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2019年6月20日

10837:トリカブト殺人事件と私(大野曜吉著、私家版)を読みました。

「人みなのいのち尊ぶ医師となれよ、単に金の為の技術者となるな」(大野誠夫 あらくさ 1972)と、扉の裏に記されています。歌人で有った彼の父親の教えと思われます(http://petalismos.net/tag/%E5%A4%A7%E9%87%8E%E8%AA%A0%E5%A4%AB

トリカブト殺人事件とは、1986年(昭和61年)に発生した保険金殺人事件で、凶器として、トリカブト毒(アコニチン)が用いられたことが大きく報じられたほか、司法解剖を行った大野曜吉医師が被害者の血液などを保存していたため、その後の分析で殺人であることが発覚した事件です。著者大野曜吉君は、犯人であるKと出会ったときから「なんだこの男は」と感じたと記しています。

1986年(昭和61年)5月19日、Kと妻は、沖縄旅行のために沖縄県那覇市に到着した。翌20日、2人に誘われた妻の友人3人も、那覇空港で2人に合流した。妻と友人3人は、予定通り石垣島へ到着した。ホテルにチェックイン後すぐに突然妻が大量の発汗、悪寒で苦しみだし、急速に悪化して救急車内で心肺停止に陥り、死亡。行政解剖にあたった大野曜吉君(当時・琉球大学医学部助教授)は、妻の死因を急性心筋梗塞と診断したが、大野君は、不審に思い妻の心臓と血液30ccを保存した。

保険金をめぐる裁判

さらに、妻はKが受取人である複数で多額生命保険に加入しており、それは不審な保険加入の諸条件を満たしていた。Kは保険金の支払いを求めて民事訴訟を起こし、一審の東京地裁は神谷が勝訴した。然し保険会社が控訴した二審で妻を検死した大野君は、妻の死因が毒物による可能性があることを証言した。大野君が保存していた心臓や血液を東北大学や琉球大学で分析した結果、トリカブト毒が検出され、妻の毒殺は確実となった。しかも、Kにクサフグを大量に売ったという漁師が現れ、東北大学ではフグ毒(テトロドトキシン)も検出された。Kはトリカブトは観賞用のために、フグは食品会社を起業するために購入したと反論した。しかし、妻の血液を分析していた大野君は、公判でアコニチンとテトロドトキシンの配合を調節することで互いの効力を弱めることができることを証言。アコニチンはNa+チャネルを活性化させ、テトロドトキシンはNa+チャネルを不活化させるが、この2つを同時に服用するとアコニチンの中毒作用が抑制され、拮抗作用が起こる。テトロドトキシンの半減期はアコニチンよりも短いため、拮抗作用が崩れたときに、アコニチンによって死に至るから、服毒から死までの不思議な時間が説明できた(本文63ページ図13)。1994年(平成6年)、東京地裁はKに対し、求刑通り無期懲役の判決を下し、二審の東京高裁も一審判決を支持。2000年(平成12年)、最高裁でKの無期懲役が確定。公判中から自らの無実を訴えていたKだが、2012年(平成24年)大阪医療刑務所で73歳で病死した。大野君は、いずれ仮釈放されたなら一度はKと対面してみたいとの希望を持っていたが、それは果たせなかったという。全編に協力してくれた先輩や協力者への感謝の念が溢れているのも印象的であった。

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