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2019年8月6日

10985:阿修羅像には、心の深化を映す6 つの顔があった:??

阿修羅像には、心の深化を映す6 つの顔があった

デイリーBOOKウォッチ 2018/12/ 5 (図:阿修羅)

清澤のコメント:興福寺の阿修羅像の修復に関する詳細を記した書籍が出ているそうです。今回発注しました。生体、死体ばかりでなく、画像診断法はこの様な仏像の修復にも使えるのですね。6つの顔とは?

3 つの顔に6 本の腕がある三面六臂の阿修羅は、仏像彫刻の中でもとりわけ異形だ。『阿修羅像のひみつ』は、その像を大型X線CTスキャナで撮影したデータなどを9年にわたって解析調査した結果を報告して興味深い。

1300年の節目に記念事業

 「国宝阿修羅展」(2009年、朝日新聞社など主催)も同じ記念事業として東京、九州の両国立博物館で開かれ、160万人余りを集めた。

 奈良大学の今津節生教授はCTスキャナによる調査について、文化財の「健康診断」であるとともに、当時の制作技法を調べ、隠された秘密を探るのが目的と説明する。健康診断の結果、阿修羅像は身長153センチ、体重15キロで、丈夫さを保っていることが確認された。極めて軽いのは、土で作った原型の表面に麻布を5層程度貼り重ねて漆で固めた後、原型を背中からかき出して内部を空洞にする「脱活乾漆」という技法で作られているから。

 3次元画像をもとに研究を進めた結果、3つの顔の表情にまつわる発見があった。阿修羅像の右の顔は下唇を噛んで溢れる思いをこらえ、左の顔は少し厳しい表情で前を向く。正面の顔は眉をひそめ、下まぶたが膨らんで涙をためているように見える。いずれも、決意と葛藤の間を揺れ動く繊細な心模様がにじむ。しかし、この3つの表情の内側に、別の3つの表情が隠されていることが今回の調査でわかったのだ。

 山崎隆之・愛知県立芸術大学名誉教授によると、土の原型と接していた内面の3次元データを使って原型を石膏で再現したところ、その表情は完成した像と大きな違いがあった。右面は口をかすかに開けて驚いたような表情を浮かべ、左面は完成像より多く怒りを含み、正面は両眉がつながって冷たく粗野な雰囲気だった。山崎名誉教授は、阿修羅像などを安置する西金堂造営を命じた光明皇后の意向が、像の制作途中で反映したのではないかという。

 阿修羅はかつて、戦争行為をやめないインドの悪神だったが、仏教に帰依して悪業を悔い改め、悟りを開いたとされる。原型の段階では、インドの神だった時の戦闘力を発揮する守護神の険しい表情で作られたものの、懺悔の大切さなどを説く『金光明最勝王経』という経典を信仰していた光明皇后の意向を受け、悟りを開く瞬間の柔らかい表情に変えられた、という推測が成り立つ。表と裏の6つの表情の中に、驚きから懺悔へ、気づきから反省へと深化する心理の軌跡を感じ取る山崎名誉教授は、顔立ちの幼さから、光明皇后が夭折した皇太子基王の面影を阿修羅像に重ね、追慕しようとした可能性も指摘している。

壮大な伝承プロジェクト

――― 阿修羅像は、地中から突然見つかった「埋蔵品」ではなく、人から人へと受け継がれてきた「伝世品」だ。安置されていた西金堂も度重なる火災に見舞われたが、その度に運び出され、補修されて伝わる。多川貫首はその長い歴史を踏まえ、こう記している。

 「受け継いだ先人たちが、その優品をまさに大切なものとして受け止め、それを次代に受け渡してきた。そして、そのプロセスそのものが文化であり、そういう文化ベースがあってこそ、有形文化財の伝世ということも果たされてきたわけである。このことは、私たちが日本の文化財を考える場合、きわめて重要なことだと思う」

 阿修羅像が生まれて約1300年。今につながる膨大な時間の流れと、受け継いできた無数の人々の労苦に思いを馳せると、目のくらむような壮大な伝承プロジェクトであることに改めて驚く。阿修羅像は、その重みと大切さを語り続ける証人でもある。

(BOOKウォッチ編集部 OH)

•            書名阿修羅像のひみつ

•            サブタイトル興福寺中金堂落慶記念

•            監修・編集・著者名興福寺 監修、多川俊映/今津節生ほか 著

•            出版社名朝日新聞出版

•            出版年月日2018年8月25日

Categorised in: ご近所の話題