ーー記事の要点ーー

2017年6月に日本病院会会長に就任した相澤病院(長野県松本市)の相澤孝夫氏。働き方改革や地域医療のあるべき姿について聞いたところ、医師の働き方改革は「医療提供体制を変えること」だと主張する。



相澤
「医師の働き方改革」の本質は「医療提供体制を変えること」。実際、相澤病院では医療提供体制を変えた結果、医師の働き方が変わった。

ーー相澤病院では2014年に「救命救急センター」を立ち上げた。ーーどんな症例でも必ず受け入れるようにすることで地域医療に貢献する。一方で、救急医の勤務体系を2交代制にすることで、救急医だけでなく、当直医の負担を減らせた。

救急医には週2回、連続16時間勤務。あとは日中勤務を1日。合計週40時間の勤務時間。残り4日間は「休み」。救急医は17人ほど。ーー

24時間365日、どんな症例でも診る病院があることは、開業医の先生にも地域の住民にも安心してもらえる。ーー

医療提供体制を変更した項目
相澤
2010年から「外来のスリム化」に取り組んでいる。病院の仕事は入院患者を診ることであり、それを徹底させる。

基本的に外来診療は減らし、紹介患者の専門外来を増やす方針に変更。外来患者はできるかぎり、開業医に逆紹介。ーー

これは私の反省なのだが、私が若い頃は朝8時半から16時まで外来をやっていた。その後は、急いで専門科の検査を行い、17時半までになんとか終わらせる。そしてその後にようやく入院患者の回診をする。そんなことを毎日続けていた。これでは誰でも疲弊してしまう。

そこで2010年からは外来診療を2枠体制に変更した。午前担当の医師は、午後の枠に食い込む訳にはいかないので皆、必死で診療する。そして午後担当の医師は病院が17時半で終わるので、必死でその枠内で診療する。逆紹介すべき症例はどんどん紹介する。外来を2交代制にすることで、こうした「強制力」を働かせる。

2012年には、手術室使用の効率化を行った。ーー外来2交代制と連動させ、午後外来の医師は午前に手術、午前に外来担当の医師は午後に手術を行う。今では手術室が午前も稼働している。

――働き方改革がうまくいっていない病院は、効率的に医療が提供できていないということ。


相澤
ーー働き方改革は病院の医療提供体制を変えることに他ならない。古いことは守るべきものではなく、よりよいものを作る1つの基盤。医師の、人に対する温かさや、「患者の病を治したい」という情熱や熱意は変えてはいけない。

くたくたに疲れるまで働くのは違う。もっと合理的・科学的な考え方が必要。ーー

強調しているのは「もう赤ひげ医療はやめよう」ということ。今の世の中では無理。

病院医療では社会復帰、家庭復帰まで長く診て、その段階になったら退院させるという形だった。ーー治療が終わっても地域や家庭に帰れない人が増えている。ーー機能分担しながら地域で診ていくことが、今後の日本の「親切で温かい医療」を守ることにつながる。

相澤病院も診療機能再編を行っている。地域包括ケアだけを担う相澤東病院を2015年に新たに建てた。42床の病院だ。相澤病院は急性期医療を担い、ーー急性期医療の提供が終わったら、あとは地域包括ケア病院である相澤東病院に任せるというやり方。

主治医が治療を終えた後は、看護師や医療ソーシャルワーカーが集まって退院後の生活を考えなくてはいけない。しかし現実には、病院外の人と連携することは非常に難しい。

2009年に「地域在宅医療支援センター」を設置し、訪問看護師やケアマネジャーも同じ部屋で顔を合わせる機会を作るようにしている。ーー

――様々なことに取り組んでいるが、今後の課題は?
相澤
松本医療圏全体で見たときーー相澤東病院がカバーすべき範囲が広いことにどう対処すべきか?と考える。

あとは最近、病院の半径2km範囲に空き家が増えているのでこれを活用し、医療介入が必要となる可能性の高い患者が居住できるようにしたい。そうすれば、いつでも病院にかかることができる。そのような体制を作れたらと思い、行政に相談している。