもの、それができないのは努力と能力が足りないから」と考えるようになってしまいます。

「失敗作」の子供は追い詰められますし、「成功作」の子供だっていつでもうまくいくわけじゃない。そうなるとうまくいかないときには、自分を責めるしかない。自傷系のメンヘラー(メンタルヘルスに問題のある学生)が増えたという実感があります。

40代の親が子供の教育に熱くなる必然的理由

なぜ教育に熱くなるのか、世代的な面から考えてみましょう。40代の世代の人たちには「親の世代の学歴を、子供が上回るのは当たり前」という刷り込みがあります。自分の親は団塊の世代前後でしょう。団塊の世代には学力があっても、満足な教育を受けられなかった人も多いです。そのため彼らの多くが「自分より上の学歴を子供につけさせてやりたい」と熱心に教育をしたのです。

今の親世代は「自分はそうしてもらった」という強い記憶に加えて、バブル崩壊以降の就職難の経験があります。多くの親が「わが子が、自分たち以上の生活水準を得ることができないのではないか」という危機感を抱いており、その恐れが「せめて学歴だけでも」と、子の学歴へのこだわりを一層強くしています。

1985年の男女雇用機会均等法以降の世代ゆえ

女子の場合はもう一つ親が教育に力を入れる理由が加わります。それは、母親世代が性別を理由に、満足に働けなかったということです。均等法にはほとんど実効性がなく、企業では多くの女性が従来通りの差別を受けました。総合職に就ける女性はひとにぎり、女性は一般職雇用で給与は低く、男性と同じようには昇進できません。結婚したら働き続けるという選択肢は現実的ではありませんでした。こうした社会でも娘が働いていけるような進路を親は必死に考えます。その結果が現在の女子受験生の学部選択にあらわれています。

90年代以降、女子学生の増加が著しいのは、法学部や医学部といった資格取得に直結する学部です。つまり個人プレーがききやすい「手に職」系の学部です。弁護士と医者は、高給版「手に職」志向、ほかにも薬剤師や看護師などの資格志向があります。反対に、組織に入らなければ成果を上げられない経済学部や工学部はあまり女子学生が増えていません。「私が企業社会で受けた嫌な思いをしてほしくない」という「母心」が透けて見えるようではありませんか。一昔前の「良い学校、良い就職」という幻想から抜けられないのです。

しかし、時代は変わりました。

教育を「投資=見返りを期待」だと主張する親が失うもの

「高偏差値大学」の学歴があれば安泰という時代ではなくなりました。「高学歴な親の学歴と同程度の学歴を子供が達成できるのは、全体の半分程度」という研究結果もあります。実は親世代の学歴を上回るのは難しいことなのです。教育を「投資」だと考える限りにおいては、こうした前提で考えていいのかもしれません。

家庭が「評価の場」なら子供にとって家庭は「緊張の場」になる

投資は、「費用対効果」で測ります。学力という物差しだけで測られて、結果を出せないと愛されない。そんな家庭で親からの過大な期待と教育熱を注ぎ込まれて、つぶれなかった子は運がよいですが、そうでない場合、精神的に追い詰められます。

たとえつぶれなかったにしても「投資対象」である子供は、評価者である親といても楽しくありませんから、思春期とともに親を疎むようになっていきます。そのツケは将来、一緒にいても会話のない親子関係となってあらわれるでしょう。先に挙げた東大生たちの心の闇も、こうした家庭の中から生まれます。

成績という軸だけで子供と接するのをやめたければ、明日から子供に教えるのではなく、子供の声に耳を傾けることです。叱る、褒めるのどちらでもなく、ただ「聞く」のがポイント。子供に配慮し、子供と時間や経験を共にすることしかありません。その過程で初めて、親は、自分の子供がどういう生きもので何が好きで何が嫌いかがわかってきます。家庭が評価の場であれば、子供にとって家庭は緊張の場になりますが、評価のない場を共有することで、家庭が子供にとって安心できる場に変わっていきます。

実際に「投資」としての教育の実行役を担っているのは、父親の代行者としての母親ではないでしょうか。多くの家庭で「教育はお前に任せた」と夫が妻に子育てを丸投げにしています。その姿を子供はよく見ています。母親と子供が何かトラブルを抱えていても、何もしない、知ろうとすらしないという父親も多いでしょう。

子供が理不尽な目に遭わないために親ができること

世の中はまだまだ理不尽な差別に溢れています。家庭の中にも夫婦の権力関係がありますし、貧富の差もあるでしょうし、外国籍の子もいます。

子供たちにも親にも、将来を考えるうえで心がけてほしいことがあります。それは周りをよく見るということです。いろいろな人たちと付き合うことで、世の中にどういう人がいて、どういう人生があるか身をもって理解する。こうした異文化と接する機会として、公立小学校は非常に良い学びの場になるはずです。

また、自分たちが受けた理不尽な経験や思いを子に話してやってください。みなさんは自分が受けた差別や社会の理不尽さを子供に味わわせたくないからこそ、教育に力を注いでいるはずです。もし、理不尽な社会の中で自分だけが勝ち抜いて、他人を出し抜くことを教えたら、そもそもの理不尽な社会自体を変えようとは思わなくなるでしょう。

私は祝辞でも「みなさんの頑張りを自分が勝ち抜くためだけに使わないでください」と伝えたのです。あなたたち親世代が受けた差別を変えるために、次の世代の力を生かしてほしいのです。次の世代にどんな社会を手渡すかは、親世代であるあなた方にかかっています。

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脚注;

私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの?
深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。
現実に起こった事件に着想を得た衝撃の書き下ろし「非さわやか100%青春小説」!
横浜市郊外のごくふつうの家庭で育った神立美咲は女子大に進学する。渋谷区広尾の申し分のない環境で育った竹内つばさは、東京大学理科1類に進学した。横浜のオクフェスの夜、ふたりが出会い、ひと目で恋に落ちたはずだった。しかし、人々の妬み、劣等感、格差意識が交錯し、東大生5人によるおぞましい事件につながってゆく。
被害者の美咲がなぜ、「前途ある東大生より、バカ大学のおまえが逮捕されたほうが日本に有益」「この女、被害者がじゃなくて、自称被害者です。尻軽の勘違い女です」とまで、ネットで叩かれなければならなかったのか。
「わいせつ事件」の背景に隠された、学歴格差、スクールカースト、男女のコンプレックス、理系VS文系……。内なる日本人の差別意識をえぐり、とことん切なくて胸が苦しくなる「事実を越えた真実」。すべての東大関係者と、東大生や東大OBOGによって嫌な思いをした人々に。娘や息子を悲惨な事件から守りたいすべての保護者に。スクールカーストに苦しんだことがある人に。恋人ができなくて悩む女性と男性に。
この作品は彼女と彼らの物語であると同時に、私たちの物語です。

Categorised in: ご近所の話題