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2017年3月13日

8668:残る影 (自叙) 小柳美三 を拝読しました(前半編)

8668:残る影 (自叙) 小柳美三 を拝読しました(前半編)
残る影(表紙)

今泉亀徹先生が所持されていた原稿をご遺族今泉信一郎先生の許可を得て東北大学同窓会で自費出版としたとのこと。

◎小柳美三先生のことども 門下生(桑島治三郎先生か?と)を巻頭に採録

残る影(文)◎残る影

○自分の足跡を記載したいという思いは誰にもあり、今回そのような記録を書く。

〇閲歴のあらまし。
武蔵野に生まれ、独逸協会中学、京都大学医科大学卒業。眼科教室入局し浅山教授に師事した。日曜を使ってのトラホーム小体の検索などに励む。大正3年、京都府立医学専門学校、そして大阪赤十字社病院に転ず。
仙台に教授として招聘され、赴任を決意した。その頃、経済的問題もあって開業医か学究かの択一の岐路に迷った(15p)。文部省奨学生として渡米するも、第一次大戦中で当地では無為に過ごした。かくして「貧弱で小さい仙台」に赴任し昭和17年の定年までを勤めた。開業するものは学位を求めたが、これに対し臨床および基礎医学の各教室は学位論文の製造で応えていたが、小柳眼科教室はそれをしなかった。大学の評議員などにも興味を示さず変わり者とみられた。
『わたくしの窃かに遺憾に思っているのは、私の教室から学究として広く斯界にその名声を認められるような新進英俊の遂に出現しそうにないことである』(26p)

(清澤注;小柳教授は教え子から東北地方各地の教授を輩出していますが、自らの教え子たちにここまで厳しい評価を与えています)

○研究の道すじ
比較的多い疾患(網膜硝子体出血、タンパク尿性網膜炎、緑内障、遺伝性眼疾患など)を研究テーマとした。ただしトラコーマは細菌学の知識を要すので除外した。動物実験を重視し患者で安易に試すことは避けた。

また、原発性視神経消耗症と脊髄癆、高血圧と網膜病変、乳頭鬱積と脳腫瘍、糖尿病性網膜症など眼科隣接領域の疾患と眼科の関係に歩を進めた。

「東京、京都、大阪などの各大学より発表の数は少ないが、内容を見ればドイツの大学のそれに遜色はない。」「観るべき内容を有している仕事と言う物はそう沢山にできるものではない。」「学究として尊重すべきは仕事の量よりも寧ろ質である。」

(清澤注:数が少ないと謙遜するかと思えば、その生み出した成果の質に関しては絶対の自信を表明しておいでになります。)

第1:葡萄膜欠損症の成因にかかる論議:
葡萄膜欠損症をゼーフェルデルは「第2眼胞期に於いて眼裂に介在する結組織が其の儘そこに遺残して眼裂の正規的閉合を阻止するために起ころもので、中胚葉組織の先天性発育異常が根本原因」としていた。これに対し小柳は、「第2眼胞期に過度に新生増殖せる固有網膜即ち外肺葉組織が眼胞裂縁からさらに外反して色素細胞層の方へ移行する。そのためにそれに相応して色素上皮細胞層は側方に押しやられて後退する。斯くして色素細胞層の形成せられない部分には其の栄養を司るべき脈絡膜の発生を必要としないから、自然それを欠損するようになる。」と解説している

当時の世相を、「少し実のある仕事になると必ずや外国留学生として独逸あたりの眼科教室でやらなければできないものと相場が決まっており、---」と述べ、そのレベルの仕事を日本で完遂したことを誇っている。

第2:視神経繊維の空洞様変性に関するもの。
プラーク大学エルシュニッヒ教授と市川清教授の仕事は、視神経繊維に一種の水泡状若しくは空洞様の変性を認め、緑内障に特異の変化とした。小柳はこれに強く反論、抗議している。

(清澤注:この空洞様変性が現在の言葉で何を示すかはわからない。神経線維の変性だというところを見ると、アポトーシスを見ていたのであろうか?)

第3:蛋白尿性網膜炎の発生病理に関する研究。

(この自叙は非常に長いのでこのあたりで一休み:後編へ続く)

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